キツネと龍と天神様

霧間愁

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想い返す龍曰く

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 男が振り返ると一本の路が出来上がっていた。

 元々腰まであるような草が生えていた。かきわけ、地面を確かめながら歩いてきた。
 何度も何度も、毎日毎日、ここを通った。

 いつの間にか草は歩く場所を譲っていくれていた。
 いつの間にか道は踏み固められて歩きやすくなっていた。
 いつの間にか誰かとすれ違うようになっていた。

 いつの間にか道は広くなっていて、いつの間にか道は舗装されていて、いつの間にか道は歩みやすくなっていた。

 男は進み始めながら思う。
 これは果たして自分の功績だろうか?
 男は道を広くしたわけでもないし舗装したわけでもないのだ。
 毎日歩いていただけだ。

 誰かが男に笑う、「お前の功績だ」と。
 男はそれを聴いて「そうか」と答えた。

 男は今日も歩いていく。
 それだけだった。
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