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第十三章

504 違う世界みたい

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( リーフ )

まぁ、クラス分けと言っても、特級組以外は殆どが貴族と平民に分かれるだけなので正直ドキドキ感は少ないと思うんだけどな~。


そう思うが、少し前に男爵という爵位を持つモルトとニールが言っていた事を思い出し、歩きながら考え込む。


貴族の子たちにとってはこれから共に学んでいく貴族達の顔ぶれは結構重要なのだそうで、とりあえずバチバチやり合っている貴族同士が同じ貴族組にいませんようにと二人揃って言っていた。


確かに爵位が下の貴族達にとっては死活問題かもと、マリオンとモルト、ニール達の日常を振り返り、非常に納得する。


” 何の派閥か~ ” とか、下の爵位の場合は ” バックについている貴族は~? ” とか、” どの派閥にはいろうか~? ” とか、貴族の子供たちにとっては複雑な様だ。


普段のモルトとニールの苦労と忍耐の日々を想い、ヤレヤレとため息が漏れてしまった。


しかしそもそも実力主義なのに、また貴族と平民を分けるの??と思うが、ところがどっこい!これも寮同様、双方から強い希望が上がったのが原因らしい。


貴族は貴族同士、平民は平民同士。


そう分けられている方が気を使わなくて済むのは言わずもがなだが、実はこれ、勉強内容にも大きな差があるからだったりする。


まず大前提として貴族の子達はとにかくひたすら勉強勉強!!と幼少時代を過ごしてきた、いわゆる英才教育なるものを受けて育ってきている。


つまりありとあらゆる知識の量が全体的に高い貴族の子と比べ、平民の子達は独学と義務教育で勉強してきているため、どうしても知識の偏りが多い。


そのため授業を一緒に行っても、その進行スピードが全く違うため双方に不満がある状態になってしまうのだ。


更に困るのはマナー的な一般教養の授業の時。


貴族は貴族としての独特のマナーを学び、平民は平民の貴族に対するマナーを学ぶわけだが、これは全く性質の違うもの。


イメージ的には日本のマナーを外国でやっても「 ?? 」と不思議そうに見られてしまう様な感じだと思われる。


何か失礼があれば首を跳ねられてしまう可能性もある平民さんからすれば、死活問題の対貴族マナー講座。


貴族社会のマナーよりまずはそこをきっちり学びたい。

そんな平民の生徒さんからすれば、クラスを分けるのは大歓迎!なんだそうだ。


首を跳ねられるなんてなんだか別世界に来たみた~い!

……って別世界だった別世界だった。


一人でツッコミ、一人で笑う。


そんな俺をレオンがまたしても不思議そうな顔で見ていたので、なんでもないよ!と首を振った。


「 ごめんごめん。

ちょっとツッコんでいる自分の姿を想像しちゃって……。 」


「 突っ込む……?? 」


レオンはボソッと呟くと怪訝な顔をする。


一人笑いが定着してきたら一人前のおじさん。

そう心の中でレオンに教えていると、あっという間に学院の正門へ到着してしまった。



そこは、遠目から見てもわかるくらい人が集まっていて、多分そこにクラス分け表が張り出されていると思われる。

俺は、おでこに手を当てジーッとその人が集まっている場所を見つめた。


すると、そこから少し離れた場所にソフィアちゃんとアゼリアちゃん、獣人組にエルフ組、そして幼馴染~ズのモルト、ニールが集まって話しているのが見えたため、大きく手を振りながら叫ぶ。


「 おーーい!皆、おはよう! 」


直ぐに声を掛けると、その声に最初に反応したのはモルトとニールだ。


「「 おはようございます!リーフ様~! 」」


大きく手を振って二人が返事を返すと、他のメンバー達も ” おはよう ” と朝の挨拶をしはじめたのだが────……。



────ザッ!!!!



レオンの存在に気づいた周囲の人達が、一斉に遠ざかり、俺たちの周りは結界を張ったかの様に誰もいなくなった。


レオンへの対応時のみ、身分に関係なく皆の心が一つになっている!


「 …………。 」


これも一つの身分差別問題の解決法か……。


複雑な気持ちを抱きながら周囲を見回したが、空気を全く読まないレイドが普通に話しかけてきた。


「 リーフとレオンは特級組だな!

俺はモルトとニールと同じく貴族組、メルは平民組だ!

草族は2人とも平民組で、ソフィアとアゼリアはリーフと同じ特級組だぜ! 」


ワクワクが抑えられない!と言わんばかりにそう伝えてくるレイドだったが、その瞬間、アゼリアちゃんにカーン!!と膝裏を蹴り飛ばされ「 キャインっ!! 」と情けない悲鳴を上げる。


「 ” 様 ” をつけろ!

この躾のなっていない赤犬めっ!! 」


そのままワンワン、キュ~ンキュ~んと喧嘩し始める2人は放って置いて……俺はフッと疑問に思い、エルフ族の2人に話しかけた。


「 あれ?サイモンとリリアちゃんは特級組じゃないのかい?

てっきり同じクラスかと思っていたよ。 」


2人は揃って結構な高得点を出していたのに加えて、知力に特化しているエルフ族なら筆記もかなりいいかと思っていたのでこれは予想外。


顔を傾げる俺に対しサイモンはチッチッチ~と指を振る。


「 実は私達はリタイア組なんですよ~。

リーフ様と離れ離れになっちゃうのはほんと~に!残念なんですけど仕方なかったんですぅ~。 」


「 ……へ??あ、そうなんだ!  」


2人は特級組に選ばれる実力はあったが、なんと辞退してしまったらしい。


リリアちゃんはともかくサイモンは喜んで来そうなものだが、やはりほぼ貴族だけの状態は精神的に厳しいと思ったのだろうか?


なんとなく納得できずにいると、サイモンはニマっといたずらする前の猫の様に目を細めた。


「 リーフ様ったら分かってな~い!

特級組の方が出会いがあるのにって思ってますよね? 」


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