そして鬼と成る

文月くー

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一軍をかけた試合

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「用意はいいな?」

「「はい!」」

「それでは、始め!」

出来レースのようなものだが、しっかりとやろう。
すると、二年エースが先に動いた。

「うぉぉぉぉぉ!!俺に力をぉぉぉぉ!!『術式展開』!!」

先輩の足元に術式が展開される。
そして、

『獣人霊装!!』

術式が段々上へと上がっていき、上がりきると、獣人へと成った先輩が姿を現した。
今度はすごいスピードで走る。
あらかた一気に攻めるつもりなのだろう。
しかし、そんなものでは俺には勝てない。

「先輩、そんなだから良いところ二軍エース止まりなんですよ。」

と、先輩を煽る。
すると、ますます速度が上がる。
迫る拳。
だが俺はまだ術式すら展開していない。
誰がどっからどう見ても俺の負けが明白だろう。
しかし、本当はそうではない。
そもそも赤子相手に本気になる大人がどこにいる?
それと同じだ。
つまりは俺が本気まじでやったら、ただのイジメにしかならないから、わざと、術式を展開していないのである。
俺は迫る拳を軽く受け流し、相手の勢いを利用してバランスを崩して、がら空きになった鳩尾みぞおちに、部分霊装を施した拳を思いっきり打ち込んだ。
それでも体力値が10程度残ってしまったので、そこから回し蹴りに移して削りきった。
結果的に、俺が勝ったのだ。


********************


「さて、東方。お前は負けたわけだが、今回の件は少し調子に乗りすぎだ。よって、三軍からやり直せ。以上だ。」

と、裁きが下った。
いいざまだ!
っとは思ってないですけど…?!
確かに調子に乗んな、バーカ。

「では、各場所に分かれて練習を始めろ」





・・・・・・
・・・・
・・


「今日の練習はこれで終了だ。気を付けて帰るように。」

今日は疲れたなー。
そう思いながら、帰ろうとすると、黒神さんに呼び止められた。
なので、とりあえず着いて行った。


******


部屋に入ると、黒神さんが聞いてきた。

「月詠くん。君のお父さんって、海桐真かいどうまことなのかい…?」

俺は少し考えてから答える。

「…そうですよ。俺の父は海桐真です。」

それを聞いた黒神さんは、口を開く。

「…一つだけ、質問いいかな?」

「はい。」

「どうして、竜人を選ばずに鬼人を選んだんだい?」

少しの間の沈黙のあと、俺は小さくこう答えた。

「いや、だったんです。海桐真の子供としてしか見てもらえず、月詠雫として見てもらえないことが。」

と。
そして。続けてこう答えた。

「だからと言って、東さんの事が嫌いな訳じゃないですよ?むしろ尊敬すらしていますよ。…だからこそ、父さんとは違った道で、月詠雫として、父さんを超えたい。だからです。」

黒神さんにはそれが、わかったようで、

「そうだね。ここにいるのは誰でもない、月詠雫なんだ。」

と、理解してくれた。そんなこんなで、俺の父がキングだと言うことは、秘密と言うことにしてもらったのだった。

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