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侯爵令息であるビートには、マリアンヌの他にも社交界などで貴族の女性と相対する機会もあるでしょう。
その女性たちと比べても特段派手とも言えぬ格好をしたマリアンヌは、疑問符を頭の上に浮かべます。
自分の婚約者は、一体何を思ってこんなことを急に言い出したのだろう……そんな気持ちで。

そして自分の一存で婚約破棄を受け入れていいものかと、対話を試みることにしました。

「その……一応、教えて頂けますか。私のどの辺りが、派手派手しいと……?」

おずと申し出ると、ビートは決まっているとばかりに吐き捨てました。

「分からないのか?そんなに大きなアンティークのジュエリーを身に着けておいて」

マリアンヌは胸元に、大きな宝石をあしらったブローチを付けていました。

マリアンヌの身に着けているブローチ。
これは伯爵家に代々伝わるもので、この家の年頃の女性は必ず身に着けるようにという習わしがあります。
マリアンヌには2つ下に妹がいるため、このブローチもそのうち妹の元へ行くアクセサリーということになっています。

ビートは、そのブローチにもまるで仇敵を見るかのような表情になります。

「僕の目は誤魔化せないよ。それは途方もない高値が付く代物だろう」

確かに高価な代物だとは知っていますが、それ以上にこのブローチには意味がつくもの。
その事情を知ろうとも、慮ろうともしないで邪険にするビートへ、マリアンヌも少し気分を沈ませます。

「このブローチは……我が伯爵家の風習で……」

そう募るマリアンヌの言葉にも耳を貸さず、ビートは大きなため息をつきます。

「我が伯爵家、ね。
ちょっとばかり貿易で儲けていい気になっているのかもしれないが、財をひけらかすなんて品のない成金のすることだ」

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