キツネと龍と天神様

霧間愁

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嘆声あげる天神曰く

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 いつでも泣いている女がいたのだわ。
 女には夫がいて、男はいつも笑っていたのだわ。

 「家に帰って辛気臭くなるだろう。もっといい妻になる人がいるはずだ」と友人に言われ、男は首を振った。
「そんなことはない、彼女はよく泣くけれど、それで困ったことは何もない」
 それを聞いた妻の女は泣きながら男に感謝した。
 男は女の背中を叩いてあやしながら、嗤う。

 「目の前で泣かれると気分が滅入る。違うかい?」と友人に問われ、男は丁寧に否定した。
「そんなことはない、彼女はよく泣くけれど、それを気にしたことはない」
 それを聞いた妻の女は泣きながら男に懇願した。
「私を棄てないで下さい」
 男は女を抱きしめながら、「棄てませんよ」と頭を撫でた。

 男の肉親が亡くなった。
 「良い両親だった」と男が漏らす。女もそれに同意した。
 男は微笑み、女は泣いていた。
「どうして泣かないの?」
 女は男に問う。
 男は女に感謝しながら、嗤う。
「僕の代わりに、君がこんなにも泣いてくれるからだよ」

 思わず女は男を抱きしめた。
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