12 / 74
12
しおりを挟む
そうしている間にも、見る間に雨脚が強まっていきます。
このままでは中庭を抜けて馬車へたどり着く前に濡れてしまうことは間違いないでしょう。
す、とマリアンヌも窓の方へ近づきました。
そして、どことなく不安げに外を見ているロコへと話しかけます。
「よければ、傘で馬車まで送らせて下さいませ」
部屋の入り口では既に、雨傘を携えた使用人が頭を下げて控えています。
マリアンヌとしてはロコのためと、本人へ告げたつもりでした。
ロコとしてもマリアンヌの厚意が伝わっていたのでしょう、ホッとしたように胸を撫でています。
「本当ですか~、お言葉に甘えて……」
けれど、その声もビートに遮られます。
「……そう距離もない、走ればすぐだ。行こう、ロコ」
「え……」
「ビート様」
マリアンヌに嫌悪感を持つのはこの際知ったことではないけれど、口を挟んだのは他でもない、彼の連れであるロコのため。
彼女の身を冷やしてしまうことを案じたのはもちろんのこと、この上等なワンピースを雨に濡らしてしまうのは忍びない……
そう感じて伝えたことを知ってか知らずか、ビートは強硬な姿勢を崩さないでいるようです。
意地の張りどころを間違っているのでは……マリアンヌはそう感じながら、なおも言葉を募ろうとしたのですが。
ビートはもはや聞く耳をもっていないようです。
「行くぞ」
「あっ……」
そして、ロコの手を強引に取ると部屋を出て行ってしまいました。
ロコは何か言いたげに一度マリアンヌの方を見ましたが、前を向いていたビートはそれに気付かないようでした。
このままでは中庭を抜けて馬車へたどり着く前に濡れてしまうことは間違いないでしょう。
す、とマリアンヌも窓の方へ近づきました。
そして、どことなく不安げに外を見ているロコへと話しかけます。
「よければ、傘で馬車まで送らせて下さいませ」
部屋の入り口では既に、雨傘を携えた使用人が頭を下げて控えています。
マリアンヌとしてはロコのためと、本人へ告げたつもりでした。
ロコとしてもマリアンヌの厚意が伝わっていたのでしょう、ホッとしたように胸を撫でています。
「本当ですか~、お言葉に甘えて……」
けれど、その声もビートに遮られます。
「……そう距離もない、走ればすぐだ。行こう、ロコ」
「え……」
「ビート様」
マリアンヌに嫌悪感を持つのはこの際知ったことではないけれど、口を挟んだのは他でもない、彼の連れであるロコのため。
彼女の身を冷やしてしまうことを案じたのはもちろんのこと、この上等なワンピースを雨に濡らしてしまうのは忍びない……
そう感じて伝えたことを知ってか知らずか、ビートは強硬な姿勢を崩さないでいるようです。
意地の張りどころを間違っているのでは……マリアンヌはそう感じながら、なおも言葉を募ろうとしたのですが。
ビートはもはや聞く耳をもっていないようです。
「行くぞ」
「あっ……」
そして、ロコの手を強引に取ると部屋を出て行ってしまいました。
ロコは何か言いたげに一度マリアンヌの方を見ましたが、前を向いていたビートはそれに気付かないようでした。
37
お気に入りに追加
3,589
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】聖女の妊娠で王子と婚約破棄することになりました。私の場所だった王子の隣は聖女様のものに変わるそうです。
五月ふう
恋愛
「聖女が妊娠したから、私とは婚約破棄?!冗談じゃないわよ!!」
私は10歳の時から王子アトラスの婚約者だった。立派な王妃になるために、今までずっと頑張ってきたのだ。今更婚約破棄なんて、認められるわけないのに。
「残念だがもう決まったことさ。」
アトラスはもう私を見てはいなかった。
「けど、あの聖女って、元々貴方の愛人でしょうー??!絶対におかしいわ!!」
私は絶対に認めない。なぜ私が城を追い出され、あの女が王妃になるの?
まさか"聖女"に王妃の座を奪われるなんて思わなかったわーー。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。
和泉 凪紗
恋愛
伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。
三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。
久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。
【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!
五月ふう
恋愛
「どういうことですか・・・?私は、ウルブス様の婚約者としてここに来たはずで・・・。その女性は・・・?」
城に来た初日、婚約者ウルブス王子の部屋には彼の愛人がいた。
デンバー国有数の名家の一人娘シエリ・ウォルターンは呆然と王子ウルブスを見つめる。幸せな未来を夢見ていた彼女は、動揺を隠せなかった。
なぜ婚約者を愛人と一緒に部屋で待っているの?
「よく来てくれたね。シエリ。
"婚約者"として君を歓迎するよ。」
爽やかな笑顔を浮かべて、ウルブスが言う。
「えっと、その方は・・・?」
「彼女はマリィ。僕の愛する人だよ。」
ちょっと待ってくださいな。
私、今から貴方と結婚するはずでは?
「あ、あの・・・?それではこの婚約は・・・?」
「ああ、安心してくれ。婚約破棄してくれ、なんて言うつもりはないよ。」
大人しいシエリならば、自分の浮気に文句はつけないだろう。
ウルブスがシエリを婚約者に選んだのはそれだけの理由だった。
これからどうしたらいいのかと途方にくれるシエリだったがーー。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
【完結】他の令嬢をひいきする婚約者と円満に別れる方法はありますか?
曽根原ツタ
恋愛
マノンの婚約者デリウスは、女友達のルチミナばかりえこひいきしている。『女友達』というのは建前で、本当は彼女に好意を寄せているのをマノンは察していた。彼はマノンにはひどい態度を取るのに、ルチミナのことをいつも絶賛するし優先し続けた。
そんなあるとき、大事件発生。
デリウスがなんと、マノンにふさわしい婿を決めるための決闘を新大公から申し込まれて……?
★他の令嬢をひいきする婚約者と(ちょっと物騒な方法で)すっぱり別れ、新しい恋をする話。
小説家になろうでも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる