37 / 73
第2章
時が満ちれば 6
しおりを挟む
「さぁこっちへ来い」
寝所の隣室は近衛隊の控えの間になっている。此処にはいつもならば交代要員の近衛隊の部下がいるのに、今日は赤い女が王様を診察するのを見られないように人払いをしたことを後悔した。
なんてことだ。今、ここには王様、赤い女、ジョウ、そしてキチと俺しかいないなんて。俺が抗えば全てが明るみに出てしまう。悔しい……理不尽だ。唇を噛みしめて俯く俺の腕をキチは掴み、強引に控えの間へ押し込む。
「うっ……やめろ! このようなことは」
「知ってるんだぞ、前王とお前の関係をすべて。唇を奪われる位、大したことじゃないだろう? 一度お前のその綺麗な形の唇を食べてみたかったのだ。さぁ寄こせ!」
壁に抑えつけられたまま唇を奪われる。
「あっ……」
耐えねば!この位のこと、なんでもない。そう自分に言い聞かせるが全身に悪寒が走る。
くちゅくちゅ……
卑猥な音が密室に響く。顔を背けようとしても顎を押さえつけられ、そしてもう片方の手で首を押さえつけられる。冷たい氷のような手だ。
苦しい……生理的な苦しみと精神的な嫌悪感から、不覚にも涙が目じりに浮かんでくる。
くそっ!こんな奴。本気で抗いたい。それが出来ない状況なのが、もどかしく悔しい。
「ほぅ~やはり期待通り、お前は美味しいな。こちらの味はどうなんだ?」
首を押さえつけていた手が、そのまま下肢へと伸びてくる。
「やめっ! 」
やめろ。このままではまずい。身を捩り抵抗するが、キチの氷のような手は俺を執拗に追いかけてくる。
ジョウ……ジョウ!
心の中で呼ぶのは俺の想い人。早く俺を呼んでくれ!頼む!これ以上こんな男に触れられるのは御免だ。
「もう……おやめください。お戯れはこの辺でおやめに」
努めて冷静に言うが、キチは興奮しきっており、その手は下衣の中の素肌を辿り始めていた。
吐きそうだ! もう耐えられないっ!
「やめていいのか。それならすぐに王の部屋へ通せ」
「……」
「ふふふっ律儀な男だな。美しい近衛隊長さん、そんなに王様が大事か。今度の王はお前が抱くのか」
「くっ……失礼なことを! おやめください。不愉快です」
「ははっ!どこまでも気丈だな。それがまたいい。では私が、飼いならされたお前の躰がどこまで我慢できるか、試してやろうじゃないか」
一気にキチの冷たい手が忍び込み、直接腹を撫でられ、腰を滑るようにさすられると背筋が凍るような心地がして、冷汗が一筋流れた。
もう限界だ──
手が小刻みに震えるとともに指先から火花が散り出す。雷光を使えば逃れられるが、この男は王家の一族であるから、それは叶わぬ。だが、もうこのような目に遭うのは嫌だ。
ジョウだけにしか許さないはずだった。
清めてくれた俺の躰。
大切にしたい己の躰。
悔し涙が込み上げてくる。
寝所の隣室は近衛隊の控えの間になっている。此処にはいつもならば交代要員の近衛隊の部下がいるのに、今日は赤い女が王様を診察するのを見られないように人払いをしたことを後悔した。
なんてことだ。今、ここには王様、赤い女、ジョウ、そしてキチと俺しかいないなんて。俺が抗えば全てが明るみに出てしまう。悔しい……理不尽だ。唇を噛みしめて俯く俺の腕をキチは掴み、強引に控えの間へ押し込む。
「うっ……やめろ! このようなことは」
「知ってるんだぞ、前王とお前の関係をすべて。唇を奪われる位、大したことじゃないだろう? 一度お前のその綺麗な形の唇を食べてみたかったのだ。さぁ寄こせ!」
壁に抑えつけられたまま唇を奪われる。
「あっ……」
耐えねば!この位のこと、なんでもない。そう自分に言い聞かせるが全身に悪寒が走る。
くちゅくちゅ……
卑猥な音が密室に響く。顔を背けようとしても顎を押さえつけられ、そしてもう片方の手で首を押さえつけられる。冷たい氷のような手だ。
苦しい……生理的な苦しみと精神的な嫌悪感から、不覚にも涙が目じりに浮かんでくる。
くそっ!こんな奴。本気で抗いたい。それが出来ない状況なのが、もどかしく悔しい。
「ほぅ~やはり期待通り、お前は美味しいな。こちらの味はどうなんだ?」
首を押さえつけていた手が、そのまま下肢へと伸びてくる。
「やめっ! 」
やめろ。このままではまずい。身を捩り抵抗するが、キチの氷のような手は俺を執拗に追いかけてくる。
ジョウ……ジョウ!
心の中で呼ぶのは俺の想い人。早く俺を呼んでくれ!頼む!これ以上こんな男に触れられるのは御免だ。
「もう……おやめください。お戯れはこの辺でおやめに」
努めて冷静に言うが、キチは興奮しきっており、その手は下衣の中の素肌を辿り始めていた。
吐きそうだ! もう耐えられないっ!
「やめていいのか。それならすぐに王の部屋へ通せ」
「……」
「ふふふっ律儀な男だな。美しい近衛隊長さん、そんなに王様が大事か。今度の王はお前が抱くのか」
「くっ……失礼なことを! おやめください。不愉快です」
「ははっ!どこまでも気丈だな。それがまたいい。では私が、飼いならされたお前の躰がどこまで我慢できるか、試してやろうじゃないか」
一気にキチの冷たい手が忍び込み、直接腹を撫でられ、腰を滑るようにさすられると背筋が凍るような心地がして、冷汗が一筋流れた。
もう限界だ──
手が小刻みに震えるとともに指先から火花が散り出す。雷光を使えば逃れられるが、この男は王家の一族であるから、それは叶わぬ。だが、もうこのような目に遭うのは嫌だ。
ジョウだけにしか許さないはずだった。
清めてくれた俺の躰。
大切にしたい己の躰。
悔し涙が込み上げてくる。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
青の命路
憂木コウ
BL
輪廻転生もの。愛する人を追い続ける魂の物語。ヤンデレ・闇堕ち。
碧眼の美少年・ユウリは、村の人柱にされそうになっていたところを、盗賊の少年・ナギに助けられる。
迫害された過去のせいで人生を諦めていたユウリだが、ナギとその仲間たちに出会い、自分の居場所を見つけていくことに。
そして、不器用ながらも率直な愛情を向けてくるナギに、徐々に心惹かれていく。
しかし、素朴な愛を交わし合う二人に、突如悲劇が訪れる。
かけがえのない人と過ごす時間を失ったユウリの孤独な魂は、生まれ変わってもナギの魂を探し求める。何度も、何度も……。
果たしてユウリが再びナギと結ばれる日は、やって来るのか――
※軽いですが性描写あり。また、物語の性質上、登場人物が何度も死にます。苦手な人はお気をつけください。
※「ムーンライトノベルズ」(小説家になろう系列)にも掲載。https://novel18.syosetu.com/n8104fj/
憧れはすぐ側に
なめめ
BL
高校生の時に友人から受けたトラウマから恋愛にも人間関係にも消極的になってしまった早坂渉太。好きな人ができても必要以上に踏み込めず胸にしまっておくので精一杯だった。そんな渉太でも大人気アイドルの浅倉律に憧れを抱いていた。
ある日好意を寄せている先輩に誘われたサークルの飲み会で先輩の友達の麻倉律仁という男に出会う。
律と名前が似ているだけで中身は強引でいい加減な先輩に振り回されながらも·····実は先輩には秘密があって·····。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
記憶の欠片
藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。
過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。
輪廻転生。オメガバース。
フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。
kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。
残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。
フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。
表紙は 紅さん@xdkzw48
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる