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第三十章

1003 淘汰と優越感

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( レイナ )

” 情報 ” は何者にも勝る最強の武器。

それを手にした私は上流階級の人間になるに相応しい存在なのだと証明されたのだ。

私はそのお金で山のように沢山のアクセサリーを買い漁り、自宅でそれをバッ!とばら撒くと、アハハハハハハ────!!!!と狂った様に笑った。


私はほんの少しだけ情報を与えただけ。

たったそれだけの事でこんなにも金も地位も手に入る。


それを知ってしまえば、今までなんて無駄な人生を送っていたのだろうと、過ぎ去った時間を嘆いた。


そうして順調にコネクションを密かに増やし、私の地位は確かなモノへとなっていったが────面倒な事にエルビスとカルパスの目がちょこちょこと入る様になってくる。


二人は鋭く油断できない相手である事を知っていたため、入念に事を進めていたのが────突然カルパスがしゃしゃり出てきて、違法薬草を製造していた貴族の男を摘発し、関係が深かった者達全員を白日のもとに引きずりだしてしまったのだ。

原因は欲を出しすぎた事。

違法薬草を平民女に使い、薬草漬けにして無理やり安く働かせる……それにとどめておけば良かったのに、新たに準成人の子供に使おうとして、目ざといカルパスに見つかったのだ。


言い逃れのできない状況の中、その男は私へと連絡をしてきて ” どうにかしてくれないか! ” と懇願してきたが、私はフッと笑ってしまう。


” 役に立たない落ちぶれ貴族をこの私が相手すると思う? ”


そう言い放ってやれば面白いくらいに青ざめてしまったので、それが面白かった私はそのまま続けて言ってやった。


” そんな情けない姿になってよく生きてられるわね~? ”

” 金も権力もない男の話なんて聞いても時間の無駄じゃない。 ”

” 私はゴミ如きが話しかけていい女じゃないの。”



” 消えろ、負け犬が。 ”



そう最終通告をしてやると、絶望した男はそのまま没収された豪邸で首を吊ったらしい。


それを知った私はといえば、可哀想!私が酷い事言ったから………な~んて悪びれる気持ちなど一切なく、” あ~らら!負け犬ちゃんが吊っちゃった♬ ” という愉快な気持ちしか心には浮かばなかった。


どーでもいい負け犬が、どーでもいい死に方をしてこの世界に淘汰されただけ。

ただそれだけの事でしょ?


そしてクスクスと笑いながら、その淘汰によって更にまた自分という存在の素晴らしさ、偉大さを感じる事ができて喜びを感じていた。


この世界には基本上流層で生きる勝ち人と下流層で搾取されるだけの負け犬の二種類しかいない。

首を吊った男は負け犬になり、そんな負け犬達が日々世界に淘汰されていくからこそ、世界はこんなにも輝いている。

淘汰されてく負け犬達の姿は、私の様な上流層に住む人間にとっては最高の娯楽、かつ自分の今いる世界の美しさを最も感じさせてくれるものなのだ。

そんな奴が消える事を可哀想だとか、助けたいなどと考える時点が下流層の考え方で、それを助ける行為は世界を汚す行為という事!

それを理解すると、もはや過去の私は世界に淘汰されるべき存在として跡形もなく消え去ったのだった。


結局首を吊った男の事を聞いたのは、次の日諜報ギルドへ顔を出した時。

カルパスが淡々とその経緯を説明してきたが、心底どうでもいいことだったので「 あ、そう。 」とそっけない態度で返事を返す。

そして新色である薄いピンク色に染まった爪をご機嫌で眺めていると、カルパスは相変わらずの凛とした佇まいのまま私をジッと見つめてきた。

そこでフッと最初にカルパスと出会った時の事を気まぐれに思い出す。


初めて出会った時はこんなにも美しい男がこの世にいたのかと驚いた。

そして私如きでは手など届かない存在だと瞬時に思ったが────今の私なら?


美しくそれに相応しい気品と上品さを身につけた私なら、もはやこの程度の男すら相手にならないはず。

ニヤッと笑った私は、ごく自然な動きでカルパスに近づき、その腕に絡みつく。


「 ねぇ、カルパス。そんなどうでもいいことは良いから、この後食事に付き合ってよ。

今貴族の間で話題になってるお店、私なら顔パスで入れるから連れて行ってあげる。 」


男だったらクラクラするはずの流し目を向けながら、にじり寄ったが────カルパスは表情一つも変えずに静かに私の腕を外した。

あからさまな拒否の態度にカチンッときて睨むと、カルパスは無表情のまま静かに口を開く。

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