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第十一章
446 英雄の未来と……
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( リーフ )
しかも万が一【 英雄 】なんていう未知の資質と、レオンの実力がバレて広く認知されてしまえば、今後の生活に対して色々な意見をぶつけられる可能性だってある。
” その力で今直ぐにでも人助けをするべき ”
” 世の役に立つべきだ ”
とか……。
ギャーギャーと責め立てる大人達に囲まれ、ビクビクしながら頷くレオンが頭の中に浮かぶ。
そんな頭の中の大人達をもれなく拳骨で黙らせると、目の前でムスッ!としているレオンを見て、首を振った。
俺は、” 綺麗事だ ” ” 人の命をなんだと思っている! ” と、どんなに罵られても、戦う選択肢ってものは人の命を、世界を救いたいと思う本人の気持ちありきだと思っている。
だからレオンがどうしたいか自分で答えを出すまで、周りの音は出来るだけシャットアウトしてやりたい。
もう大して時間はないけど……。
俺は部活の説明が簡単に書かれた紙を、ジーッと睨みつけるように見ているレオンを見て、部活を凄く楽しみにしている様子に、心はズキズキと傷んだ。
今はせっかくレオンが見つけた小さい興味を優先させてあげよう。
今後待ち受ける数々の辛い出来事の中で、レオンのオアシス的な存在になるかもしれないし……。
……そうそう、俺の虐めとかね!
ハハッ!と乾いた笑いを漏らす俺の横で、レオンが手で持っていた部活の説明書が、ビリンっ!と真っ二つに裂けてしまった。
それに周りはビクビクンッ!!と身体を震わせ、恐怖に引きつった表情を浮かべたが、今後の虐め内容についての思考に突入していた俺には何も見えない。
そうそう、虐め、虐め……。
レオンの強さを引き出すための大事な大事な俺のお役目……。
最初は気合を入れていた虐めも、最近はマンネリ化。
しかも現在は、それすらもレオンの ” 狂 ” だの何だのが怖すぎて、少~しだけ虐め内容をマイルドにしている。
なんかいまいちうまく行っている気がしないんだよね~。
俺の脳裏にはつい最近レガーノで起きた事が頭を過った。
「 レオン君レオン君、ちょっとお茶を持って来ておくれ。 」
パシリをさせてやろうも偉そうにそう命令した時の事。
レオンは、その後一瞬で茶葉を取ってきて、完璧な作法でお茶を入れてくれた。
その時のご機嫌な様子に、これもダメだったかとガックリしながらお茶を飲んだが……バラの良い香りがするそのお茶に " まさか…… " と嫌な予感がして、モルト家の茶葉畑へ。
するとそこには、大きな網を担いだモルトパパとモルトがいた。
" 正体不明の黒いモンスターが茶葉を一瞬で毟って行った! "
わーわー!と家族総出で大騒ぎしている中、俺はレオンの頭を押さえつけごめんなさいをしてきた。
何かもってこい系の虐めは他人に迷惑が掛かる。
それは " ミルクパン持ってきて~ " と頼んだら、ニール家所有の牛とニールママを攫ってきた事でもよく分かったので、言うのを即辞めた。
じゃあどうするか?と、ありとあらゆる虐めをしてみても、普段から ” 馬 ” だろうが ” 椅子 ” だろうが、嫌がるどころか高貴なるプライドまで持ってお仕事する始末だし?
ご飯だって ” 残飯 ” しか基本食べたがらないし、赤ちゃんの様にただ差し出されるがまましか食物を接種しようとしないし……。
そのうち赤子の離乳食のように俺の残飯プラス裏ごしペーストした食材しか食べなくなるかもしれない……そんな心配までしてしまうレベルまできている。
いや、まさかねまさかね~。
離乳食は、赤ちゃんのご飯だから~。
そう自身の頭をよぎった妄想を、ははは~と笑って吹き飛ばしていると、後ろでレオンが破れた部活の説明書を黒い炎で一瞬で燃やしつくし炭すら残さず消滅させていた。
それに全員青ざめていたが、離乳食の豊富なレシピを思い出し、ついでにそれを食べさせる時のテクニック満載のパントマイムをやり始めている俺は気づかない。
頭の中の赤ちゃんレオンの口に向かい、” 離乳食を積んだ電車が到着しま~す ” とスプーンをジグザク動かしながら近づけ、口に無理やりそれを突っ込んだ瞬間────
一つの懸念が頭を過ぎり、ピタリと動きを止めた。
────レオンさん本格的に幼児返り……もしくは赤ちゃん返りしてない?
一時的にではなく。
もしかして精神的にしんどくなったとき陥る系の……他にも記憶喪失とかバリエーション豊かなやつ……?
固まったまま、俺は表情を引き締めた。
以前からその傾向はあったが、まさかとうとうそれが一時的ではなく完全体になってしまった……?
スッ……と、離乳食パントマイムから休めの体勢に変え、冷静にレオンを見つめる。
すると、いつの間に取ったのか、俺が持っていたはずの【 部活動入部届 】がレオンの手に握られており、ギュムムム~と強く握られている最中であった。
興奮しすぎ~。
俺がゆっくりそれを返してもらうと、レオンは、あ……と酷く残念そうな顔をした後、またもやムッスリしてしまう。
しかも万が一【 英雄 】なんていう未知の資質と、レオンの実力がバレて広く認知されてしまえば、今後の生活に対して色々な意見をぶつけられる可能性だってある。
” その力で今直ぐにでも人助けをするべき ”
” 世の役に立つべきだ ”
とか……。
ギャーギャーと責め立てる大人達に囲まれ、ビクビクしながら頷くレオンが頭の中に浮かぶ。
そんな頭の中の大人達をもれなく拳骨で黙らせると、目の前でムスッ!としているレオンを見て、首を振った。
俺は、” 綺麗事だ ” ” 人の命をなんだと思っている! ” と、どんなに罵られても、戦う選択肢ってものは人の命を、世界を救いたいと思う本人の気持ちありきだと思っている。
だからレオンがどうしたいか自分で答えを出すまで、周りの音は出来るだけシャットアウトしてやりたい。
もう大して時間はないけど……。
俺は部活の説明が簡単に書かれた紙を、ジーッと睨みつけるように見ているレオンを見て、部活を凄く楽しみにしている様子に、心はズキズキと傷んだ。
今はせっかくレオンが見つけた小さい興味を優先させてあげよう。
今後待ち受ける数々の辛い出来事の中で、レオンのオアシス的な存在になるかもしれないし……。
……そうそう、俺の虐めとかね!
ハハッ!と乾いた笑いを漏らす俺の横で、レオンが手で持っていた部活の説明書が、ビリンっ!と真っ二つに裂けてしまった。
それに周りはビクビクンッ!!と身体を震わせ、恐怖に引きつった表情を浮かべたが、今後の虐め内容についての思考に突入していた俺には何も見えない。
そうそう、虐め、虐め……。
レオンの強さを引き出すための大事な大事な俺のお役目……。
最初は気合を入れていた虐めも、最近はマンネリ化。
しかも現在は、それすらもレオンの ” 狂 ” だの何だのが怖すぎて、少~しだけ虐め内容をマイルドにしている。
なんかいまいちうまく行っている気がしないんだよね~。
俺の脳裏にはつい最近レガーノで起きた事が頭を過った。
「 レオン君レオン君、ちょっとお茶を持って来ておくれ。 」
パシリをさせてやろうも偉そうにそう命令した時の事。
レオンは、その後一瞬で茶葉を取ってきて、完璧な作法でお茶を入れてくれた。
その時のご機嫌な様子に、これもダメだったかとガックリしながらお茶を飲んだが……バラの良い香りがするそのお茶に " まさか…… " と嫌な予感がして、モルト家の茶葉畑へ。
するとそこには、大きな網を担いだモルトパパとモルトがいた。
" 正体不明の黒いモンスターが茶葉を一瞬で毟って行った! "
わーわー!と家族総出で大騒ぎしている中、俺はレオンの頭を押さえつけごめんなさいをしてきた。
何かもってこい系の虐めは他人に迷惑が掛かる。
それは " ミルクパン持ってきて~ " と頼んだら、ニール家所有の牛とニールママを攫ってきた事でもよく分かったので、言うのを即辞めた。
じゃあどうするか?と、ありとあらゆる虐めをしてみても、普段から ” 馬 ” だろうが ” 椅子 ” だろうが、嫌がるどころか高貴なるプライドまで持ってお仕事する始末だし?
ご飯だって ” 残飯 ” しか基本食べたがらないし、赤ちゃんの様にただ差し出されるがまましか食物を接種しようとしないし……。
そのうち赤子の離乳食のように俺の残飯プラス裏ごしペーストした食材しか食べなくなるかもしれない……そんな心配までしてしまうレベルまできている。
いや、まさかねまさかね~。
離乳食は、赤ちゃんのご飯だから~。
そう自身の頭をよぎった妄想を、ははは~と笑って吹き飛ばしていると、後ろでレオンが破れた部活の説明書を黒い炎で一瞬で燃やしつくし炭すら残さず消滅させていた。
それに全員青ざめていたが、離乳食の豊富なレシピを思い出し、ついでにそれを食べさせる時のテクニック満載のパントマイムをやり始めている俺は気づかない。
頭の中の赤ちゃんレオンの口に向かい、” 離乳食を積んだ電車が到着しま~す ” とスプーンをジグザク動かしながら近づけ、口に無理やりそれを突っ込んだ瞬間────
一つの懸念が頭を過ぎり、ピタリと動きを止めた。
────レオンさん本格的に幼児返り……もしくは赤ちゃん返りしてない?
一時的にではなく。
もしかして精神的にしんどくなったとき陥る系の……他にも記憶喪失とかバリエーション豊かなやつ……?
固まったまま、俺は表情を引き締めた。
以前からその傾向はあったが、まさかとうとうそれが一時的ではなく完全体になってしまった……?
スッ……と、離乳食パントマイムから休めの体勢に変え、冷静にレオンを見つめる。
すると、いつの間に取ったのか、俺が持っていたはずの【 部活動入部届 】がレオンの手に握られており、ギュムムム~と強く握られている最中であった。
興奮しすぎ~。
俺がゆっくりそれを返してもらうと、レオンは、あ……と酷く残念そうな顔をした後、またもやムッスリしてしまう。
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