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EP2

#29

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  「伊折君、来ちゃった」

   「セリフ自体は良いから、隣の家でやれ。快く上げてもらえるだろう」

 入れないと僕の体操着袋を舐めるとか言い出したので、仕方なくドアを開けたらこの発言。白渡の狂った会話スキルは、かえって尊敬してしまいそうになる。

   「なんでぼっちの冷やかしに来たんだよ。というか連絡しろよ」

   「伊折君の連絡先なんて知らないけど?鳩でも飛ばせばいいのかな」

   「そうだわ、家は知ってるのにな」

 中学時代にストーカーされ見つかった居住地。あの頃からこいつは何度も襲来していたが、今に至るまで連絡先は伝えていなかった。

 しかし、白渡はモラルの欠けた人間だから、勝手に電話番号とかメールアドレスを抜き取っていると思っていた。ああ言っといて、実は知ってるのではないか。

 疑いの目を向けていると、彼女は折り畳まれた携帯を取り出し近付いてくる。

   「いい機会だから、LIMEの交換でもしようよ。ほら、早くアプリ開いて」

   「それガラパゴスじゃん。どうした?逆玉手箱状態?」

   「頭熱暴走してるの?ガラパゴススマートフォンだよ。これだから流行にうるさい若者は」

   「そりゃ失礼。多分LIMEとか言ってるのも古いぞ」

 そう言いつつ、白渡は僕のスマホを軽々と操作し、スカスカの友達欄を1つ埋める。

   『...先輩、よろしく』

   「黒瀬の真似すんな。今ちょっと気まずいから」

 チャットが届く。

 あいつはチャットとかするのだろうか。何にせよ、LIMEを登録したのは白渡の方が先になった。
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