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第三十四章

1083 いいのか?

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( クラーク )

アゼリアの動きに合わせサポート魔法を使いつつ、大量の低ランクモンスターが襲ってくれば、低コストの広範囲魔法で吹き飛ばす。

そして高ランクモンスターが出現すれば、アゼリアが攻撃を防いでいる間に俺の魔法で隙を作り、アゼリアがトドメをさす……と、先程とは打って変わった安定ある戦いに安堵すると同時に、ワクワクした気持ちが前へと出てきた。


” 協力 ” 

” 連携 ” 


以前の俺にとって、それは才のない弱者がするモノであったが、それは間違いであったと、改めて思う。

お互いの弱点を補い、自身の得意分野を最大限に生かしてアドバンテージを取る。

たったそれだけでこんなにも戦いが楽になる事を知れば、本当の敵は襲い来る悪意ある存在ではなく、 ” 自分 ” だったのだと理解した。


「 …………。 」


またしても嫌な事に気づいてしまい、ズンッ……と心は重苦しくなったが、それを振り払う様に首を横に振り、最前線で戦うアゼリアの背中を見つめる。


アゼリアには前衛としての天賦の才能がある。


そんな才能を自分の価値観に当て嵌め排除しようとした事の愚かさと罪悪感。

勝手に ” 下 ” と決めつけ、見下してきた者に助けられる惨めさ。

目指すべき先へとっくに向かっている背中を見ては、嫉妬や焦り、不安、恐怖など沢山の想いが溢れ出し、それがまだ心の中で燻っている。


こんな人間を許してしまうアゼリアとの距離はまだまだ遠い。


……俺も必ず追いつく。


悔しげにアゼリアの背中を見ながらそう誓い、アゼリアを大きく飛び越え姿を現した< スポンジ・カブト >を魔法で撃ち落とした。


これであらかたこのあたりのモンスター達は片付いたようで、フゥ……と息を吐き出し、辺りの気配を探る。



< スポンジ・カブト >

体長10cm~20cm程のカブトムシ型Eランクモンスター

身体はスポンジの様な作りになっていて、物理攻撃に対して耐性を持っている

そのため魔法で倒すのがセオリー



「 ふん、この程度では準備運動にもならんな。

これでは私一人で十分だった。 」


「 ……ほぅ?今しがた< スポンジ・カブト >を逃した奴のセリフではないな。

まぁ、この俺、クラークの華麗な魔法で一瞬で倒したがな。 」


「 ……先程< テンペスト・モンキー >相手にゴキブリのように逃げ回っていた奴が華麗とは……。

幻影魔法にでも掛かったんじゃないのか?

さっさと解除するんだな。 」


「 …………。 」


「 …………。 」


チクチク。

ギスギス……。


二人揃って無言になり沈黙の時間が続いたが、また遠くで多種多様なモンスター共の咆哮と足を踏み鳴らす音が聞こえ、意識はそちらへ向く。


「 全く……どれ程のモンスターを用意したんだか。

中から防壁を壊され続けてしまえば終わりだが、応援にはいけそうにない。

非戦闘員が避難しているココに侵入されれば、被害は甚大なモノになる。 」


フゥ……と息を吐き出しながら汗を拭うアゼリア。

それに関しては同意するしかないため、俺は内心この事態を起こした者達への怒りを抑えながら頷いた。


「 ……ここは他の貴族達を信じるしかないだろう。

貴族はそれぞれの家の特化した特殊能力に加え、幼い頃より戦闘訓練を受けているため強い。

よっぽどの事がない限りは大丈夫のはずだ。

それに……驚いた事に統率系の資質を持ったマービン様も戻った様だしな……。 」


「 ……ほぅ…なるほど……。 」


流石に辺境伯相手に何か迂闊な事を言うわけにはいかず、二人揃って黙る。

先程伝電鳥達が伝えてきた貴族生徒達による戦闘の声達の中には、マービン様の声もバッチリあった。


少々頭が痛くなる様なマービン様の発言の数々を思い出し汗を掻いたが、実力的には間違いなく貴族生徒達の中ではNo.1。

資質は【 司令士 】という統率系の上級の中でもレア資質を持っているため今頃は指揮を取っているはずだ。


統率系の資質は、戦略や参謀に長ける資質だが、恐ろしい能力はそれだけではなく、率いる部下達によってそのスキルの数々を変化させてしまう事にある。


そのため全体の戦力の底上げに繋がる柔軟性のあるスキルに、更に情報の統合スキルを持っているため、即座に全体の戦況の把握をし一気に戦況をひっくり返すことも可能だ。


それこそ統率系も資質持ちが味方にいるかいないかで、100%負けるはずの戦いも、あっという間に勝ち戦にひっくり返される恐れがあるほどに……。


何度もリーフ様に命じられ、挑んできたマービン様とチーム戦をやらされたが、やはりかなり手強い相手であったため実力的なモノは何も心配いらない。


しかし……精神的なモノが……。


アゼリアも全く同じ事を考えているのか、俺達の間には微妙な空気が漂ったが、突然アゼリアから少々緊張している様な雰囲気が漂う。

何だ?と疑問に思っていると、アゼリアは突然言いにくそうにボソッと呟いた。


「 ……マービン様はエドワード派閥の実質No.2だろう?

ここに戻って来れば、両親とは決別する事になるが……良いのだろうか……。 」


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