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第三十八章

1206 どこから来たの?

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( ベリー )

ライトノア学院の入学院式前から、モンスターの増加は報告されていて、私達の所属する傭兵ギルドにも沢山の依頼が入り込む様になっていた。

そのため私達は、カフェでの仕事プラス大量の仕事を受け持って消化していたのだが、突然ある日を境にそれがピタリと減少していったのだ。


その理由は冒険者ギルドへの大規模な冒険者クラスの派遣にあった。


王都から派遣された冒険者達のせいで、傭兵ギルドへの依頼は減少し、それによりこの街に馴染みのない傭兵達はもっと稼げる街へと移住してしまう。


何かおかしい……。

こんなあからさまに傭兵ギルドへの依頼が減るなんて。


領主様は何を考えているのか……。


そう感じながらも、人員がいなくなってしまった分の依頼は増えてしまったので、個人的には考える余裕がない程仕事に追われていた。


そしてそれから帰って来る度に、街の治安がどんどん悪化していっているのに気づく。


” 守備隊は何をしているの?? ” 


そう不思議に思ったが、どうやら守備隊の方の依頼はパンクしている状況らしく、そのせいで街の治安にまで手が回っていない様だ。


これにも大きな違和感を感じながら、帰還した時、街で暴れている冒険者一味をコテンパンにのしてやってから、私達は原因を知るためカルロスさんの所へと向かった。


「 カルロス支部長!あの派遣されてきた冒険者たちは何なんですか?!

街の中で一般人に殴りかかるわ、店を壊して回るわで、もうめちゃくちゃです。 」


「 そうですよ!あれじゃー盗賊と同じじゃないですか!

それに依頼の量が偏り過ぎていて、どう考えてもおかしいです。

領主様は何故この状況を放っておくんですか?? 」


どの機関も、流石にこの状況を領主様へと状況を報告するはず。

なのに未だに領主様の訪問はおろか、何かしらの改善策すら見られないなどどう考えてもおかしい。


私達がカルロスさんの座るデスクに手をついて詰め寄ると、カルロスさんはハァ~……と大きなため息をついて、一枚の紙を机の上にソッ……と置いた。


『 傭兵ギルドグリモア支部に所属するAランク傭兵ベリー、キュイ両名が、一般人に対し不当な暴力行為を行った。

よって無期限の休職を言い渡す。 』


その紙に書かれている内容を目にした途端、私達は同時に叫ぶ。


「 なっ……なんなんですかコレ!! 」


「 私達は暴力なんて奮ってません!

寧ろ一般人に暴力を振るった冒険者を止めたのに!? 」


二人で怒りを顕にしながらその紙を握りしめると、カルロスさんが椅子の背もたれに身体を深く預けた。


「 全く……。上は一体何を企んでいるのかしらね。

恐らくあのクソみたいな冒険者達のバックには、とんでもない黒幕がいるわ。

何かあればその黒幕たちに罪をでっち上げられてこの通りよ。

領主様も、恐らくはその黒幕相手に手が出せないって感じだと思うわ。 」


「 りょ、領主様が手が出せないって……。 」


領主様と言えば、それなりに身分が高い貴族様がなるので、つまり黒幕はそれ以上??

グッ……と黙ってしまった私達を見て、カルロスさんは神妙な顔で頷く。


「 ……これでも傭兵ギルド総長であるオリビア様が罪を軽くしてくれたの。

でも、二回目はコレ幸いと、もっと重い罪を擦り付けられる。

二人は当分カフェのみの勤務についてちょうだい。 」


「 そっ……そんな……。何でそんな事……。 」


キュイちゃんが呆然と呟くと、カルロスさんはフゥ……と困った様子で息を吐き出した。


「 さぁ……?分からないけど……少なくともハッピーな事じゃない事は確かね。

だから今、オリビア様を始めとして、各機関が動き始めているわ。

そんな中で相手に弱みを握られる事は絶対に避けないとね。

ここは耐えてちょうだい。

街の人たちも今、問題を起こせばモンスター被害が広がるのを分かっているから耐えているの。

……ホントに苦しいわね。 」


「「 …………。 」」


そう言われてしまえば、私達は黙るしかできなかった。


今の状況であの派遣されてきたクソ冒険者達と衝突してしまえば、増えていっているモンスターの対処をする者たちがいなくなる。

そうすれば必ずモンスター被害による犠牲者が出てしまう事。

それを皆分かっているから耐えているのだ。

今は黒幕の目的を探るためにも、全員で耐えなければならない。


それを理解した私達は、慰める様にポンポンと肩を叩いてくるカルロスさんに従い、カフェのみの勤務となってしまった。


それからも状況は良くなる事はなく、寧ろ悪くなっていく一方で、それと同時に気分も沈んでいったが────ここで根を上げるわけにもいかない。


いつかこの事態が改善する事を信じて今は頑張ろう。


そんな想いを抱いて、キュイちゃんと一緒に頑張っていた、そんなある日の事。


自宅で二人でお茶を飲んでいる時、キュイちゃんが手に持つ絵本のページを開きながら、ボソッと私に話しかけてきた。


「 そういえば、 ” 猫 ” って一体どこから来たのかな? 」


突然の話題に意味が分からなかったが、キュイちゃんの手にある絵本を見て、あぁ……と納得した。

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