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踪跡探しの龍曰く
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その男は幸運に恵まれた人生だった。
突然、会社から解雇を言い渡された。優秀な部類とは言わないが、周りに迷惑が掛かるような失敗もせず、それなりに成果を上げてきたつもりだった……、が、それはただ単に自己評価なだけだったのかもしれない。
溜息をついて、炭酸水を飲む。昼間の公園のベンチに独り。
一応、不当解雇と申し立てをしたが、あまり芳しくない。
(金稼がないとな)
退職金は少なくない。暫く遊んでも暮らしていけるが、男は持て余した時間をどうすればいいか判らなかった。
(商売でも始めてみようか……、それとも資格を取って……)
ここ数日、ベンチで繰り返されている思考に飽きていたが、答えはまだ出ていない。
「ここよろしいですか?」
一人の老人が男の隣に座り、唐突に老人が話し始めた。
男は驚いたが、ただ黙ってそれを聴いて、頷いて、同情し、褒めた。
言い終わった老人は礼を言い、男に時計を手渡した。
「すっきりしたよ、ありがとう。その時計は時間を止めれる時計らしい。本当かどうかは知らないが、ね」
突然、会社から解雇を言い渡された。優秀な部類とは言わないが、周りに迷惑が掛かるような失敗もせず、それなりに成果を上げてきたつもりだった……、が、それはただ単に自己評価なだけだったのかもしれない。
溜息をついて、炭酸水を飲む。昼間の公園のベンチに独り。
一応、不当解雇と申し立てをしたが、あまり芳しくない。
(金稼がないとな)
退職金は少なくない。暫く遊んでも暮らしていけるが、男は持て余した時間をどうすればいいか判らなかった。
(商売でも始めてみようか……、それとも資格を取って……)
ここ数日、ベンチで繰り返されている思考に飽きていたが、答えはまだ出ていない。
「ここよろしいですか?」
一人の老人が男の隣に座り、唐突に老人が話し始めた。
男は驚いたが、ただ黙ってそれを聴いて、頷いて、同情し、褒めた。
言い終わった老人は礼を言い、男に時計を手渡した。
「すっきりしたよ、ありがとう。その時計は時間を止めれる時計らしい。本当かどうかは知らないが、ね」
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