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出逢いの章
泡の弾ける時間 2
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「じゃあホテルの予約をしたよ。優也さんなら場所、分かるよね」
「うん、あの……洋くん、今日はいろいろ本当にありがとう」
「いえ俺も軽井沢には土地勘があったので、役に立って良かったです」
「うん」
「Kai、松本さんのこと、くれぐれも無理させんなよ」
「おっ!あぁ、分かってる」
「本当か。Kaiは調子いいからな」
「ははっそれは洋限定で、優也さんには誠実なのさ」
「全くっ」
「洋がいつも丈とのイチャイチャをあてつけるからさ~」
洋くんとKaiはクスクスと笑い合っていた。その様子に場の緊張がいい具合に解れた。
洋くんの計らいで僕たちは軽井沢一の老舗ホテルに宿泊することになった。父も姉もKaiくんの到着を待ちわびていたかもしれないのに……でもごめん。今の呆然とした状態では僕は家に帰れないし、Kaiくんを上手く家族に紹介できないんだ。
そんな僕の気持ちを察した洋くんが、今から僕の家に行って場を取り繕ってくれると言ってくれたのは、本当にありがたく甘えてしまった。
ホテルへは歩いて行ける距離だったので、洋くんに車は貸して家に行ってもらった。
僕とKaiくんは今二人で肩を並べ、ホテルへの道のりをゆっくりと歩いている。
僕たちは同じ速度で、同じ目的地に向かって真っすぐに歩いている。それがとても嬉しかった。
もう一人で待ったり、背中ばかり見なくてもいいんだね。
Kaiくんは、僕と並んで歩んでくれる人なんだ。
「さぁ優也さん行こうか。どうしたの?」
「ん……なんだか洋くんに悪いことしたね」
「大丈夫だよ。今、洋は人のために何かをしたくてしょうがない時期なんだから」
「……そういうものなの?」
「そういうものだよ」
Kaiくんはいい意味で楽天的だ。
僕はいつだって悪いことから先に考えてしまうのに……それに洋くんも、あんなに大胆な人だったか。
みんな変わっていく。どうやら僕だけが三年前とずっと同じところに佇んでいたようだ。
それにしても、今日一日で起きたことを反芻すると目がまわるようで本当に疲れた。
「ふぅ」
思わず、溜息をついてしまった。
「優也さん今日は大変だったね。疲れただろう」
「Kaiくんがせっかく日本に来てくれたのに……こんな状態ですまない」
「何言ってんだよ。一番大変だったのは優也さんだろ」
「……あんな酷いところ見せたのに、僕は」
「あーもう優也さん、また後ろ向きに考えてる。よく考えてみて!これはいい方向だよ。優也さんの方から俺を求めてくれたのだから。さっきの嬉しかったよ、優也さんから抱きしめてもらえるなんて夢みたいだ」
そんな風に捉えてくれるのか。なんて君は前向きなんだろう。
はっとした思いで俯いていた顔をあげると、Kaiくんが屈託のない笑顔で笑っていた。
少し照れ臭そうに、指先で鼻を擦りながら。
「手……繋いでいい?」
「えっ!」
「あ……地元じゃまずい?」
辺りはもう真っ暗で、ここは人とすれ違うことなんて滅多にない道だ。僕の無言を肯定だと受け取ったKaiくんが、すっと手を伸ばして来た。
「大丈夫そうだね。ほら手貸して」
きゅっと指と指を絡められ、ドキッとした。Kaiくんの大きな手が僕の指一本一本に絡まっていく。指の付け根の二人が重なった部分が、何故かじんと痺れた。
「良かった。優也さんとまたこうやって一緒に歩けて、本当に良かった」
Kaiくんが夜空を仰ぎながら、しみじみと呟くように放った言葉が、流れ星のように降って来た。
それは魔法のように僕の心の声を解放してくれた。
「僕は……好きなんだ。君のことがとても好きなんだ。これからもっともっと好きになる」
Kaiくんと絡めた手が、嬉しそうに震えた。
それから手を大きく振って、Kaiくんが喜びを躰で表現した。
「やった!優也さん!今日は嬉しいことばかりだ」
その笑顔が眩しくて、僕の方がどうにかなってしまいそうだよ。
今日はKaiくんにずっと触れていたい。離れたくない。
そんな大体な気持ち、かつてないほどの欲求がふつふつと沸いて来て……僕自身がそのことに驚いた。
Kaiくんは僕を貪欲にさせる。
「うん、あの……洋くん、今日はいろいろ本当にありがとう」
「いえ俺も軽井沢には土地勘があったので、役に立って良かったです」
「うん」
「Kai、松本さんのこと、くれぐれも無理させんなよ」
「おっ!あぁ、分かってる」
「本当か。Kaiは調子いいからな」
「ははっそれは洋限定で、優也さんには誠実なのさ」
「全くっ」
「洋がいつも丈とのイチャイチャをあてつけるからさ~」
洋くんとKaiはクスクスと笑い合っていた。その様子に場の緊張がいい具合に解れた。
洋くんの計らいで僕たちは軽井沢一の老舗ホテルに宿泊することになった。父も姉もKaiくんの到着を待ちわびていたかもしれないのに……でもごめん。今の呆然とした状態では僕は家に帰れないし、Kaiくんを上手く家族に紹介できないんだ。
そんな僕の気持ちを察した洋くんが、今から僕の家に行って場を取り繕ってくれると言ってくれたのは、本当にありがたく甘えてしまった。
ホテルへは歩いて行ける距離だったので、洋くんに車は貸して家に行ってもらった。
僕とKaiくんは今二人で肩を並べ、ホテルへの道のりをゆっくりと歩いている。
僕たちは同じ速度で、同じ目的地に向かって真っすぐに歩いている。それがとても嬉しかった。
もう一人で待ったり、背中ばかり見なくてもいいんだね。
Kaiくんは、僕と並んで歩んでくれる人なんだ。
「さぁ優也さん行こうか。どうしたの?」
「ん……なんだか洋くんに悪いことしたね」
「大丈夫だよ。今、洋は人のために何かをしたくてしょうがない時期なんだから」
「……そういうものなの?」
「そういうものだよ」
Kaiくんはいい意味で楽天的だ。
僕はいつだって悪いことから先に考えてしまうのに……それに洋くんも、あんなに大胆な人だったか。
みんな変わっていく。どうやら僕だけが三年前とずっと同じところに佇んでいたようだ。
それにしても、今日一日で起きたことを反芻すると目がまわるようで本当に疲れた。
「ふぅ」
思わず、溜息をついてしまった。
「優也さん今日は大変だったね。疲れただろう」
「Kaiくんがせっかく日本に来てくれたのに……こんな状態ですまない」
「何言ってんだよ。一番大変だったのは優也さんだろ」
「……あんな酷いところ見せたのに、僕は」
「あーもう優也さん、また後ろ向きに考えてる。よく考えてみて!これはいい方向だよ。優也さんの方から俺を求めてくれたのだから。さっきの嬉しかったよ、優也さんから抱きしめてもらえるなんて夢みたいだ」
そんな風に捉えてくれるのか。なんて君は前向きなんだろう。
はっとした思いで俯いていた顔をあげると、Kaiくんが屈託のない笑顔で笑っていた。
少し照れ臭そうに、指先で鼻を擦りながら。
「手……繋いでいい?」
「えっ!」
「あ……地元じゃまずい?」
辺りはもう真っ暗で、ここは人とすれ違うことなんて滅多にない道だ。僕の無言を肯定だと受け取ったKaiくんが、すっと手を伸ばして来た。
「大丈夫そうだね。ほら手貸して」
きゅっと指と指を絡められ、ドキッとした。Kaiくんの大きな手が僕の指一本一本に絡まっていく。指の付け根の二人が重なった部分が、何故かじんと痺れた。
「良かった。優也さんとまたこうやって一緒に歩けて、本当に良かった」
Kaiくんが夜空を仰ぎながら、しみじみと呟くように放った言葉が、流れ星のように降って来た。
それは魔法のように僕の心の声を解放してくれた。
「僕は……好きなんだ。君のことがとても好きなんだ。これからもっともっと好きになる」
Kaiくんと絡めた手が、嬉しそうに震えた。
それから手を大きく振って、Kaiくんが喜びを躰で表現した。
「やった!優也さん!今日は嬉しいことばかりだ」
その笑顔が眩しくて、僕の方がどうにかなってしまいそうだよ。
今日はKaiくんにずっと触れていたい。離れたくない。
そんな大体な気持ち、かつてないほどの欲求がふつふつと沸いて来て……僕自身がそのことに驚いた。
Kaiくんは僕を貪欲にさせる。
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