76 / 116
出逢いの章
泡の弾ける時間 5
しおりを挟む
【R18】
入れ替わりでシャワーを急いで浴びた。恥ずかしい気持ちよりも、早く躰を繋げたくて、お互いに急いていた気がする。
ところが、いざバスローブ姿でベッドに押し倒されると、ポンっと羞恥心が戻って来てしまったようだ。消してはまた顔を出すそれによって、僕の顔は真っ赤に染まってしまった。そんな顔を見られたくなくて、手のひらで覆うが、Kaiくんにすぐに剥がされてしまった。
「優也さん、この後に及んで駄目だよ。ほら、ちゃんと顔を見せて」
「でっでも」
両手をしっかりと恋人繋ぎで絡められ、頭の横でシーツに縫い付けられてしまえば、もう隠せない。そっと見上げると、至近距離にKaiくんの顔がある。
「ん?」
優しく穏やかな目で、僕のことを見つめてくれている。
こんな姿、恥ずかしい。
でも僕の好きな人だ。怖くはない。
これから僕は、Kaiくんに抱かれる。
そう決心がついて、強張っていた躰の力をふっと抜いた。
Kaiくんは口づけから始めた。
啄むような優しいキスから、舌を挿し入れる深いキスまで縦横無尽に施され、頭の中がぼーっとしてくる。その口づけは、やがて静かに唇を離れ、喉元を辿ってきた。喉仏を甘噛みされると押し殺せない声が、思わず上がってしまった。
「んっあっ……」
そのまま手のひらが、僕の頼りない薄い胸に降りて来る。バスローブの隙間から、もうずっと触れていなかった胸の小さな尖りを指先で摘ままれると、忘れていた何かが蘇ってきた。
「あっ…あ…」
ムズムズと下半身へ続く快感。捏ねるように動かされれば、小さな粒はどんどん芯を持って固くなってきた。優しい愛撫が続けば続くほど、僕はKaiくんに抱かれていることを実感できた。
「あ……あ…」
やがて、もう片方の手がバスローブの裾を割って下半身へと伸びてきた。ずっと自分でいじることすら忘れていた場所に、とうとうKaiくんの手が触れた。まだ完全に硬くなっていないそれを優しく握られると、腰が震えた。散々翔に抱かれ開拓された躰が、過ぎ去った日々を思い出すかのように、どんどん熱を帯びてくる。
ところが途中で、今僕の躰に触れているのは一体誰だ?という疑問が……突然頭の中に過ってしまった。
(翔…?)
いや違う、僕が抱かれているのはKaiくんのはずだ。そう思うのに翔の残像がちらつく。頭を振って追い出そうとするが出て行ってくれない。
(翔じゃない…これはKaiくんだ)
そう思うのに、ますます自分に体重をかけてくるのが翔のように感じしてしまう。
あぁ、やっぱり無理だったんだ。翔に抱かれた躰で、Kaiくんに抱かれようとするなんて。 僕の躰は翔の愛撫をまだ忘れていなかった。Kaiくんが触れてくれているのに、翔のことを思い出すなんて、僕は最低だ。
悔しくて悲しくて躰が急激に冷え、ぎゅっと目を瞑ると、目の端に涙が浮かぶのを感じた。
「優也さん?」
「ごめん……僕は……やっぱり駄目だ…」
「いいから、黙って」
その涙の意味を知るKaiくんが、口づけで吸い取って消してくれた。
「優也さん、昔のことを思い出してもいい。だけど乗り越えて欲しい。俺は途中でやめないよ」
入れ替わりでシャワーを急いで浴びた。恥ずかしい気持ちよりも、早く躰を繋げたくて、お互いに急いていた気がする。
ところが、いざバスローブ姿でベッドに押し倒されると、ポンっと羞恥心が戻って来てしまったようだ。消してはまた顔を出すそれによって、僕の顔は真っ赤に染まってしまった。そんな顔を見られたくなくて、手のひらで覆うが、Kaiくんにすぐに剥がされてしまった。
「優也さん、この後に及んで駄目だよ。ほら、ちゃんと顔を見せて」
「でっでも」
両手をしっかりと恋人繋ぎで絡められ、頭の横でシーツに縫い付けられてしまえば、もう隠せない。そっと見上げると、至近距離にKaiくんの顔がある。
「ん?」
優しく穏やかな目で、僕のことを見つめてくれている。
こんな姿、恥ずかしい。
でも僕の好きな人だ。怖くはない。
これから僕は、Kaiくんに抱かれる。
そう決心がついて、強張っていた躰の力をふっと抜いた。
Kaiくんは口づけから始めた。
啄むような優しいキスから、舌を挿し入れる深いキスまで縦横無尽に施され、頭の中がぼーっとしてくる。その口づけは、やがて静かに唇を離れ、喉元を辿ってきた。喉仏を甘噛みされると押し殺せない声が、思わず上がってしまった。
「んっあっ……」
そのまま手のひらが、僕の頼りない薄い胸に降りて来る。バスローブの隙間から、もうずっと触れていなかった胸の小さな尖りを指先で摘ままれると、忘れていた何かが蘇ってきた。
「あっ…あ…」
ムズムズと下半身へ続く快感。捏ねるように動かされれば、小さな粒はどんどん芯を持って固くなってきた。優しい愛撫が続けば続くほど、僕はKaiくんに抱かれていることを実感できた。
「あ……あ…」
やがて、もう片方の手がバスローブの裾を割って下半身へと伸びてきた。ずっと自分でいじることすら忘れていた場所に、とうとうKaiくんの手が触れた。まだ完全に硬くなっていないそれを優しく握られると、腰が震えた。散々翔に抱かれ開拓された躰が、過ぎ去った日々を思い出すかのように、どんどん熱を帯びてくる。
ところが途中で、今僕の躰に触れているのは一体誰だ?という疑問が……突然頭の中に過ってしまった。
(翔…?)
いや違う、僕が抱かれているのはKaiくんのはずだ。そう思うのに翔の残像がちらつく。頭を振って追い出そうとするが出て行ってくれない。
(翔じゃない…これはKaiくんだ)
そう思うのに、ますます自分に体重をかけてくるのが翔のように感じしてしまう。
あぁ、やっぱり無理だったんだ。翔に抱かれた躰で、Kaiくんに抱かれようとするなんて。 僕の躰は翔の愛撫をまだ忘れていなかった。Kaiくんが触れてくれているのに、翔のことを思い出すなんて、僕は最低だ。
悔しくて悲しくて躰が急激に冷え、ぎゅっと目を瞑ると、目の端に涙が浮かぶのを感じた。
「優也さん?」
「ごめん……僕は……やっぱり駄目だ…」
「いいから、黙って」
その涙の意味を知るKaiくんが、口づけで吸い取って消してくれた。
「優也さん、昔のことを思い出してもいい。だけど乗り越えて欲しい。俺は途中でやめないよ」
10
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
【完結】つぎの色をさがして
蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】
主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる