キツネと龍と天神様

霧間愁

文字の大きさ
上 下
264 / 366

笑う天神曰く

しおりを挟む
「知ってますか。笑わない猫と死神の話を」
 画面の中の少女が笑う。
 同僚もドン引くほどの速度で今日中の仕事を終わらせ帰宅し、缶ビールと夕食を摂りながら推しVTuberのリアタイ配信。
 彼女が言った言葉にドキリとして箸が止まった。

 「これは私が妄想した空想で、夢見がちな一人な女子としてのただの矜持です」と推しが唇を横に結ぶ。

 そして彼女は語りだした。
 一匹の猫が死神に唆されて二本足で立ち上がり、野良犬たちの世話係になったが逃げだして、同族に教導していた。が、死神に騙されて人に拾われ、そこで普通の猫のフリをしながら文字と言葉を覚えてからこっそりと逃げ出し、そのまま旅に出て、欧州で回教を知る。死神に騙されないように博学を学び、鉄を打って己の剣を作り上げ、死神を探すためにまた旅に出る。途中、いくつかの魔法を学び、死神と再会して二人で安息の地を求めてまだ旅をし続けている物語。

「彼らはいつも微笑んでいます。でも、彼らが心から笑えるのは安息の地にたどり着いたとき」
 
しおりを挟む

処理中です...