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第2章
赤い髪の女 3
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「一体どうしたらいいんだ!俺は!」
弟のように大切な王様を失うかもしれないという恐怖で躰までも、大きくガタガタと震えだす。
「ヨウ、落ち着くんだ」
取り乱す俺をジョウは柱にドンと押さえつけ、強引に口づけしてきた。
「はうっ」
俺の肩はまだカタカタと小さく震えていたが、ジョウの温かい息遣いと唇の柔らかさを直に感じると、心の冷静さが戻って来た。
だが……冷静になればここが王宮内だということを思い出し、慌ててジョウの胸を押し離れようともがいた。
「ジョウ!こんな所では駄目だ! 誰かに見られたらどうする?」
「ヨウ、落ち着いたか」
「あっああ、すまぬ」
確かに震えは止まった。
「取り乱してはいけない。ヨウがしっかりしないといけないんだ」
「そうだな……すまなかった」
「とりあえず王様には虫の毒だということにしよう」
「分かった」
「少し調べたいことがあるから、今宵医局にきてくれるか」
「行くよ」
「それじゃヨウは護衛に戻れ、いつも通りにしろ、誰にも悟られるな」
「分かった」
****
何とか冷静さを取り戻し王の元へ戻ると、すぐに呼ばれた。王様は無邪気に聞いてくる。
「ヨウ!ねぇジョウの診立ては?」
ふぅと息を吐き、出来る限り冷静に平静を装い回答した。
「どうやら悪い虫の仕業のようです。少し毒を持っているらしいので、あとで処置をしましょう。お薬も塗りましょう」
「あぁ良かった。何か悪い病気かと思ったよ。ヨウ、心配した?僕のこと」
「もちろんでございます」
王様は小さな子供のようなあどけない笑顔を浮かべ、俺を手招きする。
「ヨウ、ここに座って、ねぇ甘えてもいい?」
恐れ多いことと分かっているが、横に座り王様の肩をそっと支えて差し上げる。
「どうされました?」
「僕には母上も父上ももういないから、寂しいんだ。こういう時はとても……そうだ、内官に聞いたらヨウも一緒なんだって?」
「はい……もう誰もおりません。二人とも病死しました」
「じゃあヨウは怖い夢を見た時はどうしているの?」
「えっ」
「一人は寂しかったろう」
「ええ……まぁ」
「一人で泣いたことはある?」
「……そんなことしません。武将ですから、耐えるのみです」
「本当にそうなの?」
無邪気な質問にドキリとする。
「今も……今も一人で耐えているの?」
「……」
今は違う。ジョウがすぐ傍にいてくれる。心が乱れそうになると、いつもジョウが俺を温めてくれる。
「……ヨウ?」
王様が愛嬌のある澄んだ眼でじっと顔をみつめてくる。
「なんでしょうか。王様」
「あのね……最近……ヨウが僕のお兄様にだったらいいのになぁって思うんだ」
「王様そんな滅相もないことをおっしゃってはなりません」
「ここだけだから、兄弟だったら寂しい時に慰めあえるだろう?ヨウにだって寂しくて泣きたいときがあるはずだから……」
「王様……」
その言葉を受けた途端、鼻の奥がツンとし涙がじわっと込み上げてきた。
その涙が零れ落ちないように必死に堪えた。こんな胸が詰まるような感情はいつぶりだろう。
弟のように大切な王様を失うかもしれないという恐怖で躰までも、大きくガタガタと震えだす。
「ヨウ、落ち着くんだ」
取り乱す俺をジョウは柱にドンと押さえつけ、強引に口づけしてきた。
「はうっ」
俺の肩はまだカタカタと小さく震えていたが、ジョウの温かい息遣いと唇の柔らかさを直に感じると、心の冷静さが戻って来た。
だが……冷静になればここが王宮内だということを思い出し、慌ててジョウの胸を押し離れようともがいた。
「ジョウ!こんな所では駄目だ! 誰かに見られたらどうする?」
「ヨウ、落ち着いたか」
「あっああ、すまぬ」
確かに震えは止まった。
「取り乱してはいけない。ヨウがしっかりしないといけないんだ」
「そうだな……すまなかった」
「とりあえず王様には虫の毒だということにしよう」
「分かった」
「少し調べたいことがあるから、今宵医局にきてくれるか」
「行くよ」
「それじゃヨウは護衛に戻れ、いつも通りにしろ、誰にも悟られるな」
「分かった」
****
何とか冷静さを取り戻し王の元へ戻ると、すぐに呼ばれた。王様は無邪気に聞いてくる。
「ヨウ!ねぇジョウの診立ては?」
ふぅと息を吐き、出来る限り冷静に平静を装い回答した。
「どうやら悪い虫の仕業のようです。少し毒を持っているらしいので、あとで処置をしましょう。お薬も塗りましょう」
「あぁ良かった。何か悪い病気かと思ったよ。ヨウ、心配した?僕のこと」
「もちろんでございます」
王様は小さな子供のようなあどけない笑顔を浮かべ、俺を手招きする。
「ヨウ、ここに座って、ねぇ甘えてもいい?」
恐れ多いことと分かっているが、横に座り王様の肩をそっと支えて差し上げる。
「どうされました?」
「僕には母上も父上ももういないから、寂しいんだ。こういう時はとても……そうだ、内官に聞いたらヨウも一緒なんだって?」
「はい……もう誰もおりません。二人とも病死しました」
「じゃあヨウは怖い夢を見た時はどうしているの?」
「えっ」
「一人は寂しかったろう」
「ええ……まぁ」
「一人で泣いたことはある?」
「……そんなことしません。武将ですから、耐えるのみです」
「本当にそうなの?」
無邪気な質問にドキリとする。
「今も……今も一人で耐えているの?」
「……」
今は違う。ジョウがすぐ傍にいてくれる。心が乱れそうになると、いつもジョウが俺を温めてくれる。
「……ヨウ?」
王様が愛嬌のある澄んだ眼でじっと顔をみつめてくる。
「なんでしょうか。王様」
「あのね……最近……ヨウが僕のお兄様にだったらいいのになぁって思うんだ」
「王様そんな滅相もないことをおっしゃってはなりません」
「ここだけだから、兄弟だったら寂しい時に慰めあえるだろう?ヨウにだって寂しくて泣きたいときがあるはずだから……」
「王様……」
その言葉を受けた途端、鼻の奥がツンとし涙がじわっと込み上げてきた。
その涙が零れ落ちないように必死に堪えた。こんな胸が詰まるような感情はいつぶりだろう。
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