上 下
154 / 1,307
第四章

139 ドノバンの卒業テスト

しおりを挟む
( リーフ )



長剣より短く短剣より長い中剣、それを右手と左手それぞれに持ち構えた。




中剣の二刀流。



それが今まで必死に試行錯誤して考え抜いた自分の一番使いやすい武器の型だ。

現在、それを構えた視線の先には大剣を持ったドノバンがいる。




この四年間家庭教師をしてくれた座学のマリアンヌさんと実技全般を受け持ってくれたドノバンは中学院入学までの契約であったため今日が最後の授業だ。



先程、マリアンヌさんには授業後に今までのお礼を言いお別れしてきたのだが、彼女は最後の最後までレオンに対しあまり良くない視線を向けていた。


物語の中に登場する彼女がリーフに対し尊敬の念が強かったのは、彼女自身が身分を重んじる価値観を持っていたから。


そしてその傾向はそのまま現在のマリアンヌさんにも当てはまっていたので、そんな彼女にとってレオンという存在は耐え難いものだったのだろう。


ちなみにそれは彼女のお眼鏡に敵わなかった平凡リーフの俺も同様であった。



レオンと共にチックンチックン剣山のような目線と嫌味のお祭りわっしょいをされ続けたが、残念ながら俺は繊細な意地悪が気になっちゃう年頃の少年ではなく、マリアンヌさんより遥か年上のおじさん。

あんなもの犬の尻尾でふさふさ叩かれたくらいのダメージしかない。



それにーー

” 嫌いでも仕事はきっちりこなす ” 


それが大人としてのマナーだとしても、意地悪してもちゃんと教えてくれた彼女にはとても感謝している。

心の中でありがとうともう一度お礼を言い、とりあえず今後の彼女の人生に幸あれと願っておいた。




そしてその後のドノバンの最後の授業。



今日は一対一でドノバンと対戦する卒業試験だそうで、いつもの広場に着いた途端、イヤリング型の仮想幻石レベル1を渡され「 全力で戦え!以上。 」という物凄く分かりやすい説明をされた。


そして今、こうしてお互い武器を構えて対峙しているというわけだ。




ドノバンとの一本勝負。


彼はゆる~く大剣を担ぎまるで挑発する様に隙をコレでもかと見せてくる。


いける!と思って、ただ闇雲に突っ込めば・・・

一瞬で地面にチュッチュをする羽目になるのは今までの経験上よく知っているため、ジリジリと距離をとった。



ドノバンはそれを見てニマニマ~と揶揄う様に笑う。



「 おー警戒してんな~?結構結構。

相手が油断していると思って自分が油断すれば、それが ” 隙 ” になる。


常に警戒は怠るな。


ちゃんと覚えててえらいーー・・ぞっ! 」




あんなに重い大剣なのにドノバンは物凄い速さで俺の前に移動し、軽々と剣を横に振る。



ドノバンの資質は〈 魔法剣士 〉



俺同様、剣と魔法を駆使して戦うが、どちらかといえばパワータイプで圧倒的な火力でぐいぐい攻撃してくるタイプ。



力比べではまず勝てない。



対して俺の〈 魔術騎士 〉は、どちらかと言えばテクニックタイプ。


回避や特殊な攻撃方法で敵を倒す。



俺はドノバンの攻撃を両手の中剣でパワーを逸らしながら弾くと、彼は「 おっ! 」と嬉しそうな顔をする。


その勢いのまま相手の懐へと飛び込むと、ドノバンは直ぐに大剣をひき俺の攻撃を防ぎ、そのまま剣のラッシュが続く。



「 動きは良し!ーーそれじゃあ次いくぜ~! 」



ゾワッとした感覚を覚え直ぐに後方へ大きく下がると、大剣にボッ!!と赤い炎が宿る。


ドノバンのスキルが発動したのだ。





<魔法剣士の資質>  ( 先天スキル )


< 魔法剣 >



自身の持つ武器に魔法を付与し属性を付けることが出来る。

攻撃力、魔力が高いほど強力な魔法を付与できる。






どうやら自身の持つ大剣に火の属性を付与したようだ。



更にドノバンは身体強化の魔法を掛けて、ギュンッ!!と全く見えないほどのスピードで俺の目の前まで来ると、そのまま炎の剣を振り下ろす。


あわやというところで俺の身体強化が間一髪間に合い、それを正面から両手で受け止めるも、このままでは押し切られる!


剣を必死に受け止める俺が、うぐぅ~っ!!と呻くもドノバンは涼しい顔。


くっそーっと心の中で叫びながら、俺はフッしゃがみ込むように姿勢をあえて低くして大剣の根本から剣先に向かって攻撃をいなすと、ドノバンの胴体めがけてキックを繰り出したがそれは読まれていたようでスッと後ろに体を引くことで回避されてしまう。


更にはすかさず足払いを繰り出して来たため軽くジャンプし攻撃を回避したが、そのままドノバンの猛攻撃が始まった。



「 ほらほら、受けてるだけじゃ~永遠に勝負つかないぜ~?


どうすんだ~? 」



「 うぐぐぐ~!! 」



ドノバンの連続攻撃を全ていなしながら弾いてくと、トドメだと言わんばかりにドノバンはニヤッと笑い、ひときわ大きく炎を燃え上がらせたがーーー・・・


突如、炎がふっと消えた。



「 ーーーは? 」



その不可解な現象に、ドノバンが呆けた声を上げたのでチャンス!とばかりに俺は彼の顎を狙って蹴り上げた。


しかし流石はドノバン、軽く片手でガード。


しかもすぐに反撃しようと剣を振ろうとしてくる。





ーーーだが・・




視覚が一瞬遮られた今が最大のチャンス!





俺は両手に持つ中剣をドノバンの目の前に放り投げ、一瞬で彼の股の下をくぐり抜ける。



「 おぉっ!? 」


ドノバンが慌てて振り向こうとしたその瞬間、俺は彼の大剣を持つ方の手を掴み、「 うおおおおーーー!!! 」と叫びながら一本背負いーーー!!




ーーっ勝った!!





そう確信した・・その時ーーーー





ドノバンはニヤリと笑いながら自ら前に飛び、その反動で逆に俺を軽くポーンと宙に投げ飛ばした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

満月に囚われる。

柴傘
BL
「僕は、彼と幸せになる」 俺にそう宣言した、想い人のアルフォンス。その横には、憎き第一王子が控えていた。 …あれ?そもそも俺は何故、こんなにも彼に執心していたのだろう。確かに彼を愛していた、それに嘘偽りはない。 だけど何故、俺はあんなことをしてまで彼を手に入れようとしたのだろうか。 そんな自覚をした瞬間、頭の中に勢い良く誰かの記憶が流れ込む。その中に、今この状況と良く似た事が起きている物語があった。 …あっ、俺悪役キャラじゃん! そう思ったが時既に遅し、俺は第一王子の命令で友好国である獣人国ユースチスへ送られた。 そこで出会った王弟であるヴィンセントは、狼頭の獣人。一見恐ろしくも見える彼は、とても穏やかで気遣いが出来るいい人だった。俺たちはすっかり仲良くなり、日々を楽しく過ごしていく。 だけど次第に、友人であるヴィンスから目が離せなくなっていて…。 狼獣人王弟殿下×悪役キャラに転生した主人公。 8/13以降不定期更新。R-18描写のある話は*有り

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

処理中です...