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その後の章
季節の番外編♡ハロウィン・ハネムーン 1
しおりを挟む俺の実家を改装してふたりでスタートしたホテル経営は、順調に軌道に乗りだしていた。
季節もあれから一巡りし、再び紅葉の季節を迎えている。ここソウルでは日本よりも季節が1カ月早く進むので、街の街路樹は既に鮮やかに色付いて銀杏の樹は黄金色の輝きを増していた。
いい季節だ……世界が幸せに満ちている。
それにしても1年があっという間だったな。去年の夏……俺からの向日葵のプロポーズを優也に受けてもらい(きっかけは優也の方からだったが)僕達は秋に密かに結婚した。
といっても法的に何か出来るわけではないので、表向きはただの共同経営者だ。だがそれでいい。一向に構わない。
一番重要なことは、二人の想い合う気持ちなのだから。
秋にこのホテルの竣工を祝った夜のことを、俺たちは『結婚式』と呼んだ。新しく出来た二人の城を前に、銀色の指輪を交わし永遠の愛を誓いあった。
おとぎ話のようだが、現実だった。
その現実は緩やかに穏やかに、流れ続けている。
もちろん今朝も……
「優也、オハヨ」
まだ俺の隣で眠り続ける優也の髪を、そっと撫でてやる。昨日は散々啼かせてしまったから、少し疲労した様子がまた色気があり、そそられるよ。
「ん……Kai……おはよう。もう朝?」
まだ剥き出しの肩がもぞもぞと気怠げに動く様子を、目を細めてじっと見つめてしまう。真っ白な羽毛布団に埋もれる優也の絹のようにしっとり滑らかな肌は、何度抱いても飽きないものだった。喘ぎ過ぎて少しハスキーになった声すらも愛おしい。
思わず無性に優也を抱きしめたくなり、肩にチュッとキスを落とすと彼は恥ずかしそうに目元を赤く染めた。
「Kaiはいつも甘い起こし方をするね。それでは……また眠ってしまうよ」
「俺は優也を甘やかしたい病に、あれからずっと侵されている」
「馬鹿……よせ」
今度は優也を仰向けにさせ、胸の尖りにもチュッと刺激的なキスを落とす。呼応するように、すぐに淡い色の尖りがキュッと硬くなる。そこを今度は唇で挟んで上に引っ張った。
「あ……やだ」
「ここ弱いよな。可愛い……」
「あっ……だめだ。もう起きないと、朝の仕事が間に合わなくなる」
「あーつまらないよ。このままもっともっと甘いことをしたいのに」
「メリハリが大事だよ。こういうことには」
こういう時の優也は妙に大人ぶるよな。(実際5歳も年上なのは事実だが)俺は優也を甘やかしたくて、優也に甘やかされたくて仕方がない。俺たちは求める愛の量が対等だ。優也と過ごせば過ごすほど、それは確かな手ごたえとして実感できていた。
「そうだ、来週は5日間、改修工事でホテルを休館にするだろう。その日は俺とデートしてよ。っていうか新婚旅行なんてどうだ?」
このホテルは元々大昔から続く古い家屋だったので、水回りの老朽化が避けられない。どの部屋もポタポタと水漏れが続き出していたので、思い切って配管ごとを取り換える予定だ。工事期間の中3日は俺たちが不在でも大丈夫だそうだ。
優也は壁のカレンダーを見つめ、あぁそうだったという表情を浮かべた。
「新婚旅行?」
「だってさ、この1年ほとんど休みなく頑張ってきたからさ。まだ行ってなかったし」
「そうだね。確かに……」
「なっ!なっ!優也はどこに行きたい?」
「あ……31日は丁度ハロウィンだね、いつも楽しそうだなって眺めていたよ」
俺たちが外出できる3日間は、ちょうどハロウィン当日からだった。ハロウィンなんて、ここ数年縁遠いものになっていたが、優也が反応したのならそれに乗るに決まっている。
「それならば、俺たちが仮装出来る所に遊びにいこうぜ!」
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