山のうんどうかい

こぐまじゅんこ

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サンタさんと空飛ぶ自転車

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 サンタさんは、こまっていました。
 クリスマスまでに、遠い日本に行かなければいけないのに、ソリをひいてくれるトナカイさんが、かぜをひいてしまったからです。
「サンタさん、ぼく、かぜをひいててもがんばってはしります!」
 トナカイさんは言うけれど、ゴホンゴホンせきがとまりません。「いやいや、ムリしちゃいかん。日本にはなにかほかの方法で行くことにするよ」
 サンタさんは、トナカイさんをベッドにねかせて言いました。
「うーん、なにかいい方法はないかなぁ」
 サンタさんは、ずっと長いこと考えていました。
「そうだ! ハカセに相談しよう」
 ハカセは、サンタさんのともだちで、なんでも発明して作ってくれる天才です。
「そうだなぁ。空飛ぶ自転車を作ってあげるよ」
 ハカセはそう言うと、設計図を書きはじめました。

 明日は、クリスマスイブ。
 サンタさんのところに、ハカセから空飛ぶ自転車がとどきました。
 サンタさんは、おそるおそる自転車に乗りました。
 プレゼントのいっぱい入った袋は、前かごにいれます。
 ペダルを、ぐいっとふみこみました。
 すると、ふわりと自転車がうかびました。

 ぐいっ ぐいっ

 ペダルをふむと、自転車は空を飛び始めました。
「うわー、こりゃすごいや」
 サンタさんは、いっしょうけんめい自転車をこぎます。
 いくつかの海をこえ、やっと、クリスマスに日本につきました。
 ところが、サンタさんは、あんまりいそいで自転車をこいだので、まだお日様がニコニコわらっているときに
ついてしまったのです。
 男の子が、空を指さして言いました。
「あれ、なぁに?」
 サンタさんは、あわてて雲にたのみます。
「雲さん、雲さん、わしをかくしておくれ」
「ほいきた」
 さぁーっと、白い雲がやってきて、サンタさんをかくしてくれました。
 しばらく、雲にかくれて自転車をこいでいると、しだいに空がくらくなってきました。
 一番星がキラリと顔をだしました。
 雲さんが言います。
「もうだいじょうぶだね」
 サンタさんは、うなずきます。
「ありがとう。たすかったよ」
 それから、子どもたちの家に向けて走り出しました。

 クリスマスの次の日。
 自転車をこいで、ちょっぴりやせたサンタさん。
 雲さんにかくれながら、空の上をゆっくりと自転車をこいで帰っています。

 日本の子どもたちが、プレゼントをあけてよろこんでいる笑顔をうれしそうにながめながら……。
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