8 / 35
8 俺である理由
しおりを挟む
ササッ!と多次元ボックスから二つ鍋を出し、カパッと開けてみせた。
< 多次元ボックス >
多次元と呼ばれる空間へ繋がる箱型のアイテム
欲しいと願うだけで空中に入口が出現し、どんなモノでも出し入れすることができる。
製作者のレベルによりその収容できる大きさが違う
中に入れておけば時が止まるため食べ物も腐らない
この便利なアイテムのお陰で暇な時は沢山料理を作り置きしておいて、好きな時に出せる。
俺の中では、地球にも是非とも普及してほしいアイテムNo. 1に輝いている。
一人暮らしだと一食分作るの難しいんだよな……。
夏に気づくと傷んでしまっていたファミリーサイズのキャベツとか、勿論ちゃんと食べたが味落ちは確実にしていた食材達を嘆く。
ヒカリ君は俺の言葉を聞いて睨む目の勢いは衰えないが、ため息をつきながら空いている場所に座ってくれた。
それにキラッと目を輝かせ、セカセカセカ~と皿に作り置きのオカズをこれでもかと盛り付けていく。
実はこの世界、大豆が結構主流栽培物であったため醤油も当然のようにあった。
しかしどうもお肉に掛けるくらいしか活用法がなかった様だったので、他の出汁と共に煮込み料理に使ったらこれまた大好評!
実はそれで作った煮物はヒカリ君の大好物になっている事も知っているのだ。
ドヤッとしながら、実に若者に相応しい大盛り煮物丼ぶりをツンツン勇者様に差し出すと、そのまま無言で食べ始めた。
ムスッ!としているが、スプーンの勢いは衰えず、やはりお腹は減っていた様だ。
そうして食事をしている間に、先程吹っ飛ばされたコップを回収すると手早く拭き取り、また熱いお茶を淹れてあげる。
そしてそれを少し冷ましてから差し出してやれば今度は振り払われずに受け取ってくれた。
「 ……惨めな中年。 」
ボソッと呟かれる言葉は辛棘だが、先ほどのトゲトゲオーラは鳴りを顰めている。
「 いつかは誰でも中年になる。
今から俺を見てよく勉強しておくように。 」
へんっと鼻で笑ってやると、アイリーン達がここぞとばかりに俺をなじる言葉を開始。
「 ふん!勇者様をあんたみたいなしょぼくれたおじさんと一緒にしないでよね!
勇者様には輝かしい未来が待っているんだから! 」
「 そうよぉ~。
なんていっても勇者様はこの旅が終わったら王様の次の身分が与えられるの。
地位も名誉も財も思うがままの夢の様な生活が待っているわ~♡ 」
アイリーンとメルクがウットリ~とした表情で、勇者の輝かしい未来を語る。
それにコホンと咳払いをして話し出すのはキュアだ。
「 歴代勇者様達は、その後誰もが幸せな人生を送ってきました。
ある者は王女と婚姻を交わし王になった者もいれば、国のトップ層に名を連ね一生贅を尽くした生活を送った者もいます。
他にも沢山の女性を囲いハーレム王になった者もいたそうです。 」
「 スゲェよな~。
あたい達もこの旅が終われば一生遊んで暮らせる生活が待ってるんだぜ! 」
「 へぇ~。
まぁ、そりゃー命の危険があるし、その分給料も高くもらわないとな。 」
ハイリスク、ハイリターンの代表選手みたいなもんか。勇者パーティーは。
ほほ~う?
自分には縁のない世界にイマイチ現実味を感じられずに首を傾げる。
実は俺もこの旅が終わり、訳のわからんなんちゃら杯で異世界へ帰る時に結構なお金を貰えるそうだ。
しかし……正直そのお金って使えるの?って感じだし?
趣味は近所のドッグランの見学くらいだし?
それより帰って消息不明で仕事クビになっている方が痛い!
ふぐぅぅぅっ!!
見えない将来、更に転職の大変さを考えると頭が痛くなって思わず呻く。
履歴書の空白に " 異世界で勇者のパーティー加入 " とか書いて大丈夫??
────無理無理~♬
自分で言っててハハッ!と笑ってしまうと、ヒカリ君が突然ガンっ!と俺に皿を投げつけてきた。
「 ……あんたさ、ホントに何のために来たんだろうね?
だって不細工だし、役に立たないし?
あ、俺たちみたいに戦わなくても自分は沢山お金貰えるんだっけ。
随分と運がいいよね。 」
「 えっ?えぇぇぇ~……。
あ、あのな~……! 」
ハイリスクNO!な俺からしたらこんなのちっともラッキーじゃな~い!
お金を貰っても多分使えないし!( 日本円でお願いします! )
心外に次ぐ心外に流石に物申してやろうと思ったが……その瞬間、突然目の前にあの境界線が現れた。
その線の先にはヒカリ君がいて、ただぼんやりと遠くを見つめている様だ。
俺からは背中しか見えないので、彼がどんな表情をしているかは分からなかったが、なんとなく纏う雰囲気が────俺がよく知っているモノの様な気がした。
ハッ!と意識を取り戻すと、目の前には俺を見下す様なヒカリ君の目と、不自然に逸らされるアイリーン達の姿。
まるで白昼夢の様な出来事に首を傾けながら、ぽりぽりと頭を掻いた。
「 ……多分 " ご飯をいっぱい食べようね " だと思うんだよな~神様の言いたい事。
そんなに文句あるなら、ちゃんと食べてちゃんと寝ろよ。
そんな子供みたいなワガママ言うからだぞ、俺が来たの。 」
一応人生の先輩として真面目に答えたつもりだったが、ヒカリ君とアイリーン達はポカンとした顔をする。
それに俺は大きなため息しか出ない。
何てったって全員生活能力が低すぎる!
そんなんじゃ、地球に来たら直ぐにゴミ屋敷からの孤独死決定だ!
俺は全員が静かになったのをいい事に、チャンスとばかりにチクチクと反撃してやった。
「 ヒカリ君は全体的に生活不規則、家事能力ゼロ!
脱いだら脱ぎっぱなしだし、お皿は出しっぱなし!
食べる時は頂きますもご馳走様も言わない!
幼子以下!野良ニャンニャンと同類! 」
「 ────!!!なっ!! 」
図星を差されて、ブワッ!!と逆ギレオーラが滲み出すが、ニャンニャン怒っても、そんな猫パンチなど怖くないぞ!
< 多次元ボックス >
多次元と呼ばれる空間へ繋がる箱型のアイテム
欲しいと願うだけで空中に入口が出現し、どんなモノでも出し入れすることができる。
製作者のレベルによりその収容できる大きさが違う
中に入れておけば時が止まるため食べ物も腐らない
この便利なアイテムのお陰で暇な時は沢山料理を作り置きしておいて、好きな時に出せる。
俺の中では、地球にも是非とも普及してほしいアイテムNo. 1に輝いている。
一人暮らしだと一食分作るの難しいんだよな……。
夏に気づくと傷んでしまっていたファミリーサイズのキャベツとか、勿論ちゃんと食べたが味落ちは確実にしていた食材達を嘆く。
ヒカリ君は俺の言葉を聞いて睨む目の勢いは衰えないが、ため息をつきながら空いている場所に座ってくれた。
それにキラッと目を輝かせ、セカセカセカ~と皿に作り置きのオカズをこれでもかと盛り付けていく。
実はこの世界、大豆が結構主流栽培物であったため醤油も当然のようにあった。
しかしどうもお肉に掛けるくらいしか活用法がなかった様だったので、他の出汁と共に煮込み料理に使ったらこれまた大好評!
実はそれで作った煮物はヒカリ君の大好物になっている事も知っているのだ。
ドヤッとしながら、実に若者に相応しい大盛り煮物丼ぶりをツンツン勇者様に差し出すと、そのまま無言で食べ始めた。
ムスッ!としているが、スプーンの勢いは衰えず、やはりお腹は減っていた様だ。
そうして食事をしている間に、先程吹っ飛ばされたコップを回収すると手早く拭き取り、また熱いお茶を淹れてあげる。
そしてそれを少し冷ましてから差し出してやれば今度は振り払われずに受け取ってくれた。
「 ……惨めな中年。 」
ボソッと呟かれる言葉は辛棘だが、先ほどのトゲトゲオーラは鳴りを顰めている。
「 いつかは誰でも中年になる。
今から俺を見てよく勉強しておくように。 」
へんっと鼻で笑ってやると、アイリーン達がここぞとばかりに俺をなじる言葉を開始。
「 ふん!勇者様をあんたみたいなしょぼくれたおじさんと一緒にしないでよね!
勇者様には輝かしい未来が待っているんだから! 」
「 そうよぉ~。
なんていっても勇者様はこの旅が終わったら王様の次の身分が与えられるの。
地位も名誉も財も思うがままの夢の様な生活が待っているわ~♡ 」
アイリーンとメルクがウットリ~とした表情で、勇者の輝かしい未来を語る。
それにコホンと咳払いをして話し出すのはキュアだ。
「 歴代勇者様達は、その後誰もが幸せな人生を送ってきました。
ある者は王女と婚姻を交わし王になった者もいれば、国のトップ層に名を連ね一生贅を尽くした生活を送った者もいます。
他にも沢山の女性を囲いハーレム王になった者もいたそうです。 」
「 スゲェよな~。
あたい達もこの旅が終われば一生遊んで暮らせる生活が待ってるんだぜ! 」
「 へぇ~。
まぁ、そりゃー命の危険があるし、その分給料も高くもらわないとな。 」
ハイリスク、ハイリターンの代表選手みたいなもんか。勇者パーティーは。
ほほ~う?
自分には縁のない世界にイマイチ現実味を感じられずに首を傾げる。
実は俺もこの旅が終わり、訳のわからんなんちゃら杯で異世界へ帰る時に結構なお金を貰えるそうだ。
しかし……正直そのお金って使えるの?って感じだし?
趣味は近所のドッグランの見学くらいだし?
それより帰って消息不明で仕事クビになっている方が痛い!
ふぐぅぅぅっ!!
見えない将来、更に転職の大変さを考えると頭が痛くなって思わず呻く。
履歴書の空白に " 異世界で勇者のパーティー加入 " とか書いて大丈夫??
────無理無理~♬
自分で言っててハハッ!と笑ってしまうと、ヒカリ君が突然ガンっ!と俺に皿を投げつけてきた。
「 ……あんたさ、ホントに何のために来たんだろうね?
だって不細工だし、役に立たないし?
あ、俺たちみたいに戦わなくても自分は沢山お金貰えるんだっけ。
随分と運がいいよね。 」
「 えっ?えぇぇぇ~……。
あ、あのな~……! 」
ハイリスクNO!な俺からしたらこんなのちっともラッキーじゃな~い!
お金を貰っても多分使えないし!( 日本円でお願いします! )
心外に次ぐ心外に流石に物申してやろうと思ったが……その瞬間、突然目の前にあの境界線が現れた。
その線の先にはヒカリ君がいて、ただぼんやりと遠くを見つめている様だ。
俺からは背中しか見えないので、彼がどんな表情をしているかは分からなかったが、なんとなく纏う雰囲気が────俺がよく知っているモノの様な気がした。
ハッ!と意識を取り戻すと、目の前には俺を見下す様なヒカリ君の目と、不自然に逸らされるアイリーン達の姿。
まるで白昼夢の様な出来事に首を傾けながら、ぽりぽりと頭を掻いた。
「 ……多分 " ご飯をいっぱい食べようね " だと思うんだよな~神様の言いたい事。
そんなに文句あるなら、ちゃんと食べてちゃんと寝ろよ。
そんな子供みたいなワガママ言うからだぞ、俺が来たの。 」
一応人生の先輩として真面目に答えたつもりだったが、ヒカリ君とアイリーン達はポカンとした顔をする。
それに俺は大きなため息しか出ない。
何てったって全員生活能力が低すぎる!
そんなんじゃ、地球に来たら直ぐにゴミ屋敷からの孤独死決定だ!
俺は全員が静かになったのをいい事に、チャンスとばかりにチクチクと反撃してやった。
「 ヒカリ君は全体的に生活不規則、家事能力ゼロ!
脱いだら脱ぎっぱなしだし、お皿は出しっぱなし!
食べる時は頂きますもご馳走様も言わない!
幼子以下!野良ニャンニャンと同類! 」
「 ────!!!なっ!! 」
図星を差されて、ブワッ!!と逆ギレオーラが滲み出すが、ニャンニャン怒っても、そんな猫パンチなど怖くないぞ!
86
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
聖女召喚!・・って俺、男〜しかも兵士なんだけど・・?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる