キツネと龍と天神様

春を待つ天神曰く

　その令嬢は夢見がちだ。




　VLiverとなって、数週間。
　事務所と相談して、活動を休止することになった。
「みなさまにお知らせ」というタイトルで、配信予約枠をとり、SNSで宣伝をうつ。
　すぐさま反響があった。

　ストリーミング・レコーディングソフトウェアの配信開始ボタンを押した。
　すると、配信サイト側の配信可能ボタン色をおびる。
　何度もやってきた行為なのに、今日は初配信よりも緊張していた。
「この度は、突然の報告で申し訳ありまん……」
　かんだ。深呼吸をしてもう一度、仕切り直し話始める。
　受験勉強に専念するために休止する事を発表する。そして受験勉強の息抜きにVLiverに応募して受かってしまった事、VLiverが好きだから自分はそれを逃げ場所にしたくないと思った事。
「待っていてなんて、身勝手なことを言ってすいません。ただ、わたしは頑張ります。そして戻ってます。必ず」




　配信終了のボタンを押す。
　令嬢は自分の頬を叩く。進学もしてVLiverもするのだ、と決意する。