13 / 74
13
しおりを挟む
慌ただしく場を後にする二人を見て、マリアンヌも、視線で使用人へと合図をしながら後を追いました。
玄関ポーチで微かに戸惑いを見せるロコを、ビートは強引に引こうとしています。
「あの~、雨が……」
控えめにそう告げたロコの意図にも、ビートは気を払うつもりはないようでした。
だからこそ早く行こうとしている……そういわんばかりです。
雨天の空をちらりと見ると、続いて伯爵家の庭を眺めました。
「ああ、そうだな……この道を突っ切ろう」
伯爵家の中庭の造りは、少し膨らんだ通り道に石畳が敷いてあります。
植えた木々や花がバランスよく見えるような配置となっているのですが……
ビートはそれを無視して、直線の道を行こうとロコへ伝えました。
馬車のある表通りにたどり着くには、確かに石畳を踏まずにまっすぐ道を行く方が早いです。
しかし、そこは舗装をされていない場所。
強まった雨に打たれて、そこかしこにぬかるみが見えるようでした。
「お待ちください、今泥除けを……」
履物の下に履いて使う靴。
ロコとはそうサイズの違わないものとみて、自分のものを差し出そうとするマリアンヌでしたが、
ビートはマリアンヌのそう言った、あらゆる申し出が気に入らないようでした。
「何を仕込まれるか分かったものではない。さっさと戻れ!」
「え……っ?」
そうまで言われたマリアンヌは、驚きに固まってしまいます。
その様子を見て、ビートは鼻からフンと息を抜きます。
「行くぞ、ロコ」
「あっ……」
そうマリアンヌに吐き捨ててロコの手を大きく引くと、雨の中を土を跳ねさせながら走り出して行きました。
玄関ポーチで微かに戸惑いを見せるロコを、ビートは強引に引こうとしています。
「あの~、雨が……」
控えめにそう告げたロコの意図にも、ビートは気を払うつもりはないようでした。
だからこそ早く行こうとしている……そういわんばかりです。
雨天の空をちらりと見ると、続いて伯爵家の庭を眺めました。
「ああ、そうだな……この道を突っ切ろう」
伯爵家の中庭の造りは、少し膨らんだ通り道に石畳が敷いてあります。
植えた木々や花がバランスよく見えるような配置となっているのですが……
ビートはそれを無視して、直線の道を行こうとロコへ伝えました。
馬車のある表通りにたどり着くには、確かに石畳を踏まずにまっすぐ道を行く方が早いです。
しかし、そこは舗装をされていない場所。
強まった雨に打たれて、そこかしこにぬかるみが見えるようでした。
「お待ちください、今泥除けを……」
履物の下に履いて使う靴。
ロコとはそうサイズの違わないものとみて、自分のものを差し出そうとするマリアンヌでしたが、
ビートはマリアンヌのそう言った、あらゆる申し出が気に入らないようでした。
「何を仕込まれるか分かったものではない。さっさと戻れ!」
「え……っ?」
そうまで言われたマリアンヌは、驚きに固まってしまいます。
その様子を見て、ビートは鼻からフンと息を抜きます。
「行くぞ、ロコ」
「あっ……」
そうマリアンヌに吐き捨ててロコの手を大きく引くと、雨の中を土を跳ねさせながら走り出して行きました。
28
お気に入りに追加
3,589
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】聖女の妊娠で王子と婚約破棄することになりました。私の場所だった王子の隣は聖女様のものに変わるそうです。
五月ふう
恋愛
「聖女が妊娠したから、私とは婚約破棄?!冗談じゃないわよ!!」
私は10歳の時から王子アトラスの婚約者だった。立派な王妃になるために、今までずっと頑張ってきたのだ。今更婚約破棄なんて、認められるわけないのに。
「残念だがもう決まったことさ。」
アトラスはもう私を見てはいなかった。
「けど、あの聖女って、元々貴方の愛人でしょうー??!絶対におかしいわ!!」
私は絶対に認めない。なぜ私が城を追い出され、あの女が王妃になるの?
まさか"聖女"に王妃の座を奪われるなんて思わなかったわーー。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
【完結】他の令嬢をひいきする婚約者と円満に別れる方法はありますか?
曽根原ツタ
恋愛
マノンの婚約者デリウスは、女友達のルチミナばかりえこひいきしている。『女友達』というのは建前で、本当は彼女に好意を寄せているのをマノンは察していた。彼はマノンにはひどい態度を取るのに、ルチミナのことをいつも絶賛するし優先し続けた。
そんなあるとき、大事件発生。
デリウスがなんと、マノンにふさわしい婿を決めるための決闘を新大公から申し込まれて……?
★他の令嬢をひいきする婚約者と(ちょっと物騒な方法で)すっぱり別れ、新しい恋をする話。
小説家になろうでも公開中
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる