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11 初夜の記憶
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「おはようございます、ルフィナ様。起きられないかもと心配してましたが、殿下は優しくしてくださったのですね」
身支度のためにやってきた侍女のイライーダが、揶揄うような笑みを浮かべる。彼女だけは、頼んでホロウードから一緒に来てもらったのだ。ルフィナを育ててくれた乳母の娘であるイライーダは、幼い頃から共に育ったので主従というよりも友人に近い存在だ。
「えぇ、とっても優しくしてくださったわ。でもね……」
「でも?」
「だめ、秘密。昨晩のことは、誰にも話さないってカミル様とお約束したの」
うっかり口を滑らしてしまいそうになったルフィナは、慌てて口元を押さえる。それを見たイライーダは、分かっているというように何度もうなずいた。
「お二人の仲がよろしいようで、安心しましたよ。アルデイルの方々は皆親切ですし、カミル殿下がルフィナ様のお相手で本当に良かったです」
「ふふ、私もそう思うわ。カミル様はとっても素敵な方だもの」
心からそう言って、ルフィナは微笑んだ。自分がこんなにも幸せな結婚をすることができるなんて、ホロウードにいた頃には思ってもみなかった。
だけど、とルフィナは少しだけ遠い目をして息を吐く。
イライーダにうっかり漏らしてしまいそうになった、昨晩のこと。
カミルのことは好きだと思うし、彼との口づけはとても心地良かった。だが、行為自体はお互いに痛みしかなかったことに少し怯んでしまうのだ。それに、何だかあっという間に終わったような気もする。情熱的な夫婦は朝まであの行為を何度も繰り返すというが、あれだけすぐに終わるのなら、両手で足りないくらいの回数をするということだろうか。
せめてカミルが快楽を得てくれていたなら良かったのだけど、彼はルフィナを抱く間、ずっと眉を顰めて辛そうな顔をしていた。口での奉仕は男性にとって良いものだと本には書いてあったが、カミルは好きではないようだし。
いつになるか分からないが、次に抱かれる時はカミルがもっと気持ち良くなってくれたらいいなと、ルフィナは小さくため息をついた。
身支度のためにやってきた侍女のイライーダが、揶揄うような笑みを浮かべる。彼女だけは、頼んでホロウードから一緒に来てもらったのだ。ルフィナを育ててくれた乳母の娘であるイライーダは、幼い頃から共に育ったので主従というよりも友人に近い存在だ。
「えぇ、とっても優しくしてくださったわ。でもね……」
「でも?」
「だめ、秘密。昨晩のことは、誰にも話さないってカミル様とお約束したの」
うっかり口を滑らしてしまいそうになったルフィナは、慌てて口元を押さえる。それを見たイライーダは、分かっているというように何度もうなずいた。
「お二人の仲がよろしいようで、安心しましたよ。アルデイルの方々は皆親切ですし、カミル殿下がルフィナ様のお相手で本当に良かったです」
「ふふ、私もそう思うわ。カミル様はとっても素敵な方だもの」
心からそう言って、ルフィナは微笑んだ。自分がこんなにも幸せな結婚をすることができるなんて、ホロウードにいた頃には思ってもみなかった。
だけど、とルフィナは少しだけ遠い目をして息を吐く。
イライーダにうっかり漏らしてしまいそうになった、昨晩のこと。
カミルのことは好きだと思うし、彼との口づけはとても心地良かった。だが、行為自体はお互いに痛みしかなかったことに少し怯んでしまうのだ。それに、何だかあっという間に終わったような気もする。情熱的な夫婦は朝まであの行為を何度も繰り返すというが、あれだけすぐに終わるのなら、両手で足りないくらいの回数をするということだろうか。
せめてカミルが快楽を得てくれていたなら良かったのだけど、彼はルフィナを抱く間、ずっと眉を顰めて辛そうな顔をしていた。口での奉仕は男性にとって良いものだと本には書いてあったが、カミルは好きではないようだし。
いつになるか分からないが、次に抱かれる時はカミルがもっと気持ち良くなってくれたらいいなと、ルフィナは小さくため息をついた。
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