深海 shinkai(改訂版)

志生帆 海

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その後の章

その後の二人 『僕の覚悟、君の想い』4

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 その夜は我が家に泊まってもらうことになった。

 Kaiくんはホテルに泊まると言い張ったが、母が引き留めた。

 その光景を目を細めて僕は眺めていた。

 そうか……僕はずっとこんな光景が見たかったのかもしれない。

 身勝手かもしれないが、僕だけでなく周りも幸せにしたかった。

 数年前に翔に抱かれ、翔を愛してしまった時にその願いは消えたと思った。男性を愛してしまった時点で、縁のない世界になったと思っていた。

 なのにKaiくんとだと、どうしてこうも軽々と乗り越えていけるのだろうか。まだ信じられない展開だ。

 僕の新しい事情計画のプレゼンは両親と姉に認められ、明日早速本社の重役会議にかけられることになった。

 あともうひと頑張りだ。
 

 ずっと受け身だった僕なのに、Kaiくんと過ごすようになってから変わった。

 どんなことにも好奇心旺盛に飛び込んでいくKaiくん。行動力があって、果敢で凛々しいよ。憧れにも似た気持ちでKaiくんを見上げると、Kaiくんは大海原のような、おおらかな笑みを浮かべてくれた。この笑顔が好きだ。

「優也さん、さっきカッコ良かったよ」
「君がいるから、がんばれる。明日も頑張る」
「ホテルのさ、すごくいいアイデアだった。そういうニーズは確かにあると思うよ。僕もホテルのコンシェルジュとして手助けしたい」
「ありがとう。頼りにしている」

 自分ひとりでやるからと言っても、周りを頼らないわけじゃない。だから素直にKaiくんからの申し出も受け入れられる。

 僕は知っている。
 人はひとりでは、生きていけない。
 人の意見を聞いたり、助言を受け入れながら最上のものを目指していきたい。

 
 だからもう意地は張らないよ。
 頑固で頑な心からは何も生まれない。
 深く深く……深海に沈むだけ。

 柔軟に体の力を抜かないと浮かばない。
 泳げないのと一緒だ。

「でもさ、優也さんカッコよくなってしまって、俺は少し寂しいな」
「寂しくなんてないよ。だって僕は君のすぐ横に並びたいのだから」
「あぁそうか」

 Kaiくんも感慨深く頷く。

「もう手をひかなくてもいい?引っ張らなくてもいいってこと?」
「そうだね。手を繋いで歩調を揃えて行きたい。僕たちはそんな風になりたい」
「いいね。最高だよ。あーーーー」

 突然Kaiくんが髪を掻きむしった。

「どっどうしたの?」
「くそーーーやっぱりホテルに行けばよかった」
「え?何か我が家に不都合でも?」
「違うって、今すぐ抱きたいってこと。もう何か月も抱いてない。優也さんを感じたい。優也さんを裸にして、その肌に触れて中に挿れたい!」

「かっkaiくん、ちょっと静かに!」

 ストレートな物言いにかっと赤面してしまうよ。

 まったく君はいつも、本当にまっすぐだ。

 だから好きだ。
 君が好きだ。
 すごく好きだ!

 好きという気持ちがどんどん膨らんで、気が付いたときには僕の方から口づけをした。止まらなくなってしまうことが分かっているから、必死に我慢していたのに。

 僕だって君に触れたい。

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