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第三十八章
1214 本物の救世主
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( ベリー )
う~ん……と考え込んでしまった私達を見て、カルロスさんは短く息を吐き出して震えを止めると、写真に映っているレオンくんの顔をトントンと叩いた。
「 ライトノア学院の受験日より少し前の事よ。
あまり素行は良くないけど高い実力を持ったAランク傭兵達が、突然グリモアに姿を見せ始めてね……。
それで警戒はしていたのだけど……更に、あの悪い噂しかないSランク傭兵パーティー ” 神の戯れ ” まで妙な動きを見せているって、オリビア様から注意勧告が出たのよ。 」
「 かっ、 ” 神の戯れ ” ですかっ!? 」
父からチラッと聞いたことがある名前に反応し、私とキュイちゃんは同時に机をバンッ!と叩く。
Sランク傭兵パーティー ” 神の戯れ ”
父曰く、そのSランク傭兵四人で結成されたパーティーは悪い意味で有名で、残忍で冷酷な性格と、おいそれと手が出せない実力を持ったクレイジーな集団であるそうだ。
” そいつらと一度でも戦いを共にしちまうと、戦う事に恐怖して何割かは戦闘職を辞めちまうんだ。
奴らにとって戦場は遊び場で、味方でも精神が耐えられないってくらい酷い戦い……いや、遊び方をするらしいな。 ”
そんな恐ろしい集団であった ” 神の戯れ ” は、ちょうどライトノア学院の受験日に、元第二騎士団団長のドノバンと現騎士団副団長であるユーリスに討たれたと聞き、心底ホッとしていたのだが……。
討たれた場所がグリモアの近くの森だと聞いて、非常に驚いたのは記憶に新しい。
今の話の流れからして、もしかして討たれた場所がたまたまグリモア近くだったのではなく、うろちょろしていたらしいAランク傭兵と何か関係があったのだろうか??
「 恐らくAランク傭兵達と何か計画があったんだと思うんだけど……その理由は一応機密事項扱いになっているから聞かされてないわ。
───で、なんかしらの計画のためにグリモアからそう遠くない森にいて、たまたま王都からグリモアへ向かっていたドノバン様とユーリス様が処分した……と。
でも、妙なのよね~……。 」
「 妙……ですか?? 」
キュイちゃんが不思議そうにそう尋ねると、カルロスさんは顎に手を当て、う~ん……と考え込んだ。
「 実は森で討たれたのは、 ” 神の戯れ ” だけじゃなかったの。
他にもAランク傭兵60名……全員同じ森の中で殺されていたわ。 」
「「 ろっ……ろっ……60名っ!!!?? 」」
Aランク傭兵を60名など、どこか大きな戦場の最前線にでも向かわせるつもりかという規模だ。
パカーン!と口を大きく開いたまま固まってしまった私達を見て、カルロスさんがハァ~……とため息をつく。
「 ここを戦場にでもするつもりだったの?ってくらいでしょ?
────で、緊急で傭兵ギルド長である私と冒険者ギルド長のヘンドリクちゃんが呼ばれて確認と始末のお手伝いをしたんだけど……その死体が妙でね。
全員、まるで何かに握りつぶされた様にグチャグチャで……かと思えば、剣の様な切り傷や魔法を使ったのかっていう跡もあったり……とにかく一貫性がなかったの。
ドノバン様は大剣、ユーリスちゃんは普通より長い剣……でしょう?
そこがどうも引っかかっちゃって。 」
「 ……確かにそれは妙ですね……。
相手が強敵である程、自身の愛用の武器の存在は大きい……。
” 神の戯れ ” 相手に……更にそれプラスAクラス傭兵60名となると、殺し方に一貫性がないなんておかしいです。 」
あり得ない事に唸り声を上げて考える私に、カルロスさんは更に不思議な話しをし始めた。
「 それともう一つ、ちょっと変な事があってね……。
二人共魔道具の< 避呪針 >って知ってるでしょう? 」
「 はい……知ってますけど……? 」
私がキュイちゃんと目を合わせて頷くと、カルロスさんは一旦口を閉じて、頬を軽く触って困った様に首を傾けた。
「 その< 避呪針 >が、なんとこのグリモアの噴水に仕掛けられていたのよ。 」
「「 ええええええぇぇぇ~っ!!! 」」
私とキュイちゃんは衝撃的な出来事に悲鳴を上げる。
< 避呪針 >は、呪いが発生した時、その呪いの矛先を他に変える、使用が禁止されているはずの魔道具である。
確か王宮で管理している魔道具の一つだったはず……。
魔道具の中にはその特殊性により、悪用された際に多大な被害を出す恐れがあるモノも沢山存在している。
そういった危険な魔道具は国の認可なしでは使えない代物であるはずなのに、それがグリモアに仕掛けられていたとなれば、その設置を命じたのは……。
────サァァァ~……。
血の気が引いていくのを感じながらも、冷静にこれまでの話を分析すると、恐らく仕掛けたのはAクラス傭兵達に違いない。
そしてそんなAランク傭兵達同様、妙な動きをしていたらしい ” 神の戯れ ”
その目的は一体なんだったのか?
「 …………。 」
「 まさか……グリモアに呪いをばら撒こうとしていたんでしょうか……。
一体なんの呪いに手を出そうとしていたんでしょう? 」
黙ってしまった私の代わりに、キュイちゃんがカルロスさんに質問する。
するとカルロスさんはユルユルと首を横に振った。
「 さぁ……?
でもね、その目的よりも、私はこれだけの人数の人間がすぐ側で全滅しているのに、私達が気配一つ感じなかった事が答えな気がするわ。
それをしたのは……本当にドノバン様とユーリスちゃんなのかしらね……?
二人もそれをよ~く考えて、アレに近づくかどうか決めた方がいいわよ。
” キング、危ない橋に渡るべからず ”
ヤバい事には近づくなって事ね! 」
カルロスさんは、もう一度トントンと写真に映っているレオン君を叩いた。
” こいつには近づくな ”
結局カルロスさんが一番言いたかった事はそれだ。
謎に満ち溢れているレオン君。
ゴクリ……と唾を飲み込み、その恐怖を脳に焼き付けておいたが……そこで心配になったのはリーフ様の事だ。
リーフ様はそんな恐ろしい存在の側にいて大丈夫なのだろうか?
「 あの……救世主様のリーフ様は大丈夫なんでしょうか……? 」
「 そうですよ。
もしかして酷い扱いをされていたり……。 」
オロオロしながらそう質問したのだが、カルロスさんはブブブー!と盛大に吹き出してしまった。
「 それが全然大丈夫みたいなの!
私も心配してたんだけど、この間も酒樽担ぐみたいに守護影様を担いで帰ってたそうだし……ヘンドリクちゃんも ” 大丈夫 ” って言ってたから問題ないらしいわ~ん。 」
「 酒樽……。 」
その姿を想像し吹き出しそうになったが、ブルブルと顔を横に振ってその映像を頭から飛ばすと、ハッ!と最初に聞こうとしていた事を思い出す。
「 それとリーフ様ってあのナックルとゲイルをぶっ飛ばしたんですよね!?
私達の時の様に無茶な罰則が下されたんじゃないですか?
そっちの方は……? 」
「 あ~、その事なら大丈夫だったみたい。
どうやらリーフ君って上層部が表立って相手できない相手みたいでね!何のお咎めなし。
まさに相手サイドの天敵!
この街の期待の救世主様~! 」
キャ~!と嬉しそうに叫び、机の上の写真を握りしめるカルロスさんは凄く嬉しそうだ。
こんな小さな子供にそんな大層な役割を与えて……。
重すぎて潰れちゃわないかしら?
そんな心配をして大きなため息をついたが……そんなモノは軽く吹き飛ばし、更に本物の救世主になってしまうとは夢にも思わなかった。
う~ん……と考え込んでしまった私達を見て、カルロスさんは短く息を吐き出して震えを止めると、写真に映っているレオンくんの顔をトントンと叩いた。
「 ライトノア学院の受験日より少し前の事よ。
あまり素行は良くないけど高い実力を持ったAランク傭兵達が、突然グリモアに姿を見せ始めてね……。
それで警戒はしていたのだけど……更に、あの悪い噂しかないSランク傭兵パーティー ” 神の戯れ ” まで妙な動きを見せているって、オリビア様から注意勧告が出たのよ。 」
「 かっ、 ” 神の戯れ ” ですかっ!? 」
父からチラッと聞いたことがある名前に反応し、私とキュイちゃんは同時に机をバンッ!と叩く。
Sランク傭兵パーティー ” 神の戯れ ”
父曰く、そのSランク傭兵四人で結成されたパーティーは悪い意味で有名で、残忍で冷酷な性格と、おいそれと手が出せない実力を持ったクレイジーな集団であるそうだ。
” そいつらと一度でも戦いを共にしちまうと、戦う事に恐怖して何割かは戦闘職を辞めちまうんだ。
奴らにとって戦場は遊び場で、味方でも精神が耐えられないってくらい酷い戦い……いや、遊び方をするらしいな。 ”
そんな恐ろしい集団であった ” 神の戯れ ” は、ちょうどライトノア学院の受験日に、元第二騎士団団長のドノバンと現騎士団副団長であるユーリスに討たれたと聞き、心底ホッとしていたのだが……。
討たれた場所がグリモアの近くの森だと聞いて、非常に驚いたのは記憶に新しい。
今の話の流れからして、もしかして討たれた場所がたまたまグリモア近くだったのではなく、うろちょろしていたらしいAランク傭兵と何か関係があったのだろうか??
「 恐らくAランク傭兵達と何か計画があったんだと思うんだけど……その理由は一応機密事項扱いになっているから聞かされてないわ。
───で、なんかしらの計画のためにグリモアからそう遠くない森にいて、たまたま王都からグリモアへ向かっていたドノバン様とユーリス様が処分した……と。
でも、妙なのよね~……。 」
「 妙……ですか?? 」
キュイちゃんが不思議そうにそう尋ねると、カルロスさんは顎に手を当て、う~ん……と考え込んだ。
「 実は森で討たれたのは、 ” 神の戯れ ” だけじゃなかったの。
他にもAランク傭兵60名……全員同じ森の中で殺されていたわ。 」
「「 ろっ……ろっ……60名っ!!!?? 」」
Aランク傭兵を60名など、どこか大きな戦場の最前線にでも向かわせるつもりかという規模だ。
パカーン!と口を大きく開いたまま固まってしまった私達を見て、カルロスさんがハァ~……とため息をつく。
「 ここを戦場にでもするつもりだったの?ってくらいでしょ?
────で、緊急で傭兵ギルド長である私と冒険者ギルド長のヘンドリクちゃんが呼ばれて確認と始末のお手伝いをしたんだけど……その死体が妙でね。
全員、まるで何かに握りつぶされた様にグチャグチャで……かと思えば、剣の様な切り傷や魔法を使ったのかっていう跡もあったり……とにかく一貫性がなかったの。
ドノバン様は大剣、ユーリスちゃんは普通より長い剣……でしょう?
そこがどうも引っかかっちゃって。 」
「 ……確かにそれは妙ですね……。
相手が強敵である程、自身の愛用の武器の存在は大きい……。
” 神の戯れ ” 相手に……更にそれプラスAクラス傭兵60名となると、殺し方に一貫性がないなんておかしいです。 」
あり得ない事に唸り声を上げて考える私に、カルロスさんは更に不思議な話しをし始めた。
「 それともう一つ、ちょっと変な事があってね……。
二人共魔道具の< 避呪針 >って知ってるでしょう? 」
「 はい……知ってますけど……? 」
私がキュイちゃんと目を合わせて頷くと、カルロスさんは一旦口を閉じて、頬を軽く触って困った様に首を傾けた。
「 その< 避呪針 >が、なんとこのグリモアの噴水に仕掛けられていたのよ。 」
「「 ええええええぇぇぇ~っ!!! 」」
私とキュイちゃんは衝撃的な出来事に悲鳴を上げる。
< 避呪針 >は、呪いが発生した時、その呪いの矛先を他に変える、使用が禁止されているはずの魔道具である。
確か王宮で管理している魔道具の一つだったはず……。
魔道具の中にはその特殊性により、悪用された際に多大な被害を出す恐れがあるモノも沢山存在している。
そういった危険な魔道具は国の認可なしでは使えない代物であるはずなのに、それがグリモアに仕掛けられていたとなれば、その設置を命じたのは……。
────サァァァ~……。
血の気が引いていくのを感じながらも、冷静にこれまでの話を分析すると、恐らく仕掛けたのはAクラス傭兵達に違いない。
そしてそんなAランク傭兵達同様、妙な動きをしていたらしい ” 神の戯れ ”
その目的は一体なんだったのか?
「 …………。 」
「 まさか……グリモアに呪いをばら撒こうとしていたんでしょうか……。
一体なんの呪いに手を出そうとしていたんでしょう? 」
黙ってしまった私の代わりに、キュイちゃんがカルロスさんに質問する。
するとカルロスさんはユルユルと首を横に振った。
「 さぁ……?
でもね、その目的よりも、私はこれだけの人数の人間がすぐ側で全滅しているのに、私達が気配一つ感じなかった事が答えな気がするわ。
それをしたのは……本当にドノバン様とユーリスちゃんなのかしらね……?
二人もそれをよ~く考えて、アレに近づくかどうか決めた方がいいわよ。
” キング、危ない橋に渡るべからず ”
ヤバい事には近づくなって事ね! 」
カルロスさんは、もう一度トントンと写真に映っているレオン君を叩いた。
” こいつには近づくな ”
結局カルロスさんが一番言いたかった事はそれだ。
謎に満ち溢れているレオン君。
ゴクリ……と唾を飲み込み、その恐怖を脳に焼き付けておいたが……そこで心配になったのはリーフ様の事だ。
リーフ様はそんな恐ろしい存在の側にいて大丈夫なのだろうか?
「 あの……救世主様のリーフ様は大丈夫なんでしょうか……? 」
「 そうですよ。
もしかして酷い扱いをされていたり……。 」
オロオロしながらそう質問したのだが、カルロスさんはブブブー!と盛大に吹き出してしまった。
「 それが全然大丈夫みたいなの!
私も心配してたんだけど、この間も酒樽担ぐみたいに守護影様を担いで帰ってたそうだし……ヘンドリクちゃんも ” 大丈夫 ” って言ってたから問題ないらしいわ~ん。 」
「 酒樽……。 」
その姿を想像し吹き出しそうになったが、ブルブルと顔を横に振ってその映像を頭から飛ばすと、ハッ!と最初に聞こうとしていた事を思い出す。
「 それとリーフ様ってあのナックルとゲイルをぶっ飛ばしたんですよね!?
私達の時の様に無茶な罰則が下されたんじゃないですか?
そっちの方は……? 」
「 あ~、その事なら大丈夫だったみたい。
どうやらリーフ君って上層部が表立って相手できない相手みたいでね!何のお咎めなし。
まさに相手サイドの天敵!
この街の期待の救世主様~! 」
キャ~!と嬉しそうに叫び、机の上の写真を握りしめるカルロスさんは凄く嬉しそうだ。
こんな小さな子供にそんな大層な役割を与えて……。
重すぎて潰れちゃわないかしら?
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