(完結)何か勘違いをしてる婚約者の幼馴染から、婚約解消を言い渡されました

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ファイルを一冊確認し終えた。

「あのー……そういうのは、せめて隠れてやるべきじゃ……」

そこで一応声を掛けてあげるけど、二人の世界に入り切ってしまってるらしく、何も届いてないようだ。
今こっそりと書き物仕事にとりかかっても、もしかしたら気付かれないかもしれない。

…………この部屋には三人しかいない。
使用人には『私が呼ぶまで、仕事部屋には来ないでちょうだい。集中したいの』と、言ってあるためだ。
さすが、侯爵家が用意した使用人だけあって、言いつけはきちんと守ってくれる。

もちろん、リュートとドルシーにだって『仕事中は緊急の用事以外声をかけないでほしい』と伝えてあるのに……
邪魔をしに来たこの二人が、邪魔をしたまま、二人の世界を作り上げてしまった。
…………だから私の仕事部屋でするな……

「私だったら……？ドルシー、教えてくれ……」

辛抱強くリュートは囁いていた。
しかし部屋がそこまで広くないので、その声は私まで筒抜けでしたが。
ドルシーは、もう一つ、決意を固めたようだった。
キラキラと涙を湛えた眼差しで、リュートをしっかりと見つめる。

「わ、私だったら…………あなたの事、もっと大切に出来るのに……」

「え、それって……でも……今より大変になるかもしれないよ？それでもいいのかい……？」

「いいの！私は、リオンなんかよりもっともっと、あなたの事を大事に出来る自信があるから……！」

「ドルシー……！僕、本当はずっと前から君の事を……！」

引き出した答えに、リュートは強く感動したようだった。
二人はかたく抱き締めあう。

「…………」

…………はぁ。
このぐらいで、もう十分かしら？