上 下
22 / 27
青年期

二十二話

しおりを挟む

一通り悶え終わって落ち着いてきた後、私は人前でなんという姿をさらしてしまったのかと、今度は二人の前で両手両ひざをついて頭をガックシとうなだれています。
ショールさんは顔が引きつってます。ケイ君はニコニコとさわやか笑顔のままだけど、どこか周りに花が飛んでいる・・・え?なぜに?

それに気づいたショールさんがケイ君を見つつさらに顔を引きつらせていました。
ケイ君の顔見て引きつらせるなんてあり得ない!この素晴らしいイケメンフェイスを見てなんていう表情を!!


「主、落ち着いたか?」

「はい。埋めてください」

「はっ!?いや、なぜに!?」

「人前でこんな恥をさらすなど・・・」

「ほら、主!今のは見なかったことにするから!な、ケイ!ケイもそうだろ!?」

「そうかな?僕は嬉しいよ」

「ちょっ・・・おま「ほんとですか?」・・・えっ?」


落ち込んでいた私に天の光が差し込んできました!
ケイ君に迫って、再確認。嘘じゃないよね?幻聴じゃないよね?


「うん。可愛かった」

「え?私は可愛くなんてありませんよ?」

「僕は君をかわいいと思う。それに、自己紹介がまだだったね。僕はケイ。このうざワンコに弟子入りして武術を磨いてるよ」

「ケイ!その紹介の仕方は酷いぞ!師匠泣いちゃう!」

「これはご丁寧に。私はユウカです。冒険者ランクSで今さっきショールさんに弟子入りさせてもらったところです。特技は家事です。モフらせて下さい!ケイさん!」

「いいよ。僕でよければ」

「ありがとうございます!」


早速モフらせてもらいました!毛並みは良好。ふさふさのサラサラで、触ると毛に埋もれていく感じがたまりません!尻尾も触りたかったけど、性感帯だからと触らせてもらえませんでした・・・次こそは!

完全獣化も出来るそうで、してもらったら完全に北海道犬でした!
もちろん撫でまわしました!もう表情筋が緩みまくってすごいことになっているかしれないけど、構わずにやりました。
もう、ふっさふさでテレビ番組に出てくる、〇さお並みの毛量でした。今は伸ばしているんだそう。
願掛け?確かそんなのおまじないであったよね。

そういえば師匠は?どこ?・・・いた!

師匠を探すと部屋の隅っこに体育座りで座ってました。うじうじしてて、うざい。
キノコが頭から生えそうなくらい、うじうじしてるね笑


「心配しているの?優しいんだね。でも、そんなことより大事なことがあるんだ」

「何でしょう?」


特に何も心配はしていないけど、面白いなぁとしか考えていなかったけど、ケイ君に褒められたから訂正はしない。
頭なでなでとか至福の極み!見とれていいですか!


「どうせ僕は蚊帳の外ですヨーダ・・・ぐすん」


師匠、うるさいです。こっちまで湿ってきそうなので、うじうじしないでくださいと言ったら灰になりました笑
ケイ君と向かい合わせになるように座ると、ケイ君が私の両手を包み込むように握ってきました。ごちそうさまです!・・・じゃなくて!えっ?


「手に何か感じない?」

「?」


どっかのチャラ男のような口説き文句だけど、確かにケイ君と触れているところから、体温とは違う何温かいものが流れ込んでくるのがわかったから、正直に言った。
そしたら、あからさまにホッと息をついてよかったと言ってる。

・・・何がよかったの?私はケイ君と手を握れてうれしいけどさ。武術をしているだけあって、剣ダコができていて男らしい手だなぁ

もし地球にいたら、顔面偏差値も性格もそうだけど親友が飛びつきそうな感じだよね。

親友が今ここにいなくてちょっとホッとしたな。
あの子は根はやさしいんだけど、それが表に出てこないから誤解されやすいんだよね。


「いきなりでごめんね。実は君が僕の運命の番みたいなんだ。僕と繋がってくれるよね?」

「「えっ」」


突然の告白に頭が真っ白になる。
・・・えっ?え?番って何?繋がる?何と繋がるの?

とにかく疑問に思ったことを聞いてみた。


「質問があります」

「うん。何かな?逃がす気はないよ?」

「そうではなく、番って何?繋がるって?」

「知らないの?」

「?」

「獣人は、人間でいうところの結婚が番になるってことだよ。獣人は、百年以上生きるから相手と繋がることで、自分と同じ年月を一緒に過ごすんだよ。獣性も強いから、独占欲もその分強いけどそこは愛し合っているから関係ないよね。番は普通に恋愛を通してくっつく場合と、運命の番に出会ってくっつく場合とがあるんだけど僕の場合は運命の方だったね」

「よかったじゃねぇか。主、こいつは強いから安心してください!・・・主?」


理由を教えてもらって、頭から湯気が出ちゃうんじゃないかってほど顔が真っ赤になった気がする。
ケイ君は涼しい顔でニコニコしながら教えてくれたけど、恥ずかしい!


「お・・・教えてくれて、あ・・・ありがとう」

「どういたしまして。僕からも聞いてもいかな?」

「あい」

「付き合ってる人はいるの?」

「えっ!・・・言わなきゃダメ?」

「できたら教えてほしいな」


嚙んじゃったよぉ!れれれ恋愛話なんかしないから、恥ずかしい!
顔がぁ!熱よ、収まるんだ!円周率とか唱えたら・・・無理!


「いいいい居ません!!」

「それはよかった」

「主のイメージがさっきから粉々に崩れていく・・・」


ショールさん、そんなことは今更ですよ。
森でスローライフを送ることはまだ諦めていないけど、今はしないといけないこともたくさんあるからね!

一人で暮らしていくつもりだったけど、ケイ君はどうなんだろう?

・・・一緒に付いて来てもらえるかな?

迷惑・・・かな?


「師匠、少し席を外してもらっても?」

「ケイ、睨むな。・・・はぁ、分かった分かった。外で鍛錬してるから、終わったら声をかけてくれ。・・・窓を開けるようなことはするなよ?」

「しませんよ。まだ大事に愛でてもっと仲を深めてから、いただくよ」

「お願いだから、せめて俺がいないところでやってくれな?」

「嫌だなぁ~どうして師匠に可愛いユウカを愛でさせなきゃいけないの?何?死にたいの?死に急いでも何もないよ?」

「怖っ!お前は本当にやらかしそうだから、ウソでも冗談でもそう聞こえないんだよ!」

「何かな?なんか言った?師匠?」

「ナンデモナイデス」

「窓を開けるようなこと?いただく?」


何それ?どういうことなのかな?
呆れた顔をしながら私の肩に手を置こうとして、ケイ君に叩き落とされていた。


「師匠?」

「だから睨むなって。・・・独占欲が過ぎると嫌われるぞ」


溜息をつきながら右手を挙げて手を振りながら、家から出ていった。
ケイ君は扉の方をじっと睨んでる。

ショールさんがいなくなった後、ケイ君は自分の膝に私を座らせて両手をガッチリと掴んで、目を合わせた。
こ・・・この体制は恥ずか死ぬ!


「・・・何ですか?」

「僕たちは運命の番だしこれからずっと一緒にいるんだから、敬語は無しだよ」

「私は人付き合いが苦手なので、敬語じゃなくなるのは難しいかもしれません」


ニヤァっと笑いだしたケイ君。

嫌な予感がする・・・

でも、そんな顔してもかっこいいなんて詐欺ですね。悪役にいそうだけど、どっちかっていうと腹黒のほうかもしれない。

・・・ケイ君から出ている黒いものが怖い!!何企んでらっしゃるの!?


「言うまで手は離さないからね。手始めに、ケイって呼び捨てにしてみようか。これくらいならハードルも低いからいけるでしょ?」

「・・・ケイ君」

「はい、お仕置き」

「うっ・・・だ、ダメ・・・待って!そこは!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

作者です

恋愛要素ようやく出てきましたよ!
裏話とかも作成中なので楽しみにしててください!

ツイッター始めました!
月光@アルファポリスで出てくるのでよかったら、フォローお願いします!

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

神の盤上〜異世界漫遊〜

バン
ファンタジー
異世界へ飛ばされた主人公は、なぜこうなったのかも分からぬまま毎日を必死に生きていた。 同じく異世界へと飛ばされた同級生達が地球に帰る方法を模索している中で主人公は違う道を選択した。 この異世界で生きていくという道を。 なぜそのような選択を選んだのか、なぜ同級生達と一緒に歩まなかったのか。 そして何が彼を変えてしまったのか。 これは一人の人間が今を生きる意味を見出し、運命と戦いながら生きていく物語である。

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

世界を滅ぼす?魔王の子に転生した女子高生。レベル1の村人にタコ殴りされるくらい弱い私が、いつしか世界を征服する大魔王になる物語であーる。

ninjin
ファンタジー
 魔王の子供に転生した女子高生。絶大なる魔力を魔王から引き継ぐが、悪魔が怖くて悪魔との契約に失敗してしまう。  悪魔との契約は、絶大なる特殊能力を手に入れる大事な儀式である。その悪魔との契約に失敗した主人公ルシスは、天使様にみそめられて、7大天使様と契約することになる。  しかし、魔王が天使と契約するには、大きな犠牲が伴うのであった。それは、5年間魔力を失うのであった。  魔力を失ったルシスは、レベル1の村人にもタコ殴りされるくらいに弱くなり、魔界の魔王書庫に幽閉される。  魔王書庫にてルシスは、秘密裏に7大天使様の力を借りて、壮絶な特訓を受けて、魔力を取り戻した時のために力を蓄えていた。  しかし、10歳の誕生日を迎えて、絶大なる魔力を取り戻す前日に、ルシスは魔界から追放されてしまうのであった。

転生獣医師、テイマースキルが覚醒したので戦わずしてモンスターを仲間にして世界平和を目指します

burazu
ファンタジー
子供の頃より動物が好きで動物に好かれる性質を持つ獣医師西田浩司は過労がたたり命を落とし異世界で新たにボールト王国クッキ領主の嫡男ニック・テリナンとして性を受ける。 ボールト王国は近隣諸国との緊張状態、そしてモンスターの脅威にさらされるがニックはテイマースキルが覚醒しモンスターの凶暴性を打ち消し難を逃れる。 モンスターの凶暴性を打ち消せるスキルを活かしつつ近隣諸国との緊張を緩和する為にニックはモンスターと人間両方の仲間と共に奮闘する。 この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも連載しています。

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...