キツネと龍と天神様

冷やかす龍曰く

　寝坊した男、というのはなかなかに滑稽じゃな。


　微睡みの中で、時計を見て、飛び起きる。
　いつものルーティーンの中から必要最低限の段取りを思考するのだ。
　熱いシャワー、コーヒー、着替え、歯磨き、洗濯。
　かかる時間を思い出しながら、工数とその作業時間を考えた。
　幾つかのルーティーンから、工数を省く。ただ省きすぎると調子が狂って、今日の業務に支障が出る。
　ここは難しいところだ。

（いけるか？　いや、できるのか？）

　男は自分に問いただしながら、小さな自宅の中を歩き回る。
　まずはシャワーを浴びた。頭を回転させるのだ。
　準備と段取りの順番を組み替えて、最低工数かつ最速の段取りをくみ上げる。
　完璧だ、と男はシャワーを止めた。

（これなら、遅刻もしない。いつものルーティーンもおおよそ省かないで済む）

　男が遅刻しない時間に自宅を出た。
　と、会社から電話。

「おはようございます。え？　今、ですか？　移動しているところですよ。まだ、自宅付近ですけど。リモート、あ、そうですか。了解しました。えっと、じゃ、帰りますね。では、後ほど。失礼します」


　りもーとって何じゃ？