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動き出す復讐者

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「お疲れさま。どうだった?二年生の授業は」

「普通だよ。従兄さん。
で?母さんを殺したグループってのは?」

俺は単刀直入に聞く。
もちろん、俺達がいるこの教室は結界が張られているので、気付かれる事はないし、声も漏れることはない。

「戦略的戦力序列第5位、ローウェン=シェシフィール率いる、つまりシェシフィール公爵の派閥だよ。」

「校長の父親か…。」

「うん。」

なるほど。要するに、この学校を敵に回すってことか。

「フッ、面白い。従兄さん、明日は丁度休みだ。仕掛けるよ?まずは、【ポーン】からだ。」

そして嗤う。

「御意」

従兄さんは、そう答えると、影に溶け込むように消えていった。

公爵としての優越に浸っていられるのも今のうちだ。
せいぜい楽しんでおくと良い。
貴様等がこれから俺達と行うのは、一手間違えれば、〝死〟に直結している、ただのゲームだ。

シルフィアスは、たった一人しかいない静かな教室で、まるで自分自身に刻まれた恐怖を紛らわせるように、嗤い続けたのだった。




―――――――――――――――――――――――――――




「シル、準備が整ったよ。」

「そうか。
では、これより、我々は、シェシフィール公爵を討つ為の第一手を打つ。
さぁ、【ポーン】狩りの開始だ」

『はっ!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「どういう事だ?兵士が皆殺しにされただと?」

ここはシェシフィール公爵領地のシェシフィール公爵が住まう邸宅だ。

「は、はい…!!その通りで御座います…!」

ローウェン=シェシフィール公爵は、考える。

なぜ、兵士が?と。

しかし、すぐに理解する。
これは、命懸けのゲームなのだと。
さらに、これはチェスなのだと言う事も分かった。
それらが分かると同時にローウェンは久々に背筋が凍りついた。
なぜなら、ローウェン自身、圧倒的な戦術で、数多の戦場で功績を重ね、公爵まで上り詰めた歴戦の英雄である。
そして、ローウェンは、相手の戦術を読むことが得意だった。
そのローウェンが、少し、戦術を読めなかったのだ。
ローウェンの本能が告げている。

〝今回の敵は、今までにない程の敵だ〟

と。
すぐさま、ローウェンは、今の戦場を、チェス盤として捉える。
そして、自分たちがどう動けばいいかと、考えるのだった。


―――――――――――――――――――――――――――


一方、シルフィアスは自室でチェス盤を広げ、相手の【キング】を、手の上で弄ぶ。
シェシフィール公爵を弄ぶように。

「残り8人。」

そう呟きながら、自軍の【キング】を前に進めるのだった。
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