キツネと龍と天神様

霧間愁

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癒し待たれる龍曰く

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 とある猫がいた。

 その猫は女に化けることを好んだが、その場所には猫の姿で行くことにしていた。
 そのお気に入りの場所は、公園の陽の射すベンチ。
 そこに座って、ただボンヤリとする。
 することなど何もない。
 ただ体を温めるのだ。

 ある時、男が座っていた。
 少しムッとしたが、まぁ男が先に座っていたのだ、と諦めて立ち去った。

 次に行くとまた、その男が座っていた。
 仕方ないので、男の隣で蹲った。
 眠気でうつらとしていると、男が優しく撫でてきた。
 心地よくて眠ってしまう。
 目が覚めると、男はいなくなっていた。
 少しイラっとする。

 今度は、ついて行くことにした。


 ある日、女の姿で男の隣に座ってみた。
 話しかけようか迷う。
 人の姿の猫を見て、男は立ち去った。
 猫は腹もたてたが、胸の奥が痛くなった。


 今日は猫の姿で男の隣に行こうと決めた。
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