23 / 57
第二章、婚活パーティーは嫉妬の嵐
9、落ち着かない
しおりを挟む
五時半に鳴るスマホのアラームで今日も目が覚めた。
「……おかしい」
いや、おかしくはなくて夢に洸夜が出てこないほうがいいのだが三日も夢を見ていない。こんなことは初めてだ。少なくとも二日に一回は現れていたのに。
「いや、いいじゃん! 平和で!」
そう思っていても何故か気になってしまう。
洸夜が夢に出ることが当たり前のようになってしまっていた日和はなんだか胸の奥がそわそわして落ち着かない。
「ああ、もう! なんなのよ!」
夢に出てきても日和を困らせ、夢に出なくても日和を困らせる。それほど洸夜の存在が日和にとって大きく変化してきているのかもしれない。
気になって、気になって丁度水曜日で店が定休日で休みだった日和はなぜか足がハピフルに向かっていた。
(今更だけど私あいつの連絡先しらないのよね)
いつも勝手に夢に現れ、勝手に店にも会いに来るので連絡を取るということが今までなかったのだ。
(連絡先もしらないくせにココで出会ってからは毎日会わない日はなかったもんなぁ)
毎日現れていたのに急に会わなくなるとか、それは心配するよね、人として。うん。
ドーンと構える高層ビル、何度か来ている日和は慣れた手付きで中へと入っていく。
何度も来ているが毎度ロビーの煌びやかさにクラリと一度は目眩がする。
「あの、社長の真田はいらっしゃいますか?」
「社長は本日お休みでございます。失礼ですがお名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」
「あ、以前ここのイベントでお世話になりましたパティシエの田邉と申します」
「……田邉様でいらっしゃいましたか! 大変失礼致しました。社長は三日ほど前から体調不良で休んでおられまして」
「あ、そうなんですね」
どうりで夢にも出てこないはずだ。でも、夢にも出てこれないほど重症なんじゃ……
「社長の家の住所なんて教えてもらえないですよね?」
普通急に現れた人に社長の住所を教えてくれるはずがないと思いつつもダメ元で聞いたみた。
「田邉様にでしたらお教えいたしますよ。こちらが所長のご自宅の住所です」
メモ用紙に書かれた住所。こんな簡単に住所終えちゃって大丈夫か? とも思ったが「ありがとうございます」とその場を後にした。
すぐにタクシーを拾い住所を告げると十分ほどでついたのだが、凡人な日和にとって恐ろしいくらいの高級住宅街だった。
「勢いで来ちゃったけど、社長ってこんな高級住宅街にすんでるの!?」
いくつもの億ションと呼ばれていそうな高層マンション、別荘ような戸建てもズラリと並んでいる。道を歩く人はすれ違う人、すれ違う人綺麗な洋服に身を包んだエレガントで優雅な人ばかりだ。こんな高級住宅街に来る予定も無かった日和はデニムに黒のニット、足元はムートンブーツとかなりのカジュアルファッションだ。
「で、でももう来ちゃったし、そう! 心配なのよ、人として、風引いてるなんて聞いたら心配になるよね!」
そうよそうよ、と自分に言い聞かせ教えてもらったマンションに入る。
広々としたロビーにはコンシェルジュらしき人物。部屋番号を押して呼び出すボタンが見当たらない。これはかなり高級なマンションだと凡人の日和でもすぐに分かった。
「あの、4146の真田さんの部屋にいきたいのですが……」
「お客様のお名前は」
「田邉日和です」
「田邉日和様、少々お待ち下さい」
「は、はい」
異様な空気感に緊張して手汗が止まらない。こんなにセキュリティがしっかりしたところだ、アポがなかったり知り合いとでもなければ入れないだろう。半ば半分諦めかけた時「田邉様お待たせ致しました」とコンシェルジュに呼ばれた。
「田邉様、真田様とご連絡がとれました。今扉が開きますのでどうぞ中へお入りください」
「あ、ありがとうございます」
大きく開いた自動ドアを潜り、目の前に聳え立つ大きなエレベーターに乗り込んだ。
ぐんぐん登っていくエレベーターはなかなかとまる気配がない。そりゃそうだ、洸夜の部屋は四十一階の最上階。あまりにも登りすぎて身体が宙に浮いているような感覚だ。
チンッと上品な音でとまりエレベーターを降りると広い廊下には濃紅色の絨毯が敷き詰められている。なんだか靴で歩くのが申し訳ないくらいに毛並みが揃っていて崩さないようにゆっくりと歩いた。
「……おかしい」
いや、おかしくはなくて夢に洸夜が出てこないほうがいいのだが三日も夢を見ていない。こんなことは初めてだ。少なくとも二日に一回は現れていたのに。
「いや、いいじゃん! 平和で!」
そう思っていても何故か気になってしまう。
洸夜が夢に出ることが当たり前のようになってしまっていた日和はなんだか胸の奥がそわそわして落ち着かない。
「ああ、もう! なんなのよ!」
夢に出てきても日和を困らせ、夢に出なくても日和を困らせる。それほど洸夜の存在が日和にとって大きく変化してきているのかもしれない。
気になって、気になって丁度水曜日で店が定休日で休みだった日和はなぜか足がハピフルに向かっていた。
(今更だけど私あいつの連絡先しらないのよね)
いつも勝手に夢に現れ、勝手に店にも会いに来るので連絡を取るということが今までなかったのだ。
(連絡先もしらないくせにココで出会ってからは毎日会わない日はなかったもんなぁ)
毎日現れていたのに急に会わなくなるとか、それは心配するよね、人として。うん。
ドーンと構える高層ビル、何度か来ている日和は慣れた手付きで中へと入っていく。
何度も来ているが毎度ロビーの煌びやかさにクラリと一度は目眩がする。
「あの、社長の真田はいらっしゃいますか?」
「社長は本日お休みでございます。失礼ですがお名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」
「あ、以前ここのイベントでお世話になりましたパティシエの田邉と申します」
「……田邉様でいらっしゃいましたか! 大変失礼致しました。社長は三日ほど前から体調不良で休んでおられまして」
「あ、そうなんですね」
どうりで夢にも出てこないはずだ。でも、夢にも出てこれないほど重症なんじゃ……
「社長の家の住所なんて教えてもらえないですよね?」
普通急に現れた人に社長の住所を教えてくれるはずがないと思いつつもダメ元で聞いたみた。
「田邉様にでしたらお教えいたしますよ。こちらが所長のご自宅の住所です」
メモ用紙に書かれた住所。こんな簡単に住所終えちゃって大丈夫か? とも思ったが「ありがとうございます」とその場を後にした。
すぐにタクシーを拾い住所を告げると十分ほどでついたのだが、凡人な日和にとって恐ろしいくらいの高級住宅街だった。
「勢いで来ちゃったけど、社長ってこんな高級住宅街にすんでるの!?」
いくつもの億ションと呼ばれていそうな高層マンション、別荘ような戸建てもズラリと並んでいる。道を歩く人はすれ違う人、すれ違う人綺麗な洋服に身を包んだエレガントで優雅な人ばかりだ。こんな高級住宅街に来る予定も無かった日和はデニムに黒のニット、足元はムートンブーツとかなりのカジュアルファッションだ。
「で、でももう来ちゃったし、そう! 心配なのよ、人として、風引いてるなんて聞いたら心配になるよね!」
そうよそうよ、と自分に言い聞かせ教えてもらったマンションに入る。
広々としたロビーにはコンシェルジュらしき人物。部屋番号を押して呼び出すボタンが見当たらない。これはかなり高級なマンションだと凡人の日和でもすぐに分かった。
「あの、4146の真田さんの部屋にいきたいのですが……」
「お客様のお名前は」
「田邉日和です」
「田邉日和様、少々お待ち下さい」
「は、はい」
異様な空気感に緊張して手汗が止まらない。こんなにセキュリティがしっかりしたところだ、アポがなかったり知り合いとでもなければ入れないだろう。半ば半分諦めかけた時「田邉様お待たせ致しました」とコンシェルジュに呼ばれた。
「田邉様、真田様とご連絡がとれました。今扉が開きますのでどうぞ中へお入りください」
「あ、ありがとうございます」
大きく開いた自動ドアを潜り、目の前に聳え立つ大きなエレベーターに乗り込んだ。
ぐんぐん登っていくエレベーターはなかなかとまる気配がない。そりゃそうだ、洸夜の部屋は四十一階の最上階。あまりにも登りすぎて身体が宙に浮いているような感覚だ。
チンッと上品な音でとまりエレベーターを降りると広い廊下には濃紅色の絨毯が敷き詰められている。なんだか靴で歩くのが申し訳ないくらいに毛並みが揃っていて崩さないようにゆっくりと歩いた。
0
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
【書籍化により12/31で引き下げ】千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
汐埼ゆたか
恋愛
書籍化により【2024/12/31】いっぱいで引き下げさせていただきます。
詳しくは近況ボードに書きましたのでご一読いただけたら幸いです。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
美緒は生まれてから二十六年間誰もすきになったことがない。
その事情を話し『友人としてなら』と同僚男性と食事に行ったが、関係を迫られる。
あやうく部屋に連れ込まれかけたところに現れたのは――。
「僕と恋をしてみないか」
「きっと君は僕をすきになる」
「君が欲しい」
――恋は嫌。
あんな思いはもうたくさんなの。
・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。. 。.:*・゚✽.。.
旧財閥系東雲家 御曹司『ECアーバン開発』社長
東雲 智景(しののめ ちかげ)33歳
×
東雲商事子会社『フォーミー』総務課
滝川 美緒(たきがわ みお)26歳
・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。. 。.:*・゚✽.。.
「やっと捕まえた。もう二度と手放さない」
※他サイトでも公開中
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
松本ユミ
恋愛
夏木美桜(なつきみお)は幼なじみの鳴海哲平(なるみてっぺい)に淡い恋心を抱いていた。
しかし、小学校の卒業式で起こったある出来事により二人はすれ違い、両親の離婚により美桜は引っ越して哲平と疎遠になった。
約十二年後、偶然にも美桜は哲平と再会した。
過去の出来事から二度と会いたくないと思っていた哲平と、美桜は酔った勢いで一夜を共にしてしまう。
美桜が初めてだと知った哲平は『責任をとる、結婚しよう』と言ってきて、好きという気持ちを全面に出して甘やかしてくる。
そんな中、美桜がストーカー被害に遭っていることを知った哲平が一緒に住むことを提案してきて……。
幼なじみとの再会ラブ。
*他サイト様でも公開中ですが、こちらは加筆修正した完全版になります。
性描写も予告なしに入りますので、苦手な人はご注意してください。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる