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第三十章

1000 輝く世界で

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( レイナ )

カルパスの呼びかけによって扉から答える様なコンコンという扉を叩く音がし、それから直ぐに開かれると、そこから一人の青年が姿を現した。

スッと伸びた背筋に凛とした出で立ち。

その佇まいだけで育ちの良さが伺え、私は緊張から背筋を反るくらい伸ばし、更にその青年を上から下までジッと見つめる。


栗色のサラサラの髪にキリッとした涼しい目元。

そこいらの女性よりよっぽど綺麗で、でも女性には見えなくて……とにかく今まで見たことのない美しい男性に私はポッ~とアホみたいにその顔を見続けた。


「 レイナ、これから少しだけ先輩の同期になるカルパスだよ。

彼は【 影従士 】という資質を持っていて、既に先輩たちを差し置き数々の功績を立てているんだ。

当分は二人一組のチームとなって色々学んでね。 」


エルビスの言葉を半分の意識で聞きながら、私は ” 王都にはこんなにカッコいい男の人がいるのか…… ” などと、到着した時から受ける数々の衝撃に一杯一杯であった。

ボンヤリしながら生返事で答える私を見て、カルパスはニコッと笑う。


「 これからどうぞよろしくお願いします。 」


そう言ってカルパスはやはり非の打ち所のない美しい礼を私に見せたのだった。


それから私とカルパスはチームを組んで依頼をこなしていく事になり、カルパスという男の才能を嫌と言うほど思い知る事になる。


カルパスはとにかく非常に頭が切れる男で、更に自身の確固たる信念や正義を持っている分迷いがない男だった。

そのため仕事に対しても迅速かつ正確で、どんどんと頭角を現していく。

勿論私も負けてはおらず、必死にそれに食らいつき、私とカルパスは ” 期待のルーキーコンビ ” と呼ばれるまでになった。


私はそんな成長する自分が誇らしかった。

そしてやっと夢が叶いそうで本当に嬉しいと思った。


だが、仕事の要領を掴んでくると、暇と金を持て余す様になる。

しかも今まで自分の事はさておき、がむしゃらに働いてきた分、暇は私の中にムクムクと新たな感情を生み出した。


"  少しだけ遊んでみようかな? "


そんな気持ちが顔を出す。


私はそれに素直に従う事にして、休みの日に生まれて初めて貴族御用達の洋裁店へと足を運び、まるでお姫様の様な可愛らしいドレスを一着オーダーしてみた。


これでもかとついているフリルにキラキラ光る宝石やリボン。

それが届いた時、私は早速着て鏡の前に立ってみる。


するとそこには本物のお姫様になった様な自分がいた。


「 綺麗……。 」


思わずそんな言葉を呟くと、何だか楽しくなってきて、私は鏡の前でクルクル回ってみたり色々なポーズをとってみたりと、その非日常を楽しむ。

そして思う存分それを楽しんだら、今度はこのドレスに合うアクセサリーが欲しいなと思い、次の休みはアクセサリー店へ。

そして次の休みは化粧品店へ……。

その頃には暇さえあれば貪欲にファッションのお店へと行き、今まで貯まる一方であったお金を湯水の如く使っていた。


着飾る事は ” 楽しい ”


その楽しさを知ってしまうと、今度はそんな着飾った自分に相応しい場所に行ってみたいという欲が顔を覗かせ始める。


でも自分は貴族ではないし……パーティーなどには出れない。

そのため諦めるしかないと思っていたのだが……そのチャンスは意外な形でやってきた。


ある日の事、エルビスが私とカルパスを呼び出し、心底嫌そ~な顔でペラペラと話し始める。


「 実は君たちの活躍を耳にしたカール様からパーティーのお誘いが来てね……。

どうにも断れそうにないんだ。

全く……本当に困ったものだよ。 」


げっそりとしながらブツブツ不満を漏らすエルビスと、ふぅ……とため息をつくカルパスだったが、反対に私はドキドキと大いに胸を弾ませていた。


やった、やった、やった!!


自分のファッションを披露できる場に行ける。

その事が嬉しくて嬉しくて、私は二つ返事で参加することを決めた。



そして当日────

私は今できる精一杯のおしゃれをしてそのパーティー会場へと到着すると、正装したエルビスとカルパスと共に会場入りを果たす。

すると、そこに足を踏み入れた瞬間、そこはまるで別世界であった。


どこを見てもキラキラと光り輝く豪華で、しかし下品さを感じない高貴さを合わせ持つ豪邸の内装に、それに負けない程美しく着飾った招待客達。


こんな綺羅びやかな世界がこの世に存在していたのか……


ポカンとしながらもそのあまりの眩しさに思わず目を細めてしまった。


更にその感動は留まることを知らず、芸術品の様な料理の数々。

奏でられる音楽のハーモニーと、招待客たちのレベルの高い会話達。


そのどれもが自分の知らない世界で、私は今まで自分がいた世界を恥じて、更には憎むような気持ちさえ飛び出す。

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