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出逢いの章
捻じれた心 9
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目の前に容赦なく飛び込んで来たのは翔の写真。しかも翔だけでなく、奥さんとその腕に抱かれている赤ちゃんとの三人の家族写真だった。
嫌だ……
こんな写真見たくない。
こんな光景知りたくない。
もう……もう僕のことを、これ以上苦しめるな!
翔……もういいだろう。
いつまで僕のことを束縛するつもりだ。
「……」
僕は一歩二歩と後ずさり、そのまま一気に駆け出していた。
「あっ待てよ、松本!」
先輩に大声で呼び止められたが、無視して走り抜けた。
****
目の前にちらつくのは純白の粉雪。まるで花嫁の繊細なベールが風に舞うようにひらひらと、天高くから舞い落ちて来る。天使の祝福のような甘美な時を、翔はあの女性と味わったのか。
翔にというよりも……僕が一生味わえないものへの憧れ、絶望、いろんなものが混ざり、僕の感情を押し潰そうとしていた。
はぁはぁ……
街路樹にもたれ息を整えると、吐く息が白くなっていた。
雪はもうやんだのに、まだひどく寒い。
さっきKaiくんに会いたいと思っていた前向きな気持ちは、もうとっくに消え失せてしまった。それから気持ちを落ち着かせるために明洞の繁華街を一人でぐるぐると歩き回り、ようやく通りに面したカフェに入った。
「ふぅ……手がかじかんでるいるな」
ホットコーヒーで手を少し温めてから、Kaiくんへメールを打った。
「Kaiくん、今日は用事があって無理です。ごめんなさい」
後はそのまま……ただぼんやりとウィンドウ越しに通り過ぎて行く人々を眺め続けた。
楽しそうに微笑みあうカップル、老夫婦……子供の手を繋ぐ家族連れ。どれも僕には縁遠い世界の住人。
この分厚いガラスが大きく僕と幸せな世界を遮断している。
僕の誕生日だったのに。僕なんて生まれてこない方が良かったと思う程、寂しさで心が一杯になってしまっていた。
せめて日付が変わるまで、ここにいよう。
こんな寂しい日にひとりきりで家にいたくない。
腕時計をじっと見つめ、日付が変わるのをひたすらに待ち続けた。
泣きたくないのに滲み出てくる涙。
堪えようとしてもポタリと手元に落ちては拭うの繰り返し。
誰にも会いたくない。
それなのに、誰かと喋りたい。
でも……僕には誰もいない。
その繰り返し。
嫌だ……
こんな写真見たくない。
こんな光景知りたくない。
もう……もう僕のことを、これ以上苦しめるな!
翔……もういいだろう。
いつまで僕のことを束縛するつもりだ。
「……」
僕は一歩二歩と後ずさり、そのまま一気に駆け出していた。
「あっ待てよ、松本!」
先輩に大声で呼び止められたが、無視して走り抜けた。
****
目の前にちらつくのは純白の粉雪。まるで花嫁の繊細なベールが風に舞うようにひらひらと、天高くから舞い落ちて来る。天使の祝福のような甘美な時を、翔はあの女性と味わったのか。
翔にというよりも……僕が一生味わえないものへの憧れ、絶望、いろんなものが混ざり、僕の感情を押し潰そうとしていた。
はぁはぁ……
街路樹にもたれ息を整えると、吐く息が白くなっていた。
雪はもうやんだのに、まだひどく寒い。
さっきKaiくんに会いたいと思っていた前向きな気持ちは、もうとっくに消え失せてしまった。それから気持ちを落ち着かせるために明洞の繁華街を一人でぐるぐると歩き回り、ようやく通りに面したカフェに入った。
「ふぅ……手がかじかんでるいるな」
ホットコーヒーで手を少し温めてから、Kaiくんへメールを打った。
「Kaiくん、今日は用事があって無理です。ごめんなさい」
後はそのまま……ただぼんやりとウィンドウ越しに通り過ぎて行く人々を眺め続けた。
楽しそうに微笑みあうカップル、老夫婦……子供の手を繋ぐ家族連れ。どれも僕には縁遠い世界の住人。
この分厚いガラスが大きく僕と幸せな世界を遮断している。
僕の誕生日だったのに。僕なんて生まれてこない方が良かったと思う程、寂しさで心が一杯になってしまっていた。
せめて日付が変わるまで、ここにいよう。
こんな寂しい日にひとりきりで家にいたくない。
腕時計をじっと見つめ、日付が変わるのをひたすらに待ち続けた。
泣きたくないのに滲み出てくる涙。
堪えようとしてもポタリと手元に落ちては拭うの繰り返し。
誰にも会いたくない。
それなのに、誰かと喋りたい。
でも……僕には誰もいない。
その繰り返し。
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