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3 懺悔のはずが

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 コーヒーを飲みながら、ぽつりぽつりと懺悔するように計画を自白したリズベットの話を、キースは黙って聞いていた。
「……それで、その『証拠写真』があれば、俺に責任を取れと迫れると思ったわけか」
「うぅ、ごめんなさい。私、自分のことしか考えてなくて……」
 魔法を勝手に他人にかけるなんて、許されることではない。今更ながら、とんでもないことをしでかしてしまったと、リズベットは唇を噛む。
「魔法局に自首します。魔力剥奪かもしれないけど、それだけのことをしたわけなので……」
 もう一度深く頭を下げたリズベットの手を、キースの大きな手が握った。
「別に気にしてないからいいよ。魔法局になんて、行く必要ない。それに、睡眠魔法はかからなかったわけだし」
「でも」
 キースの優しさに甘えてはならないと、リズベットは唇を引き結んで首を振る。そんなリズベットの手を握ったまま、キースは先程の写真を手に取った。
「うん、なかなか良く撮れてる。本当に二人で熱い夜を過ごしたみたいに見える」
 ほら、とリズベットにも写真を見せながら、キースは楽しそうに笑った。下着姿で幸せそうな表情を浮かべるリズベットを、キースの腕がしっかりと抱きしめているように見える。本当はキースは服すら脱いでいないけど、角度のせいかまるで裸で抱き合っているみたいだ。
 無言で写真を見つめるリズベットの耳元に、キースがそっと顔を寄せた。
「ねぇ、それなら写真だけじゃなくて、事実にしちゃおうか」
「え……?」
「俺と、熱い夜を過ごしたかったんだろ? それから、できることならこの部屋に、俺を監禁したかったんだっけ」
 にっこりと笑ったキースは、ぐいぐいとリズベットとの距離を詰める。
「いいよ、監禁されてあげる」
「え、どういう……」
「あの店さ、ちょうど知り合いに譲ろうかと思ってたんだ。だから俺は別に仕事に行く必要ないし、この部屋から出る理由がない」
「え、いやあの、監禁とかはその……本気、ではなくて」
「リズベット、激務だって言ってたもんな。最近まともな食事とってないだろ。キッチンを使った形跡がなかったし、栄養ドリンクの瓶ばっか並んでた。これからは俺がリズベットの食事を作るから、心配しないで。野菜もしっかりとろうな」
「え、え……」
 にこにこと笑顔で近づいてくるキースに、気がつけばリズベットはソファの隅に追い詰められていた。
「前からずっと好きだった子に下着姿で抱きつかれた上に、監禁したいくらいに重たい愛を向けられてるなんて、死ぬほど興奮するんだけど」
「キース……さん?」
「俺もずっと、リズベットのこと好きだったよ。毎朝、俺の淹れたコーヒーを飲んで、元気出たと笑うきみに癒されてた」
「嘘……」
「いつかデートに誘えたらいいなって思ってたけど、まさかリズベットの方から来てくれるなんて。ほんと最高」
 蕩けるような笑みを浮かべたキースが、ゆっくりとリズベットに顔を近づけてくる。するりと頬を撫でた手が、微かに上を向くようにと促した。目を閉じてそれに従うと、柔らかな唇がそっと重ねられた。
 最初は啄むようだった口づけは、気づけば食べられてしまいそうなほどに深いものに変わっている。口内を余すところなく探るようなキースの舌に翻弄されて、リズベットはひたすらに鼻にかかった甘い声をあげ続けた。

「キスだけでこんなにも蕩けて可愛い、リズベット」 
 妖艶な笑みを浮かべたキースは、リズベットの長い黒髪をそっと掬い上げて口づけた。髪を切りに行く暇もなかったからずっと伸ばしっぱなしだし、毛先なんてパサパサだ。彼の手の中にある自分の髪に凄まじい枝毛を発見して、リズベットは少し泣きたくなる。
「俺、家事全般得意だし、好きな子にはとことん尽くしたいタイプなんだ。だからさ、俺を閉じ込めてよ、リズベット」
 じっと見つめる青い瞳に魅入られて、リズベットは気づけば無言でうなずいていた。

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