キツネと龍と天神様

霧間愁

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未来を思い出す天神曰く

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 曲芸団サーカスに飼われる一匹の獅子。
 年寄りの獅子は、今日も眠っている。

「アナタはいつもそうやって寝てるの?」
 迷い込んだ客の子供が、獅子に訊ねた。
「そうだね、本番があるまで、こうやって眠るのさ」
 獅子が眼も開かずに答えた。
「狭くない?」
「寝るには十分」
 欠伸。
「まぁるい舞台でアナタが恐ろしく吠えているのをみたわ」
「あぁ、あれはね。そうしろと言われているからそうしてるだけだよ」
「アナタを使役する人の鞭が当たって痛そうだったわ」
「あれはね、当たってないんだよ。痛がってるフリさ」
 子供は不思議な獅子を見ていた。
「この檻の中は、私の王国だ。どんな姿勢で寝ても怒られないし、何をしろとも言われない。まぁ檻の外は違うがね。君は君の王国を持っているかね?」
 子供はあははと笑う。
「私は、持ってないわ」
「じゃあ、持つと良い。それを守るために強くも弱くもなれる」
「弱くはなりたくないかな」
「なら、強くなればいい」
 そう言うと獅子は、眠ってしまった。
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