35 / 57
第三章、更に甘い唇にたくさんのキス
8、明かされた真実
しおりを挟む
クリスマスモード全開な婚活会場。場の雰囲気のムードもあるのかいつもより会員達は盛り上がっているように見える。ケーキもたくさんならび、日和の職場の人間もいるが肝心な日和の姿がどこを見渡しても見つからない。いつもなら一瞬で日和を見つけられるのに、どこに行ったんだろうか。なんだかざわざわと胸騒ぎがする。
「日和」
トイレにでも行ってるのか?
「おい、日和はどこへ行った。全然見当たらないんだが」
日和の職場の人間、綾乃に聞いてみると困った顔をして口を開いた。
「あ~、日和はさっき男性のかたに話があるとか言われて連れてかれちゃいました」
「は? まさかあの時のケーキ屋にいた男か!?」
「そ、そうですね」
くそったれ! あれほど俺以外の男には気をつけろと言ったのに。とくにあの男、一瞬しか見ていないが可愛い身なりをしていたが日和を見る目になんだか違和感を感じた。これは男の勘ってやつだが、男に対して気をるけることに越したことはないのに。日和は自分がどれだけ男を虜にしてしまう色香を放っているのか全く分かっていない。ましては最近は自分に抱かれまくっているからか大人の女の魅力が溢れ出してしまっている。
(まぁ俺のせい、なんだけどな)
「どこに行ったか分かるか?」
「それはちょっと分からないですね~、なにせいきなり連れていかれちゃったんで」
「そうか、ありがとな。少し日和を探してくる」
会場内には日和の姿は見当たらない。会場を飛び出し部屋の扉を一箇所ずつ勢いよく開け中を見渡すがなかなか見つからない。
「っくそ! どこ行ったんだよ!」
物品倉庫、自分が前に日和を連れ込んだ場所。まさかと悪い予感が一瞬頭によぎり勢いよく扉を開けた。
「ひより!!!」
目の前には見たくもない無惨な光景。泣きじゃくる日和に、男が覆いかぶさっている。考える余地もない。洸夜は日和に覆いかぶさっている悠夜を殴り飛ばした。
「日和っ!!!」
今にも倒れてしまいそうな真っ青な顔、急いで自分の着ていたジャケットを日和に羽織らせ、ガタガタと震えている小さな身体を力強く抱きしめた。唇はき切れて血が滲んでいる。怖かっただろう……一気に湧き上がる怒りはすでに身体からはみ出している。殴り殺してしまいたい。今にでもあの男を何度も殴りたい情動が拳を震わせる。けれど今は日和が第一優先だ。とにかく日和を強く抱きしめた。
「日和、もう大丈夫だ。大丈夫、遅くなってごめんな。もう大丈夫だ」
何度も大丈夫を繰り返す、日和を落ち着かせるために、自分を落ち着かせるために。背中をゆっくりさする。何度も何度も大丈夫を繰り返した。
「いってぇな! 何すんだよクソ兄貴!!!」
(は? 兄貴?)
こいつは何を言っているんだ? 洸夜に殴り飛ばされた悠夜は怒りで顔を真赤にし、日和を抱きしめている洸夜に殴りかかってきた。
「きゃぁっ」
日和の悲鳴と共にバキッと骨と骨が強く当たった音がした。
「っいってぇな……てめぇ、殺されてぇの?」
口の中に鉄の味がジワジワ広がる。
「はっ、何が殺されてぇだよ。母親一人守れなくて、好きな女も守れないような男にできるわけないじゃん。日和さんの唇柔らかかったなぁ」
悠夜は洸夜を見下すように嘲笑った。
怒りは身体からはみだすどころかもう爆発した。自分を嘲笑う悠夜に飛びつき胸ぐらを掴む。
「てめぇ、さっきからなにふざけたこと言ってんだ。日和にしたことも……許さねぇぞ」
「何も知らないで気楽に生きてきた坊っちゃんがうるせーよ」
三人しかいない暗い部屋に悠夜の地割れするかのような怒鳴り声が響いた。怒りに満ちた目を洸夜に向けてくる。その瞳はどこか悲しげな色も混じっているように見えた。
「はぁ? どういうことだよ!」
「ははっ、本当に何も知らないんだ。可愛そうだから教えてあげるよ」
乾いた笑みを浮かべたと思ったら、すぐに洸夜を睨みつけ口を開いた。
「お前の母親の名前は?」
……は? 突然の母親の名前はって……悠夜がなにを考えているのか全く分からない。
「俺を捨てた母親の名前なんか忘れたよ」
もう思い出したくはない。悠夜の胸ぐらを掴む手に更に力が入る。日和が見ていなかったらボロボロに殴っていたかもしれない。
「やっぱり何にも知らないんだ。お前の母親は子供を捨てたんじゃない、DVしてくる旦那から逃げたんだよ」
……は? 何を言っているんだ?
驚きで掴んでいた手の力が抜け落ちた。
「母さんはDVを受けてたんだよ。お前の父親にな。お前は会社の跡取りだから可愛く育てられたのかもしれないけどね」
……母さん? 父親? DV? 急な情報量が頭の中を駆け巡り何がなんだか分からない。自分は今地に足がちゃんとついているのだろうか? 身体がクラリとする。
「悠夜さんはもしかして、コイツの兄弟……なの?」
日和の声でハッとした。自分の母親と悠夜の母親は同一人物ということだろうか?
「日和さんのほうが頭の回転が早いんだね。母さんはDVを受けていた男から逃げた後に俺を妊娠していることに気がついたんだ。つまり僕とコイツは正真正銘の血の繋がった兄弟ってこと」
ドカンと大砲で身体を撃ち抜かれたような衝撃。立っているのが精一杯だ。自分を捨てた母親は父親からの暴力から逃げるためだった。そして日和を犯そうとしていたこの男が自分の血の繋がった弟……ということは淫魔、なのか……
「日和」
トイレにでも行ってるのか?
「おい、日和はどこへ行った。全然見当たらないんだが」
日和の職場の人間、綾乃に聞いてみると困った顔をして口を開いた。
「あ~、日和はさっき男性のかたに話があるとか言われて連れてかれちゃいました」
「は? まさかあの時のケーキ屋にいた男か!?」
「そ、そうですね」
くそったれ! あれほど俺以外の男には気をつけろと言ったのに。とくにあの男、一瞬しか見ていないが可愛い身なりをしていたが日和を見る目になんだか違和感を感じた。これは男の勘ってやつだが、男に対して気をるけることに越したことはないのに。日和は自分がどれだけ男を虜にしてしまう色香を放っているのか全く分かっていない。ましては最近は自分に抱かれまくっているからか大人の女の魅力が溢れ出してしまっている。
(まぁ俺のせい、なんだけどな)
「どこに行ったか分かるか?」
「それはちょっと分からないですね~、なにせいきなり連れていかれちゃったんで」
「そうか、ありがとな。少し日和を探してくる」
会場内には日和の姿は見当たらない。会場を飛び出し部屋の扉を一箇所ずつ勢いよく開け中を見渡すがなかなか見つからない。
「っくそ! どこ行ったんだよ!」
物品倉庫、自分が前に日和を連れ込んだ場所。まさかと悪い予感が一瞬頭によぎり勢いよく扉を開けた。
「ひより!!!」
目の前には見たくもない無惨な光景。泣きじゃくる日和に、男が覆いかぶさっている。考える余地もない。洸夜は日和に覆いかぶさっている悠夜を殴り飛ばした。
「日和っ!!!」
今にも倒れてしまいそうな真っ青な顔、急いで自分の着ていたジャケットを日和に羽織らせ、ガタガタと震えている小さな身体を力強く抱きしめた。唇はき切れて血が滲んでいる。怖かっただろう……一気に湧き上がる怒りはすでに身体からはみ出している。殴り殺してしまいたい。今にでもあの男を何度も殴りたい情動が拳を震わせる。けれど今は日和が第一優先だ。とにかく日和を強く抱きしめた。
「日和、もう大丈夫だ。大丈夫、遅くなってごめんな。もう大丈夫だ」
何度も大丈夫を繰り返す、日和を落ち着かせるために、自分を落ち着かせるために。背中をゆっくりさする。何度も何度も大丈夫を繰り返した。
「いってぇな! 何すんだよクソ兄貴!!!」
(は? 兄貴?)
こいつは何を言っているんだ? 洸夜に殴り飛ばされた悠夜は怒りで顔を真赤にし、日和を抱きしめている洸夜に殴りかかってきた。
「きゃぁっ」
日和の悲鳴と共にバキッと骨と骨が強く当たった音がした。
「っいってぇな……てめぇ、殺されてぇの?」
口の中に鉄の味がジワジワ広がる。
「はっ、何が殺されてぇだよ。母親一人守れなくて、好きな女も守れないような男にできるわけないじゃん。日和さんの唇柔らかかったなぁ」
悠夜は洸夜を見下すように嘲笑った。
怒りは身体からはみだすどころかもう爆発した。自分を嘲笑う悠夜に飛びつき胸ぐらを掴む。
「てめぇ、さっきからなにふざけたこと言ってんだ。日和にしたことも……許さねぇぞ」
「何も知らないで気楽に生きてきた坊っちゃんがうるせーよ」
三人しかいない暗い部屋に悠夜の地割れするかのような怒鳴り声が響いた。怒りに満ちた目を洸夜に向けてくる。その瞳はどこか悲しげな色も混じっているように見えた。
「はぁ? どういうことだよ!」
「ははっ、本当に何も知らないんだ。可愛そうだから教えてあげるよ」
乾いた笑みを浮かべたと思ったら、すぐに洸夜を睨みつけ口を開いた。
「お前の母親の名前は?」
……は? 突然の母親の名前はって……悠夜がなにを考えているのか全く分からない。
「俺を捨てた母親の名前なんか忘れたよ」
もう思い出したくはない。悠夜の胸ぐらを掴む手に更に力が入る。日和が見ていなかったらボロボロに殴っていたかもしれない。
「やっぱり何にも知らないんだ。お前の母親は子供を捨てたんじゃない、DVしてくる旦那から逃げたんだよ」
……は? 何を言っているんだ?
驚きで掴んでいた手の力が抜け落ちた。
「母さんはDVを受けてたんだよ。お前の父親にな。お前は会社の跡取りだから可愛く育てられたのかもしれないけどね」
……母さん? 父親? DV? 急な情報量が頭の中を駆け巡り何がなんだか分からない。自分は今地に足がちゃんとついているのだろうか? 身体がクラリとする。
「悠夜さんはもしかして、コイツの兄弟……なの?」
日和の声でハッとした。自分の母親と悠夜の母親は同一人物ということだろうか?
「日和さんのほうが頭の回転が早いんだね。母さんはDVを受けていた男から逃げた後に俺を妊娠していることに気がついたんだ。つまり僕とコイツは正真正銘の血の繋がった兄弟ってこと」
ドカンと大砲で身体を撃ち抜かれたような衝撃。立っているのが精一杯だ。自分を捨てた母親は父親からの暴力から逃げるためだった。そして日和を犯そうとしていたこの男が自分の血の繋がった弟……ということは淫魔、なのか……
0
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる