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第二十三章
788 決闘
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( ドノバン )
その言葉もズガンッ!と心を抉ってきたが、とにかく物理的な痛みのせいで意識がお玉ちゃんにしかいかない。
そのためしばしの時間、その地獄の苦しみに耐えやっとそれが治まってきたら、今度湧き上がるのは今まで感じたことのない激しい怒りの感情であった。
「 ふざけるなっ!!
お前っ!侯爵家の俺を怒らせてただですむと思うのか? 」
まるで三流の悪役みたいなセリフを吐きながらイケメン君を睨みつけると、周りの奴らは青ざめて沈黙していたが当の本人はハンっと鼻で笑う。
「 喧嘩に負けたから親に敵をとってももらうのか?
この卑怯者め。 」
「 ーーーっんなっ!!!?? 」
あんまりな言葉に煽る様な笑み。
それを見た俺は頭のてっぺんまですっかり血が上り、ビシッ!!とイケメン君を指差し大声で怒鳴った。
「 ” 決闘 ” だぁぁぁーーーーっ!!!! 」
” 決闘 ” は< 仮想幻石 >をつけて行う一対一の一本勝負。
負けたヤツは勝ったやつの命令を一つだけきかないとならないっていうルールの元行われる模擬戦の一種だ。
それに対しイケメン君は「 受けて立つ! 」と承諾し、お互いギラギラと睨み合いながら【 闘技場 】へと向かった。
そうして騒ぎを聞きつけた沢山のギャラリーが見守る中、俺は愛用の大剣を持ちながら拳を構えるイケメン君を睨む。
相手の資質は知らないが、俺は上級の戦闘資質。
一対一なら絶対に負けるはずがないと思っていたし、周りの誰もが同じ様にそう思っていたはずだ。
だから俺の頭の中には戦う前からすでにイケメン君が土下座をし、ペコペコと俺に謝る光景しか浮かんでいなかった。
「 お前、ホント馬鹿だなぁ~。
侯爵家の俺に逆らってこの国でこれから生きていけると思うのか?
未来を棒に振ってまで正義のヒーロー面したかったとか・・。
このクソ痛々しい偽善者が。 」
ニヤニヤ笑いながらそう言ってやると、奴はふぅ・・と大きなため息をついた。
「 私は正義のヒーローなどではない。
穏やかで平和な世で暮らしたいと常に思っている、酷く臆病で弱い唯の一般人だ。 」
「 はぁ??お前何言ってんの?
だったらなおさら黙っていればその ” 穏やかで平和な世 ” ってやつで暮らせるっつーのに、何しゃしゃり出てくんだよ。
矛盾し過ぎだろ。ばっかじゃね~の? 」
全く一致しない言動と行動に、心底馬鹿にした様な目を向けプッと笑ってやったが・・奴はそれに対し怒るわけでもビビるわけでもなく、クックッ・・と小さな笑いを漏らす。
「 我慢できなかった。 」
「 ーーはっ? 」
まるで子供の様な事を言い出したイケメン君に俺は一瞬呆けたが、そのままそいつは俺にまっすぐ目を向けて言った。
「 お前たちみたいな権力をおもちゃの様に使い、下位の者達を虐げては笑う化け物の様な姿を見るのが我慢の限界だった。
そこでフッと思ったのだよ。
私の望む ” 穏やかで平和な世 ” とはこんな見たくもないモノを永遠に見せつけられる世界なのかと。
こんなクソみたいな我慢をし続ける事が ” 正しい ” 世界の姿なのかとな。
正直こんな事をしてしまった以上死罪になるだろうと思っているが、今、人生で一番私の心は ” 穏やかで平和 ” な状態になっている。 」
そう言い切ってスッキリした様な爽やかな笑みを浮かべたイケメン君に、俺は不思議な気持ちを抱いた。
ヤツの顔には恐怖や後悔などの感情は見当たらずとても満ち足りた顔をしていて・・
なんだかよく分からないが、それが最高に癇に障った。
「 ” 決闘 ” 開始ーーー!! 」
審判を引き受けてくれた教員が開始の合図を上げると、俺はその怒りに身を任せそのまま奴に向かって飛び出し大剣を思い切り横に振る。
大抵のヤツならこれで既にジ・エンド。
しかし、奴はその ” 大抵のヤツ ” には該当しないかった様でーーー
それをしゃがみ込んで回避して直ぐに俺の間合いに入ると、そのまま俺の腹に重い拳の一撃を食らわした。
「 ーーーっ!ぐっ・・・っ!! 」
一瞬息が詰まった俺に対し、そいつは大声で怒鳴る。
「 努力をしない上級資質などただのゴミクズだ!! 」
それにカッ!!となった俺が即座に足でイケメン君を蹴ってやったのだが、奴は手をクロスさせしっかりガード。
それにより怒りは加速する。
「 うっるせぇぇぇーーー!!!偉そうに説教垂れるな!!
お前みたいな下層民がこの侯爵家の俺に逆らうんじゃねーーーよっ!! 」
そのまままた大剣を今度は振り下ろしたが、一瞬で横に飛んでそれを避けた奴は、そのまま俺の顔に強烈なパンチを叩き込む。
「 爵位など戦場で役に立つかっ!!
モンスターに食われて死んでしまえっ!! 」
その容赦など一切ない攻撃に体まで吹き飛ばされそうになったが、俺はグッ!と耐えそのまままた大剣を振る。
「 食われるのはお前の様な下位の野郎だろーがっ!!
訳わからねぇ事言ってんじゃねぇーーよっ!! 」
その言葉もズガンッ!と心を抉ってきたが、とにかく物理的な痛みのせいで意識がお玉ちゃんにしかいかない。
そのためしばしの時間、その地獄の苦しみに耐えやっとそれが治まってきたら、今度湧き上がるのは今まで感じたことのない激しい怒りの感情であった。
「 ふざけるなっ!!
お前っ!侯爵家の俺を怒らせてただですむと思うのか? 」
まるで三流の悪役みたいなセリフを吐きながらイケメン君を睨みつけると、周りの奴らは青ざめて沈黙していたが当の本人はハンっと鼻で笑う。
「 喧嘩に負けたから親に敵をとってももらうのか?
この卑怯者め。 」
「 ーーーっんなっ!!!?? 」
あんまりな言葉に煽る様な笑み。
それを見た俺は頭のてっぺんまですっかり血が上り、ビシッ!!とイケメン君を指差し大声で怒鳴った。
「 ” 決闘 ” だぁぁぁーーーーっ!!!! 」
” 決闘 ” は< 仮想幻石 >をつけて行う一対一の一本勝負。
負けたヤツは勝ったやつの命令を一つだけきかないとならないっていうルールの元行われる模擬戦の一種だ。
それに対しイケメン君は「 受けて立つ! 」と承諾し、お互いギラギラと睨み合いながら【 闘技場 】へと向かった。
そうして騒ぎを聞きつけた沢山のギャラリーが見守る中、俺は愛用の大剣を持ちながら拳を構えるイケメン君を睨む。
相手の資質は知らないが、俺は上級の戦闘資質。
一対一なら絶対に負けるはずがないと思っていたし、周りの誰もが同じ様にそう思っていたはずだ。
だから俺の頭の中には戦う前からすでにイケメン君が土下座をし、ペコペコと俺に謝る光景しか浮かんでいなかった。
「 お前、ホント馬鹿だなぁ~。
侯爵家の俺に逆らってこの国でこれから生きていけると思うのか?
未来を棒に振ってまで正義のヒーロー面したかったとか・・。
このクソ痛々しい偽善者が。 」
ニヤニヤ笑いながらそう言ってやると、奴はふぅ・・と大きなため息をついた。
「 私は正義のヒーローなどではない。
穏やかで平和な世で暮らしたいと常に思っている、酷く臆病で弱い唯の一般人だ。 」
「 はぁ??お前何言ってんの?
だったらなおさら黙っていればその ” 穏やかで平和な世 ” ってやつで暮らせるっつーのに、何しゃしゃり出てくんだよ。
矛盾し過ぎだろ。ばっかじゃね~の? 」
全く一致しない言動と行動に、心底馬鹿にした様な目を向けプッと笑ってやったが・・奴はそれに対し怒るわけでもビビるわけでもなく、クックッ・・と小さな笑いを漏らす。
「 我慢できなかった。 」
「 ーーはっ? 」
まるで子供の様な事を言い出したイケメン君に俺は一瞬呆けたが、そのままそいつは俺にまっすぐ目を向けて言った。
「 お前たちみたいな権力をおもちゃの様に使い、下位の者達を虐げては笑う化け物の様な姿を見るのが我慢の限界だった。
そこでフッと思ったのだよ。
私の望む ” 穏やかで平和な世 ” とはこんな見たくもないモノを永遠に見せつけられる世界なのかと。
こんなクソみたいな我慢をし続ける事が ” 正しい ” 世界の姿なのかとな。
正直こんな事をしてしまった以上死罪になるだろうと思っているが、今、人生で一番私の心は ” 穏やかで平和 ” な状態になっている。 」
そう言い切ってスッキリした様な爽やかな笑みを浮かべたイケメン君に、俺は不思議な気持ちを抱いた。
ヤツの顔には恐怖や後悔などの感情は見当たらずとても満ち足りた顔をしていて・・
なんだかよく分からないが、それが最高に癇に障った。
「 ” 決闘 ” 開始ーーー!! 」
審判を引き受けてくれた教員が開始の合図を上げると、俺はその怒りに身を任せそのまま奴に向かって飛び出し大剣を思い切り横に振る。
大抵のヤツならこれで既にジ・エンド。
しかし、奴はその ” 大抵のヤツ ” には該当しないかった様でーーー
それをしゃがみ込んで回避して直ぐに俺の間合いに入ると、そのまま俺の腹に重い拳の一撃を食らわした。
「 ーーーっ!ぐっ・・・っ!! 」
一瞬息が詰まった俺に対し、そいつは大声で怒鳴る。
「 努力をしない上級資質などただのゴミクズだ!! 」
それにカッ!!となった俺が即座に足でイケメン君を蹴ってやったのだが、奴は手をクロスさせしっかりガード。
それにより怒りは加速する。
「 うっるせぇぇぇーーー!!!偉そうに説教垂れるな!!
お前みたいな下層民がこの侯爵家の俺に逆らうんじゃねーーーよっ!! 」
そのまままた大剣を今度は振り下ろしたが、一瞬で横に飛んでそれを避けた奴は、そのまま俺の顔に強烈なパンチを叩き込む。
「 爵位など戦場で役に立つかっ!!
モンスターに食われて死んでしまえっ!! 」
その容赦など一切ない攻撃に体まで吹き飛ばされそうになったが、俺はグッ!と耐えそのまままた大剣を振る。
「 食われるのはお前の様な下位の野郎だろーがっ!!
訳わからねぇ事言ってんじゃねぇーーよっ!! 」
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