キツネと龍と天神様

霧間愁

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回想する龍曰く

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 身分違いの恋じゃな。
 その女は、富豪の息子と恋に落ちた。双方の親から猛反対を食らった二人は、無理心中をした。

 天神に突然に呼び出されて、来てみれば死にかけの男女が転がっとった。
 察するにそんなことなんじゃろうな、と思っとった。

 絶え絶えの二人の身体は、生命が消えようとしとるのは、ようわかった。天神は、女の身体の生命力を男の方に注いで男を生かそうとさせる。
 天神の指示通り男の記憶の中から、この女のことを消す。

 この男は別の女と番になって子孫を作らにゃならんらしい。縁を繋ぐ仕事というのは、よく解らんがまぁ、それが仕事なら仕方ない。

 そうして女は死んだ。
 天神は女の魂と記憶を毛並みの良い雌犬、成犬にもなってない子犬に放り込む。

 雌の子犬が男の顔を舐めると、目を覚まして帰路についた。子犬は男の後をついていく。
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