上 下
1 / 9

1 酔った勢いのネットショッピングは危険。

しおりを挟む
「え、何……これ」
 何気なく通販サイトの購入履歴を確認した美梨みりは、思わずパソコンの画面を二度見した。
 覚えのない、下着の注文。
 もしや不正利用かと慌てながら購入日を見ると、一週間前の週末の夜。確かに買い物をした記憶がある。
 記憶を辿って美梨は頭を抱えた。
 
 その日美梨は、友人たちと少し早めの忘年会と称してお気に入りのワインバーで飲んでいた。仕事の愚痴やプライベートの悩み、最近の出来事などを報告しあいながらグラスを重ね、いい感じに酔っ払ったところで話題は一人の友人の恋愛話になった。
 彼女曰く、恋人との付き合いが年単位になってマンネリ化していたところに、新しい下着を買ってみたらものすごく盛り上がったのだという。プロポーズまでされたという報告まで受けて、美梨たちは大いに盛り上がった。
 どうせならあやかりたい! ということで、皆でそろって友人の買ったランジェリーショップでそれぞれ下着を購入したのだ。もちろん美梨もスマホでポチったのだが、選んだのはサンタコスチュームデザインのもの。いくらクリスマスが近いからって、何故季節ものを選んでしまったのか。しかも到底普段使いのできないめちゃくちゃ露出の高いデザインだし、地味に高い。
 酔っぱらった勢いとは恐ろしいものだとため息をつきつつパソコンの画面に視線を戻した美梨は、再び画面を二度見した。
「え、待って、配達完了……? しかも昨日届いて、る?」
 履歴には確かに配達済の文字があるものの、美梨は受け取った記憶がない。ポスト投函だったのだろうかとマンション1階の郵便受けに慌てて見に行くも、近所の飲食店のチラシしか入っていなかった。不在通知も入っていないということは、やはりどこかに届けられたのだろう。
 考えられるのは、両隣の郵便受けに間違って投函された可能性。だけど勝手にのぞく真似なんてできるはずもなくて、美梨はため息をつきながらチラシ片手に部屋に戻った。

「あれ、井阪いさかさん?」
 自分の部屋の前に見覚えのある人影を見つけて、美梨は思わず声をかけた。その声に気づいたのか、背の高い男性が振り返ってこちらに向かって手を挙げた。
「おはよ、美梨。出かけてた?」
「あ、ちょっと荷物来てないかなって下に確認しに行ってたの」
 お気に入りの部屋着を着ていて良かったと思いつつ、美梨は髪を手で整えつつ彼のそばへと向かう。
 隣の部屋に住む井阪は、二年前に美梨がここに越してきた時からずっと好きな人だ。引っ越しの挨拶の際に、困ったことがあったら何でも言ってと笑った笑顔に一目惚れして以来、少しずつ距離を詰めて、今では下の名前で呼んでもらえるほどに親しくなった。
 お互い映画鑑賞が趣味ということもあって休日には一緒に映画を観に行ったこともあるし、仕事帰りに駅で会ったら一緒に帰ったり、そのまま飲みに行くことだってある。
 井阪に彼女がいないことは把握済みだし、恐らく美梨のことを憎からず想ってくれていると思う。あと何かひとつきっかけがあれば二人の関係は恋人同士に進むような気がするのに、お互いタイミングを掴めずにいる、そんな関係。
 セキュリティ会社で働いているという井阪は鍛えているのかいい身体をしていて、あの腕に抱きしめられたらどんなに素敵だろうと美梨はいつもうっとりと見つめてしまう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

練習なのに、とろけてしまいました

あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。 「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく ※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

雨音。―私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました―

入海月子
恋愛
雨で引きこもっていた瑞希の部屋に、突然、義弟の伶がやってきた。 伶のことが好きだった瑞希だが、高校のときから彼に避けられるようになって、それがつらくて家を出たのに、今になって、なぜ?

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

ハイスペ男からの猛烈な求愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペ男からの猛烈な求愛

完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。

恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。 副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。 なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。 しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!? それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。 果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!? *この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 *不定期更新になることがあります。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。 しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。 お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。 私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。 【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】 ーーーーー 小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。 内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。 ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が 作者の感想です|ω・`) また場面で名前が変わるので気を付けてください

処理中です...