【R18】酔った勢いでうっかりポチったセクシーランジェリーが、片想い中のお隣さん宅に誤配送されたんだけど！？

2 せめて商品名は、ボカして欲しかった。

「荷物って、これ？」
　いつも通り彼の腕に見惚れていた美梨は、その声にハッとして顔を上げた。　
　井阪が手にしていたのは、薄っぺらい小さな箱。嫌な予感に冷や汗をかく美梨の前に、井阪が箱を差し出した。
「俺んちのポストに入ってたから。宛先美梨んちだったからさ、届けようと思って」
　恐る恐る宛先のラベルを確認した美梨は、絶望して思わず目を閉じた。
　間違って荷物が届くことはまぁあることだから、それはいい。だけど、物が悪すぎた。
　箱にぺたりと貼られたラベルには、確かに美梨の名前と見覚えのあるランジェリーショップの名前。
　それだけなら何とでも言い訳ができただろうに、品名のところに書いてある文字が最悪だ。
『スケスケセクシーサンタコスチューム（下着）』なんて、わざわざご丁寧に書いてくれなくてもいいのに！！！　と、美梨は内心で絶叫する。

「あ、ありがと」
　何でもない風を装って受け取ったものの、手が震えている。井阪も間違いなくこれを目にしただろう。スケスケセクシー下着（サンタ）を買ったなんて、知られたくなかったのに。なんなら美梨は、清楚系をめちゃくちゃ装っていたのに。
「美梨、それさ」
　もう遅いけれど、荷物を隠すように胸に抱え込んだ美梨を見て、井阪が低い声でつぶやく。
「な、何でもないの！　ちょっとほら、あの、えぇと、なんか欲しくて！」
　慌てて逃げるように自分の部屋に入ろうとした美梨の腕を、井阪が掴んだ。
「井阪さ……」
「それ、誰のために買ったの？　そんなスケスケセクシーサンタコスチ」
「わぁぁ、待って、大きな声で言わないで！　ここ廊下！！」
　彼の声をかき消すように悲鳴を上げて、気づけば美梨は井阪を自分の部屋の中に連れ込んでいた。玄関のドアを閉めて、これで声が外に漏れることはないだろうとため息をつく。
「美梨」
　すぐそばで声が聞こえて、彼を部屋に迎えるのはこれが初めてであることに気づく。狭い玄関ではお互いの距離が近くて、吐息すら感じられそうだ。
「彼氏……いたんだ」
「え？」
「そんな下着買うくらい、仲良いんだよな。ごめん、俺、知らなくて」
　灯りを背にうつむいた井阪の顔は、暗くてよく見えない。聞いたことがないほどの低い声に、美梨はぷるぷると首を振った。
「ち、ちが、彼氏なんていないし！」
「え、でもじゃあ何でそんな下着。……誰かに見せるために買ったんだろ？」
「そんなわけ……っ！　これはその、あの……酔った勢いで間違って買っちゃっただけ！」
「酔った勢い……？」
　ようやく顔を上げた井阪は怪訝な表情をしていて、美梨は友人との飲み会で悪乗りした挙句下着を購入したのだと弁解することとなった。