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6 夢の狭間で ★

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「お願ぃ……中も、触って……っ、もっと奥に欲しいの……!」
「もっと奥に? こう?」
 確かめるような声と共に、指が蜜口からそろりと奥まで侵入してくる。中を引っ掻くようにされると、それだけで身体が勝手に跳ねる。
「あぁ……んっ、そう、もっと奥、ぐちゃぐちゃにして……」
「ヤバいな、そのおねだり」
 フィンリーが、嬉しそうに小さく笑う。そして本数を増やした指が、まるで蜜を掻き出すかのように中を抉る。
 自分でもほとんど触れたことのない場所なのに、フィンリーの指が与えてくれる感覚は頭の奥が真っ白になるほどに気持ちがいい。
 だけど、指だけでは何かが足りない。
 もっと太くて熱いものがあるはずなのに。
「や、あぁっ、……指、違う……っ足りないの……」
「腰動いてるよ、メルヴィナ」
 くすりと笑ったフィンリーが、指はそのままにメルヴィナの耳元に唇を寄せた。
「ねぇ、メルヴィナ。足りないものって何? 指だけでもこんなに蕩けてるのに、何が不満? 何かほかのものが欲しい?」
「ほかの、もの」
「そう。メルヴィナの欲しいもの、教えて。何が欲しい?」
 返事を急かすように、フィンリーの指はメルヴィナの身体の内側でうごめく。せり上がってくる快楽に溺れそうになりながら、メルヴィナは必死でフィンリーの腕に縋りついた。
「フィンリーが欲しいの……! 指だけじゃもう、足りないの、お願いフィンリーの……っ」
 迫り来る絶頂に一瞬息を止めて、メルヴィナはフィンリーの耳元に唇を寄せた。
「……ちょうだい」
 それだけ言うと、あとはもう絶頂の波に飲み込まれて身体を震わせることしかできない。

「あぁもう、どこまで煽れば気がすむんだろうな、メルヴィナは」
 また怒ったようなフィンリーの声が遠くで聞こえる。
 怒らないでと手を伸ばせばしっかりと握り返されて、そのぬくもりに安心して笑みがこぼれる。
「大好きよ、フィンリー。お願い、早くきて」
 誘うように両手を広げると、一度強く抱きしめられたあと、蜜口に熱いものが触れた。
 あぁこれが待ち望んでいたものだと、メルヴィナは思わず満足げなため息を漏らした。

 ゆっくりと身体の奥に侵入してくる熱い昂りを受け入れるだけで、まるでそのまま溶けてしまいそうなほどの快感を覚える。
 初めてのはずなのに全く痛みを感じないのは、あの得体の知れない薬のおかげなのだろうか。
 最初は気遣うような表情だったフィンリーも、メルヴィナが快楽しか得ていないことを知って少し安心したような表情になる。
「気持ち、いい……。もっと、もっと奥まできて、フィンリー」
「本当……可愛すぎだろ、メルヴィナ」 
 可愛いなんて、誰にも言われたことのない言葉だ。
 それを、大好きな人からもらえるなんて。
 思わず嬉しくて頬が緩むけれど、頭のどこかでこんな都合のいい話、夢に決まっていると冷静な声もする。
 それでも、このひとときを終わらせたくなくて、メルヴィナはフィンリーの背中に強く手を回した。
 いつの間にか彼も服を脱いでいて、直接触れ合う肌のぬくもりが心地いい。 
 
「正気に戻ったら、なかったことになんてしないでくれよ」
 何度も何度もメルヴィナを揺さぶりながら、フィンリーが願うような声で囁く。
 一突きごとに悲鳴のような声をあげつつも、メルヴィナはそんなことないと首を振った。
「こんなに幸せなのに、なかったことにされたら、私も泣いちゃう。このまま、夢から覚めたくない」
「夢じゃないよ、メルヴィナ。だから、証拠を残しておいていい?」
 うかがうように見つめられて、メルヴィナはこくりとうなずいた。
 ありがとうと小さく笑ったフィンリーは、メルヴィナの胸元に顔を埋めた。ちくりとした痛みを感じて視線を向けると、白い肌に赤い痕が浮かび上がっていた。
「薬の効果が切れても、覚えてて。メルヴィナのこと、本当に愛してる」
「私も、フィンリーのことずっとずっと好きだったの。愛してるわ」
 いつものような意地っ張りで可愛くない言葉じゃなくて、素直な気持ちを伝えられたことが嬉しい。
 夢の中ではこんなにも素直になれるのだから、今度フィンリーに会ったら勇気を出して気持ちを伝えてみよう。
 そんなことを考えていると、また強く突き上げられて思考がばらばらになっていく。
「や、あ、あ……っ、だめ、イっちゃ……!」
 抱きしめるフィンリーの腕は優しいけれど、決して逃してくれない。与えられる快楽を余すところなく受け止めることになったメルヴィナは、何度目かの絶頂に押し上げられた。
 ぱちぱちと白く弾けるような快楽の余韻に、勝手に身体が震える。頭の中も真っ白に染まっていって、何も考えられなくなる。
「夢じゃないって、言ってるのにな。……もう、聞こえてないか」
 ため息まじりにフィンリーが笑った声を、どこか遠いところで聞いたような気がした。
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