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1 酔った勢いのネットショッピングは危険。
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「え、何……これ」
何気なく通販サイトの購入履歴を確認した美梨は、思わずパソコンの画面を二度見した。
覚えのない、下着の注文。
もしや不正利用かと慌てながら購入日を見ると、一週間前の週末の夜。確かに買い物をした記憶がある。
記憶を辿って美梨は頭を抱えた。
その日美梨は、友人たちと少し早めの忘年会と称してお気に入りのワインバーで飲んでいた。仕事の愚痴やプライベートの悩み、最近の出来事などを報告しあいながらグラスを重ね、いい感じに酔っ払ったところで話題は一人の友人の恋愛話になった。
彼女曰く、恋人との付き合いが年単位になってマンネリ化していたところに、新しい下着を買ってみたらものすごく盛り上がったのだという。プロポーズまでされたという報告まで受けて、美梨たちは大いに盛り上がった。
どうせならあやかりたい! ということで、皆でそろって友人の買ったランジェリーショップでそれぞれ下着を購入したのだ。もちろん美梨もスマホでポチったのだが、選んだのはサンタコスチュームデザインのもの。いくらクリスマスが近いからって、何故季節ものを選んでしまったのか。しかも到底普段使いのできないめちゃくちゃ露出の高いデザインだし、地味に高い。
酔っぱらった勢いとは恐ろしいものだとため息をつきつつパソコンの画面に視線を戻した美梨は、再び画面を二度見した。
「え、待って、配達完了……? しかも昨日届いて、る?」
履歴には確かに配達済の文字があるものの、美梨は受け取った記憶がない。ポスト投函だったのだろうかとマンション1階の郵便受けに慌てて見に行くも、近所の飲食店のチラシしか入っていなかった。不在通知も入っていないということは、やはりどこかに届けられたのだろう。
考えられるのは、両隣の郵便受けに間違って投函された可能性。だけど勝手にのぞく真似なんてできるはずもなくて、美梨はため息をつきながらチラシ片手に部屋に戻った。
「あれ、井阪さん?」
自分の部屋の前に見覚えのある人影を見つけて、美梨は思わず声をかけた。その声に気づいたのか、背の高い男性が振り返ってこちらに向かって手を挙げた。
「おはよ、美梨。出かけてた?」
「あ、ちょっと荷物来てないかなって下に確認しに行ってたの」
お気に入りの部屋着を着ていて良かったと思いつつ、美梨は髪を手で整えつつ彼のそばへと向かう。
隣の部屋に住む井阪は、二年前に美梨がここに越してきた時からずっと好きな人だ。引っ越しの挨拶の際に、困ったことがあったら何でも言ってと笑った笑顔に一目惚れして以来、少しずつ距離を詰めて、今では下の名前で呼んでもらえるほどに親しくなった。
お互い映画鑑賞が趣味ということもあって休日には一緒に映画を観に行ったこともあるし、仕事帰りに駅で会ったら一緒に帰ったり、そのまま飲みに行くことだってある。
井阪に彼女がいないことは把握済みだし、恐らく美梨のことを憎からず想ってくれていると思う。あと何かひとつきっかけがあれば二人の関係は恋人同士に進むような気がするのに、お互いタイミングを掴めずにいる、そんな関係。
セキュリティ会社で働いているという井阪は鍛えているのかいい身体をしていて、あの腕に抱きしめられたらどんなに素敵だろうと美梨はいつもうっとりと見つめてしまう。
何気なく通販サイトの購入履歴を確認した美梨は、思わずパソコンの画面を二度見した。
覚えのない、下着の注文。
もしや不正利用かと慌てながら購入日を見ると、一週間前の週末の夜。確かに買い物をした記憶がある。
記憶を辿って美梨は頭を抱えた。
その日美梨は、友人たちと少し早めの忘年会と称してお気に入りのワインバーで飲んでいた。仕事の愚痴やプライベートの悩み、最近の出来事などを報告しあいながらグラスを重ね、いい感じに酔っ払ったところで話題は一人の友人の恋愛話になった。
彼女曰く、恋人との付き合いが年単位になってマンネリ化していたところに、新しい下着を買ってみたらものすごく盛り上がったのだという。プロポーズまでされたという報告まで受けて、美梨たちは大いに盛り上がった。
どうせならあやかりたい! ということで、皆でそろって友人の買ったランジェリーショップでそれぞれ下着を購入したのだ。もちろん美梨もスマホでポチったのだが、選んだのはサンタコスチュームデザインのもの。いくらクリスマスが近いからって、何故季節ものを選んでしまったのか。しかも到底普段使いのできないめちゃくちゃ露出の高いデザインだし、地味に高い。
酔っぱらった勢いとは恐ろしいものだとため息をつきつつパソコンの画面に視線を戻した美梨は、再び画面を二度見した。
「え、待って、配達完了……? しかも昨日届いて、る?」
履歴には確かに配達済の文字があるものの、美梨は受け取った記憶がない。ポスト投函だったのだろうかとマンション1階の郵便受けに慌てて見に行くも、近所の飲食店のチラシしか入っていなかった。不在通知も入っていないということは、やはりどこかに届けられたのだろう。
考えられるのは、両隣の郵便受けに間違って投函された可能性。だけど勝手にのぞく真似なんてできるはずもなくて、美梨はため息をつきながらチラシ片手に部屋に戻った。
「あれ、井阪さん?」
自分の部屋の前に見覚えのある人影を見つけて、美梨は思わず声をかけた。その声に気づいたのか、背の高い男性が振り返ってこちらに向かって手を挙げた。
「おはよ、美梨。出かけてた?」
「あ、ちょっと荷物来てないかなって下に確認しに行ってたの」
お気に入りの部屋着を着ていて良かったと思いつつ、美梨は髪を手で整えつつ彼のそばへと向かう。
隣の部屋に住む井阪は、二年前に美梨がここに越してきた時からずっと好きな人だ。引っ越しの挨拶の際に、困ったことがあったら何でも言ってと笑った笑顔に一目惚れして以来、少しずつ距離を詰めて、今では下の名前で呼んでもらえるほどに親しくなった。
お互い映画鑑賞が趣味ということもあって休日には一緒に映画を観に行ったこともあるし、仕事帰りに駅で会ったら一緒に帰ったり、そのまま飲みに行くことだってある。
井阪に彼女がいないことは把握済みだし、恐らく美梨のことを憎からず想ってくれていると思う。あと何かひとつきっかけがあれば二人の関係は恋人同士に進むような気がするのに、お互いタイミングを掴めずにいる、そんな関係。
セキュリティ会社で働いているという井阪は鍛えているのかいい身体をしていて、あの腕に抱きしめられたらどんなに素敵だろうと美梨はいつもうっとりと見つめてしまう。
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