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リュートは力強くペンを握り、使用人が用意した紙に、自分の名前を書き込む為に机へ向かう。
でもペン先が紙につく…………その寸前に、ドルシーが横から、サッと届を奪った。

「えぇっ、ドルシー?」

彼女に後押しをされてサインしようとしたのに、そのドルシー本人に紙を取り上げられて、リュートが困惑する。
ドルシーは、ジィ…ッと書かれている文章を睨んだ。

「……これ、婚約解消じゃなくて、婚約破棄の届じゃない」

ドルシーがジロッと私を睨む。
アシストしたと思えば、これ?

「しかも、あなたからの破棄になっているわ」

「それが、何か問題でも?」

「これじゃリュートに落ち度があると思われちゃうでしょう!?」

思われちゃう、じゃなくて。落ち度しかないんだってば。

「…………婚約者との同棲する屋敷に女性を連れ込んで一年暮らしていた事、十分な落ち度だと思いますよ」

「うっ……ち、違うわ!だって私達はそんな関係じゃっ……」

「たった今、私の前で抱きしめ合ってましたけど。熱い気持ちを語り合ってましたよね。それとも気持ちは嘘だったと?」

「嘘なんか言ってない!」

ドルシーが叫ぶ。
病弱設定どこに行ったんですか。体に障りますよ。
おろおろしてたリュートが、その声で我に返ったのか私の方に言ってくる。

「リオン、また君はそんな冷たい言い方をして……!」

ドルシーもドルシーで、リュートが私を非難する声を聞いて体の弱いふりを取り戻したみたいだった。
ふらっと額に手をあててよろめく。

「あぁっ、リュート…………私また、体調が……」

「ど、ドルシー!」

私は視線で使用人に合図する。
頷いた使用人が、ドルシーの手から、さっと紙を取り上げた。

「あっ!」
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