キツネと龍と天神様

惚気まじり龍曰く

　寝てばかりで、つまらん漢だ。と嬶が言いよった。

　気持ちよく寝ぼけながら、その愚痴が耳に入ってくる。
　儂、なんか怒らせたか、頭の片隅で思いだしながらと寝たふりを続けることにする。嬶はよく笑い、よく働く。儂のところで預かっている巫女や下男下女のまとめ役もやってくれている。
　もったいないくらいに器量もいい。
　寝てばかりいるこの儂には勿体ない女だ。

　ただ愚痴の一つで怒っては、いかん。小言の一つも言いたくなることがあるだろう。
　と、思ってみたものの嬶の小言がつらつらと出てくる出てくる。堪らず、うっすらと眼をあける。

　よう寝てたもんだ。と、笑う嬶。
　うん、よう寝れた。と、瞼を閉じようとする儂。

　お前のおかげじゃ。と儂。
　ほう。なら、なんかあるじゃろ？と、嬶。

　考えてみても、欲しいものがあるとは聴いてない。
　
　挑発的な微笑みの嬶。

　ひと舐め。

　すると、ぺちりと鼻先を嬶に叩かれた。
　ひどく優しく丁寧に。