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第十六章
586 大事な貴方に
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全身フルフェイスの白銀の鎧を着た兵士が一人の女性の前に跪いている。
場所は何処かの教会だろうか?
大きな窓に色とりどりのステンドガラス、そしてそんな2人の人物をまるで見守る様に大きなイシュル神の像が建っていた。
跪いている方の人物はフルフェイスの兜を被っているため誰かは分からないが、その前に立つ人物はある人物に非常に酷似していて思わず目を見開く。
見事な金の髪色をもつ長いサラサラヘアーに髪を飾るのは白い髪飾り、瞳の色は稀少で神秘的なアメジスト色。
ーーーーあれはソフィアちゃん・・?
ただ今のソフィアちゃんではなくもっと成長したソフィアちゃんで、恐らくは十代の半ばは越えている様子なのだが、あまりにも今のソフィアちゃんとは雰囲気が違うため本当に本人なんだろうか?と疑ってしまう程であった。
陰鬱な雰囲気に加え、今は目が溶けてしまわないか心配になるほどボロボロと泣いてしまっているので全くの別人に見えてしまう。
そしてそんな止めどなく涙を流し続けるソフィアちゃんの前で、フルフェイスの人物はゆっくりと立ち上がり、静かに「 泣かないで下さい。 」と言った。
その声はフルフェイスのせいでくぐもって聞こえにくいが、アゼリアちゃんの声で・・俺はヒュッ!と息を飲む。
涙を拭って貰ったソフィアちゃんは顔を歪めてアゼリアちゃんらしき人物に向かって叫んだ。
「 行かないで!アゼリア!!
貴方は私の大切な・・たった一人の友達なのっ!!
貴方がいなくなったら・・・私はっ・・・・もう戦えないっ・・。 」
必死に引き留めようとするソフィアちゃんに対し、アゼリアちゃんは静かに首を振った。
「 私は行かねばなりません。
そして・・・・貴方はなんとしても生き延びなければ。 」
そしてそのまま泣き続けるソフィアちゃんの手を両手でギュッと握ると、アゼリアちゃんは言い聞かせる様に続けて言った。
「 貴方が死ねばそれこそ奴らの思う壺です。
貴方を生かす為に死んでいった者達の為にも絶対に負けてはいけません。
どんなに辛くとも誰に何を言われようとも貴方は生きる。
それこそが最大の償い・・そして復讐なんですから。
それにーーー・・ 」
アゼリアちゃんはゆっくりと握った手を離すと、パッと明るい声色で言った。
「 ソフィア様。
貴方は唯一私を救ってくれた神様で、世界で一番大好きな唯一の友達です。
母に捨てられ両親にも疎まれ生きてきた私には貴方以外の大切なものは何もない。
だから貴方が死ねば、私はこの世界を呪うでしょう。
だからどうか死なないで。
貴方の敵は私が必ず倒します。
この命は世界で一番大好きな貴方に捧げましょう。 」
アゼリアちゃんはそう言って腰に差してあった短剣を抜くと、それをソフィアちゃんに渡す。
その短剣はこの間見せてもらったばかりの・・青いヒナギクのような花の模様が彫られているアゼリアちゃんの大切な短剣であった。
そしてまた砂嵐の様な映像が流れて画面が切り替わると、そこは薄暗い洞窟の様な所であった。
そして断続的に聞こえるカーンカーンという何かを掘る音。
それはツルハシを持った沢山の人達が一心不乱に穴を掘っている音で、薄暗い洞窟の中には沢山の人達がいる様子であった。
全員げっそりとやせ細り、顔色は悪く目には生気が灯っていない。
体の具合もあまり良くなさそうでゲホゲホッという咳やハァハァ・・という荒い息遣いが絶えず聞こえてくる。
そんなボロボロの状態なのに彼らの足には足枷が、そしてそこから伸びている鎖によって全員が一本に繋がれ無理やり作業をさせられている様だ。
” 一体何故? ”
” 彼らは大丈夫なのか? ”
そんな心配をしていると、突然奥の方からーーー
「 ぎゃあああーーーー!!!! 」
大きな悲鳴が聞こえ、それがまるで伝染していくように次々と真っ暗で見えない奥から順に悲鳴は近づいてくる。
その理由が判明する前に、足枷で繋がれた人達は順番にズルズルと奥の方へと引っ張られていき、引きずられながら彼らは必死に「 助けてくれ!! 」と叫んだが、助けてくれる者は誰もいない。
た、大変だ!
俺が慌てて動こうとしたのだが、一切体は動かす事はできずただ見ている事しかできなかった。
呆然と立ち尽くす俺の目の前で、やがて足かせで繋がれた者達全員が真っ暗な洞窟の奥へと消えてしまうと、何かの生物のゲフッ・・というゲップ音だけが奥から聞こえ、後はシーン・・と辺りは水を打ったように静かになったーーー・・
そしてその直後、直ぐにパッと切り替わった景色は洞窟の入り口。
今しがたいた洞窟からちょうど出た場所の様だ。
そこでも作業している沢山の人達がいて、山積みになっている鉱石の選別をしているところであったが、明るくなったところでやっとその人達の正体を知る。
首筋にくっきりと刻まれている【 奴隷陣 】
彼らはこの鉱山で働かされている奴隷達だ。
奴隷の男達は洞窟の方へチラッと視線を向け、青ざめながらチッと舌打ちをした。
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