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そうしている間にも、見る間に雨脚が強まっていきます。
このままでは中庭を抜けて馬車へたどり着く前に濡れてしまうことは間違いないでしょう。
す、とマリアンヌも窓の方へ近づきました。
そして、どことなく不安げに外を見ているロコへと話しかけます。

「よければ、傘で馬車まで送らせて下さいませ」

部屋の入り口では既に、雨傘を携えた使用人が頭を下げて控えています。
マリアンヌとしてはロコのためと、本人へ告げたつもりでした。
ロコとしてもマリアンヌの厚意が伝わっていたのでしょう、ホッとしたように胸を撫でています。

「本当ですか~、お言葉に甘えて……」

けれど、その声もビートに遮られます。

「……そう距離もない、走ればすぐだ。行こう、ロコ」

「え……」

「ビート様」

マリアンヌに嫌悪感を持つのはこの際知ったことではないけれど、口を挟んだのは他でもない、彼の連れであるロコのため。
彼女の身を冷やしてしまうことを案じたのはもちろんのこと、この上等なワンピースを雨に濡らしてしまうのは忍びない……
そう感じて伝えたことを知ってか知らずか、ビートは強硬な姿勢を崩さないでいるようです。

意地の張りどころを間違っているのでは……マリアンヌはそう感じながら、なおも言葉を募ろうとしたのですが。
ビートはもはや聞く耳をもっていないようです。

「行くぞ」

「あっ……」

そして、ロコの手を強引に取ると部屋を出て行ってしまいました。
ロコは何か言いたげに一度マリアンヌの方を見ましたが、前を向いていたビートはそれに気付かないようでした。


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