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一緒に食事を
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食堂で、シェイラはひたすらにテーブルの上を見つめていた。心を無にして、目の前に並ぶ金色のカトラリーの細かな模様を視線でなぞる。
そうしていないと向かいに座ったイーヴと目が合いそうなのだ。観察するように、じっと視線を向けられているのを感じて、どう反応すればいいのか分からない。
エルフェに手伝ってもらって着替えをしたあと、シェイラは広すぎる部屋で落ち着かなく過ごした。身体を柔らかく包み込むようなソファはとても座り心地が良かったし、エルフェが淹れてくれたお茶も、こんなに香り高く味の濃いお茶は初めてだと思うほどに美味しかった。
だけど、これまでのラグノリアでの生活との落差が激しくて、気持ちも身体もついていかない。生贄となるはずだった身なのに、分不相応な扱いを受けているのではという思いがどうしても頭から離れないのだ。
リラックスできないまま過ごしていると、日暮れと同時にエルフェが夕食の時間だと声をかけてきた。
部屋で一人で食事をとるものだと思っていたのに、案内された先はこれまた豪華な食堂。そこで待っていたのはイーヴで、シェイラと一緒に食事をするという。
テーブルは広く大きくて、向かいに座ったイーヴとの距離もかなりある。それでもじっと見つめる金の瞳は何を考えているのか分からなくて、シェイラはうつむいて視線を落とすことしかできずにいた。
「その、服は」
ふいにイーヴが声をあげたので、シェイラは一瞬身体を震わせて顔を上げた。
「はい」
「エルフェが選んだのか、その服は」
不似合いだと言われるのかと思ったが、見つめるイーヴの視線は案外柔らかい。シェイラは、黙ってこくこくとうなずいた。
「よく似合ってる。ただ、少しシェイラには大きいと聞いた。明日には仕立て屋を呼んで、身体に合うものを新しく作らせるから」
「そんな、このままで平気です。新しいものなんて……、必要ないです」
首を振るシェイラを見て、イーヴは少しテーブルに身を乗り出した。体格のいい彼がそうすると、それだけでシェイラとの距離がぐんと近づいたような気がする。驚いて思わず身を引くと、イーヴは慌てたように椅子に座り直した。
「ここは、ラグノリアとは違う。ドレージアの民は迎え入れた花嫁を大切にすると決めている。シェイラを生贄だと思う者は、ここにはいない」
イーヴの口から直接、生贄ではないと断言されて、シェイラは小さく息をのんだ。彼の言うことを、信じてもいいのだろうか。
「本当……に?」
それでもまだ不安に声を揺らしながら、シェイラはつぶやく。
「私は、生贄として喰われるのではないんですか?」
「喰う……? それはないな。そもそも竜族は、人を喰わん。竜に姿を変えることはできるが、それ以外はシェイラたち人間とそんなに変わらないぞ」
酷い誤解だなとイーヴは苦笑した。少し釣り上がったその目は冷たそうなのに、見つめる金の瞳は柔らかな色をしている。
「だからシェイラ、怯えないでくれ。俺はシェイラを喰ったりしないし、もちろん傷つけるようなこともしない。こんな顔だから仕方ないんだが、怖がらないでくれると……嬉しい」
そう言って笑みを浮かべたイーヴの表情は、やはり凄みがあって少し怖い。だけど、彼はラグノリアからここへ連れてくる時も、ずっとシェイラを気遣ってくれた。きっと優しい人なのだろう。
こくりとうなずいたシェイラを見て、イーヴの視線が更に柔らかくなったような気がした。
そうしていないと向かいに座ったイーヴと目が合いそうなのだ。観察するように、じっと視線を向けられているのを感じて、どう反応すればいいのか分からない。
エルフェに手伝ってもらって着替えをしたあと、シェイラは広すぎる部屋で落ち着かなく過ごした。身体を柔らかく包み込むようなソファはとても座り心地が良かったし、エルフェが淹れてくれたお茶も、こんなに香り高く味の濃いお茶は初めてだと思うほどに美味しかった。
だけど、これまでのラグノリアでの生活との落差が激しくて、気持ちも身体もついていかない。生贄となるはずだった身なのに、分不相応な扱いを受けているのではという思いがどうしても頭から離れないのだ。
リラックスできないまま過ごしていると、日暮れと同時にエルフェが夕食の時間だと声をかけてきた。
部屋で一人で食事をとるものだと思っていたのに、案内された先はこれまた豪華な食堂。そこで待っていたのはイーヴで、シェイラと一緒に食事をするという。
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「その、服は」
ふいにイーヴが声をあげたので、シェイラは一瞬身体を震わせて顔を上げた。
「はい」
「エルフェが選んだのか、その服は」
不似合いだと言われるのかと思ったが、見つめるイーヴの視線は案外柔らかい。シェイラは、黙ってこくこくとうなずいた。
「よく似合ってる。ただ、少しシェイラには大きいと聞いた。明日には仕立て屋を呼んで、身体に合うものを新しく作らせるから」
「そんな、このままで平気です。新しいものなんて……、必要ないです」
首を振るシェイラを見て、イーヴは少しテーブルに身を乗り出した。体格のいい彼がそうすると、それだけでシェイラとの距離がぐんと近づいたような気がする。驚いて思わず身を引くと、イーヴは慌てたように椅子に座り直した。
「ここは、ラグノリアとは違う。ドレージアの民は迎え入れた花嫁を大切にすると決めている。シェイラを生贄だと思う者は、ここにはいない」
イーヴの口から直接、生贄ではないと断言されて、シェイラは小さく息をのんだ。彼の言うことを、信じてもいいのだろうか。
「本当……に?」
それでもまだ不安に声を揺らしながら、シェイラはつぶやく。
「私は、生贄として喰われるのではないんですか?」
「喰う……? それはないな。そもそも竜族は、人を喰わん。竜に姿を変えることはできるが、それ以外はシェイラたち人間とそんなに変わらないぞ」
酷い誤解だなとイーヴは苦笑した。少し釣り上がったその目は冷たそうなのに、見つめる金の瞳は柔らかな色をしている。
「だからシェイラ、怯えないでくれ。俺はシェイラを喰ったりしないし、もちろん傷つけるようなこともしない。こんな顔だから仕方ないんだが、怖がらないでくれると……嬉しい」
そう言って笑みを浮かべたイーヴの表情は、やはり凄みがあって少し怖い。だけど、彼はラグノリアからここへ連れてくる時も、ずっとシェイラを気遣ってくれた。きっと優しい人なのだろう。
こくりとうなずいたシェイラを見て、イーヴの視線が更に柔らかくなったような気がした。
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