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第三十二章

1050 貴族としての正しさ?

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( ニコラ )


「 ────なっ、なによっ!!!!飛竜などたかが獣の一種っ!!!

道具と同義でしょうっ!!!


本来栄誉あるライロンド家の役に立てるなど、それだけで光栄に思うべきだわ。

道具は道具らしくライロンド家の命令に素直に従えばいいのです!!

それが当たり前。正しい世界の姿です。

何も考えず辺境伯の血筋を持つ私の言う通りに行動しなさい!!! 」


ルィーンの言葉を聞き、ダリオスは盛大に吹き出すと、そのままワッハッハっ!!と大声で笑った。

突然笑い出したダリオスにルィーンは怪訝そうな顔をすると、やっと笑いが収まったダリオスは目尻に溜まった涙を指でピッと弾く。


「 お前はそればかりだな。

” 誇りあるライロンド家 ”

” 栄誉ある辺境伯という地位 ”

そのために周りはこうすべきだ。それこそが世界の正しい姿であると。

そして、私にもその正しい世界に従った相応しい行動をせよと、それがお前の口癖だ。 」


「 と、当然でしょう。私は何も間違った事など言ってないわ。

それが貴族というものです。

貴方の様な下層の生まれの者には理解できないでしょうが、それを破っては国は崩壊してしまうのですよ。

貴族としてそれを防ぐために最善を尽くす。

国を想い行動する事は当然の事でしょう! 」


自分が絶対的に正しいと訴えるルィーン。

周りにいるエドワード派閥の者達は、それに賛同し責めるような目でダリオスを睨むが、ダリオスはそれら全てを鼻で笑った。


「 ではお前はその ” 貴族 ” として何をしてきたというのだ?

無駄に着飾り、散財するだけ。

戦うわけでも領地のために努力もしない……お前のいう言葉は、全て最後に ” 自分の都合の良い様に ” がつくのだ。

” 自分の都合の良い様に ” 周りが動くのが正しい世界。

そんな馬鹿な世界が正しいわけなかろう。

そもそも ” 貴族女性は当主である主人に尽くし支えるのが当たり前 ” だとお前はよく口にするが、お前が俺に尽くした事など一度たりとてない。

【 飛竜隊 】も領の管理も全て私一人で行っているが? 」


「 そ……それはっ……わっ、私はいいのですっ!!

私は誇りあるライロンド家の直系で────…… 」


「 ────ほらな?

” 他はこうあるべき。でも自分だけは違う。”

そんな軽い言葉と行動で誰が正しさを見出すのだ。

それを肯定し従うのは同じ側に立っている同種だけだろう。

そんな理屈が通ってしまう事事態、まさしく ” 洗脳 ” というモノではないのか? 」


ダリオスの言葉はルィーンや他のエドワード派閥達を追い詰め、言葉を奪う。

しかし、どうにか反撃をとギラギラ殺気じみた視線で睨み、ルィーンはハッ!と何かを思いついたらしく、再びダリオスに怒鳴った。


「 女性に手をあげるなど貴族以前の問題ではありませんか!

私は絶対にそんな蛮行を許す事はできません!!

然るべき責任をとるべきですわ!!そうでしょう!!?皆様!! 」


それに賛同しエドワード派閥の者達はヒソヒソと囁き合い、ダリオスの暴力を責める。

しかしダリオスは落ち着いた様子で静かに口を開いた。


「 ” 女性は躾のなっていない犬や猿と同じ ”

” 殴って躾けなければまともにはならない ”

” そうして男に躾けてもらう事が女の幸せである ” 」


「 ────なっ!!!

皆様、聞きまして?!!なんと最低で恐ろしい考えでしょう!!

この男は元第二騎士団だけあって暴力的な思考が目立つと思っておりましたが、ここまで最低の考えを持っていたとは思いませんでしたわ!!

こんな危険人物、即刻牢へ入れ処刑しなければなりません。

このっ人以下のケダモノがっ!! 」


ここでエドワード派閥の者達はチャンスとばかりにダリオスを責める言葉を口にし、蔑む様な言葉を言う。

するとダリオスは楽しくて楽しくて仕方がないといった様子でプッ!と吹き出した。


「 じゃあ、お前は人以下のケダモノとして処刑か。

これはお前が普段から息子であるマクベルとマービンに言い聞かせている言葉だろう?

自分の言っている言葉すら忘れてしまうとは……ご都合主義の馬鹿頭はお気楽でいいな。 」


「 …………っ!!!! 」


その発言を今まで嫌と言うほど聞き、不快を感じていたまともな感性を持った貴族達は、失笑する。

言葉もなく口をパクパクと動かすルィーンを、ダリオスは冷たい目で睨みつけ、ポケットから< 完全版通信器 >を取り出し宙に放り投げた。


「 ライロンド家【 飛竜隊 】

第一飛竜隊隊長< ヒューイ >!

第二飛竜隊隊長< バン >!

第三飛竜隊隊長< サンサ >!

当主ダリオスが命じる。

これより全飛竜隊は準備が出来次第、魔道路を通りグリモアへ進軍せよっ!!

勿論俺も出陣する!! 」


《 ────はっ!!! 》


< 完全版通信器 >の向こうからはハッキリとした敬礼の声と共に、恐らく隊員たちの ” うおぉぉぉ────!! ” という雄叫びの様な声まで聞こえた。

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