1,541 / 1,701
小学生編
秋色日和 33
しおりを挟む
宗吾から、今年も芽生の運動会に誘ってもらった。
芽生が小学生になってから毎年楽しみにしていたので、嬉しかった。
今まで子供の運動会は私には少しだけ縁遠く感じていたが、彩芽が生まれてからは身近になった。
近い将来、私もこの場に立つ日がやって来る。
そう思うと去年まではふらりと応援に立ち寄っただけだったが、今年は事前に全身緑色のジャージまで準備して、張り切ってしまった。
やり過ぎかとも案じたが、無駄ではなかった。
さっきのレースでは大汗をかいてしまった。もしもスーツのままだったら参加は不可能だったろう。傍観者のつもりが競技参加者となり、人生で一番長い時間、蛙跳びをする羽目になったが、最高に楽しかった。爽快な気分だった。
まだ太腿の内側が笑っているし、猛烈に空腹だ。
「美智、おにぎり、お代わりをしてもいいか」
「憲吾さん、今日はよく食べるのね」
「あぁ、運動したせいか腹が空いてな」
今日の私は、誰にも負けない程の大食いになっていた。
そんな様子を母が目を細めて見つめていた。
「憲吾、身体を思いっきり動かすとお腹が空くものでしょう」
「そうですね。運動をすることで血糖がエネルギーとして使われるので血糖値が下がり、その結果空腹感を感じたようです」
「まぁ、あなたはまたそんな難しいことを考えて」
確かに難しい言葉だったなよ苦笑した。その証拠に彩芽がまるで宇宙人を見るかのように、ポカンと口を開けて私を見上げていた。
どうも私は職業病なのか難しい言葉を使いがちだ。もっとシンプルな言葉でもちゃんと伝わるのに。
難しい言葉を羅列するより、短い言葉に表情や態度を添える方がずっと親近感が湧くだろう。
「ですね。運動したので腹ペコなんですよ。ほら、腹も鳴ってます」
グーグーと音が聞こえた。
「パパ、まってて、あーん」
すると彩芽が慌てた様子で、私の口にミニトマトを放り込んでくれた。
これは嬉しいな。
娘は特別な存在だ。
彩芽は2歳を過ぎておしゃべりするようになり、可愛さがアップした。
分かり合えるっていいな。
「もっとぉ?」
「あぁ、もっと欲しい」
「えへへ、パパ、あーん」
今度はウインナーだ。
まさかこの私が娘に食べさせてもらえる日がくるなんてな。
公衆の面前でデレデレし過ぎて、恥ずかしくなった。
だが誰も私を笑ってはいなかった。
ほほえましく、見守ってくれていた。
「あぁ、コホン……」
「兄さん、気にせず甘えてくださいよ。彩芽ちゃんはパパッ子みたいですね」
「そ、そうか」
パパッ子?
なんと尊い言葉なのだ。
ポーカーフェイスが崩れそうで美智に助けを求めると……
「憲吾さん、思いっきり笑って! 私、あなたの笑顔が好きよ。以前は滅多に見られなかったから嬉しいの」
夫婦円満、家族円満の秘訣は、笑顔だ。
彩芽のお陰で、私の心はどんどん解れていくよ。
娘の笑顔を守るために、パパは頑張る!
そう誓った矢先だったのに、咄嗟の動きが出来なかった、
さっきから周囲を走ってふざけていた上級生の男子がいた。
流石に土埃が立つので注意しようかと思った矢先に、少年が持っていた水筒が、彩芽めがけて勢いよく飛んで来た。
まだ小さな彩芽にとって、それは硬い凶器だ。
助けなくては!
そう思ったのに瞬時に身体は動かず、情けないことに、もう駄目だと目を瞑ってしまった。
ゴツンっと派手な音がして、水筒が地ベタに転がる音がした。
彩芽!
だが、彩芽の泣き声も悲鳴も聞こえなかった、
目を開けると、なんと宗吾が身を挺して彩芽を守ってくれていた。
自分が濡れるのも厭わず、すっぽりと包みこんで……
私はカッとなってしまった。
弟と娘を傷つけたと……怒りが湧いてしまった。
その小学生に厳重に注意するために立ち上がろうとすると、美智が手を引っ張って制止した。
「憲吾さん。ここは宗吾さんに任せましょう」
「だが……」
「パパぁー」
びっくり顔の彩芽が、私の胸に飛び込んで来た。
そうだ、怒るよりまずは娘のケアだ。
「大丈夫だったか、怖かったな」
「んーん、そーくんいたいいたい? そーくんだいじょーぶ」
「あぁ、きっと大丈夫だ。助けてくれたんだな」
「えへへ、そーくん、しゅき」
「パパも好きだ」
こんな風に弟を好きだと素直に言える日がくるなんて。
しかし彩芽は可愛いなぁ。
こんな時なのに彩芽の言葉で、気持ちがどんどん凪いでいく。
宗吾もこの場を険悪な雰囲気にはしたくはないようで、「今度から気をつけろ」と注意に留めていた。
上級生の顔には安堵の色と反省の色が混ざっていた。
弟のおおらかさが、こういう時、役立つようだ。
以前の私だったら頭ごなしに叱り飛ばして、反抗されたら法の力をひけらかしてしまったかもしれない。彩芽や芽生の前で、大人気ないことをせずに済んだ。
私がすべきことは別にある。
着ていたシャツが台無しになってしまった弟に、このジャージを貸すことだ。
「宗吾、着替えに行くぞ」
「えーっと、兄さん、その格好で歩くんですか」
「はは、イケてるか」
「うっ……瑞樹ぃ、ちょっとヘルプ」
瑞樹がニコニコ近づいて、何故か一緒に歩いてくれた。
「憲吾さん、僕に隠れて歩けば大丈夫ですよ。影になりますから」
こっちも可愛いなぁ。
体格差がありすぎて瑞樹に隠れるのは無理だが、その気持ちも嬉しくて、またデレデレだ。
「ちょっと兄さん、顔にしまりがないですよ」
「そうか、お前ほどじゃないが」
「え? それを言われると自覚があるからなぁ」
そこに母さんがやってきて大笑いされる。
「宗吾も憲吾も似た者兄弟になったわね。あなたたち、ちょっとヘンよ」
「え? 母さんって結構厳しいのですね」
「ふふ、可愛い瑞樹と比べると、長男次男のヘンさが目立つわ」
「お母さん、僕はそんな可愛くなんて」
「瑞樹は年の離れた子供だから、可愛いのよ」
「参ったな」
「兄さんこうなったら長男次男で仲良くしようぜ」
「あぁ」
本当にどうでもいい会話だが、猛烈に楽しい。
ずっと意味もない会話をするのが嫌いで、時間の無駄だと思っていた。
だが全部間違いだった。
こういうとりとめもない会話に、日常のありふれた幸せが詰まっているのだな。
私はスーツ、宗吾は全身緑マンになって戻ると、瑞樹が一眼レフを構えて真剣な眼差しを浮かべていた。
瑞樹は爽やかな風だ。
君の周りには爽やかな風が吹いている。
何もかも洗い流してくれる清らかな風だ。
宗吾と君が、この世界で出逢ってくれて良かった。
私と宗吾の蟠りを洗い流してくれたのは、君だよ。
家族や子供が愛おしいという感情を教えてくれたのも、君だ。
私を幸せにしてくれてありがとう。
美智とやり直すきっかけを改めてありがとう。
「瑞樹、待たせたな」
「わぁ、宗吾さん、よくお似合いですよ。憲吾さんのスーツはすごくカッコいいです。次はいよいよ芽生くんのダンスです。みんなで応援しましょう」
「あぁ、そうしよう」
やっぱり、君は可愛いな。
さぁ、運動会も宴たけなわだ。
次は、3年生によるダンス『ハロウィンかぼちゃと真っ黒おばけの対決』だ。
オレンジ色のトレーナーを着た芽生が、生き生きとした笑顔で登場した。
目の前に広がる光景が眩しく感じ、思わず眼鏡を取って目を擦ってしまった。
日だまりのようにポカポカな世界が広がっている。
それは皆が歩み寄って作り上げた優しい世界のことだ。
芽生が小学生になってから毎年楽しみにしていたので、嬉しかった。
今まで子供の運動会は私には少しだけ縁遠く感じていたが、彩芽が生まれてからは身近になった。
近い将来、私もこの場に立つ日がやって来る。
そう思うと去年まではふらりと応援に立ち寄っただけだったが、今年は事前に全身緑色のジャージまで準備して、張り切ってしまった。
やり過ぎかとも案じたが、無駄ではなかった。
さっきのレースでは大汗をかいてしまった。もしもスーツのままだったら参加は不可能だったろう。傍観者のつもりが競技参加者となり、人生で一番長い時間、蛙跳びをする羽目になったが、最高に楽しかった。爽快な気分だった。
まだ太腿の内側が笑っているし、猛烈に空腹だ。
「美智、おにぎり、お代わりをしてもいいか」
「憲吾さん、今日はよく食べるのね」
「あぁ、運動したせいか腹が空いてな」
今日の私は、誰にも負けない程の大食いになっていた。
そんな様子を母が目を細めて見つめていた。
「憲吾、身体を思いっきり動かすとお腹が空くものでしょう」
「そうですね。運動をすることで血糖がエネルギーとして使われるので血糖値が下がり、その結果空腹感を感じたようです」
「まぁ、あなたはまたそんな難しいことを考えて」
確かに難しい言葉だったなよ苦笑した。その証拠に彩芽がまるで宇宙人を見るかのように、ポカンと口を開けて私を見上げていた。
どうも私は職業病なのか難しい言葉を使いがちだ。もっとシンプルな言葉でもちゃんと伝わるのに。
難しい言葉を羅列するより、短い言葉に表情や態度を添える方がずっと親近感が湧くだろう。
「ですね。運動したので腹ペコなんですよ。ほら、腹も鳴ってます」
グーグーと音が聞こえた。
「パパ、まってて、あーん」
すると彩芽が慌てた様子で、私の口にミニトマトを放り込んでくれた。
これは嬉しいな。
娘は特別な存在だ。
彩芽は2歳を過ぎておしゃべりするようになり、可愛さがアップした。
分かり合えるっていいな。
「もっとぉ?」
「あぁ、もっと欲しい」
「えへへ、パパ、あーん」
今度はウインナーだ。
まさかこの私が娘に食べさせてもらえる日がくるなんてな。
公衆の面前でデレデレし過ぎて、恥ずかしくなった。
だが誰も私を笑ってはいなかった。
ほほえましく、見守ってくれていた。
「あぁ、コホン……」
「兄さん、気にせず甘えてくださいよ。彩芽ちゃんはパパッ子みたいですね」
「そ、そうか」
パパッ子?
なんと尊い言葉なのだ。
ポーカーフェイスが崩れそうで美智に助けを求めると……
「憲吾さん、思いっきり笑って! 私、あなたの笑顔が好きよ。以前は滅多に見られなかったから嬉しいの」
夫婦円満、家族円満の秘訣は、笑顔だ。
彩芽のお陰で、私の心はどんどん解れていくよ。
娘の笑顔を守るために、パパは頑張る!
そう誓った矢先だったのに、咄嗟の動きが出来なかった、
さっきから周囲を走ってふざけていた上級生の男子がいた。
流石に土埃が立つので注意しようかと思った矢先に、少年が持っていた水筒が、彩芽めがけて勢いよく飛んで来た。
まだ小さな彩芽にとって、それは硬い凶器だ。
助けなくては!
そう思ったのに瞬時に身体は動かず、情けないことに、もう駄目だと目を瞑ってしまった。
ゴツンっと派手な音がして、水筒が地ベタに転がる音がした。
彩芽!
だが、彩芽の泣き声も悲鳴も聞こえなかった、
目を開けると、なんと宗吾が身を挺して彩芽を守ってくれていた。
自分が濡れるのも厭わず、すっぽりと包みこんで……
私はカッとなってしまった。
弟と娘を傷つけたと……怒りが湧いてしまった。
その小学生に厳重に注意するために立ち上がろうとすると、美智が手を引っ張って制止した。
「憲吾さん。ここは宗吾さんに任せましょう」
「だが……」
「パパぁー」
びっくり顔の彩芽が、私の胸に飛び込んで来た。
そうだ、怒るよりまずは娘のケアだ。
「大丈夫だったか、怖かったな」
「んーん、そーくんいたいいたい? そーくんだいじょーぶ」
「あぁ、きっと大丈夫だ。助けてくれたんだな」
「えへへ、そーくん、しゅき」
「パパも好きだ」
こんな風に弟を好きだと素直に言える日がくるなんて。
しかし彩芽は可愛いなぁ。
こんな時なのに彩芽の言葉で、気持ちがどんどん凪いでいく。
宗吾もこの場を険悪な雰囲気にはしたくはないようで、「今度から気をつけろ」と注意に留めていた。
上級生の顔には安堵の色と反省の色が混ざっていた。
弟のおおらかさが、こういう時、役立つようだ。
以前の私だったら頭ごなしに叱り飛ばして、反抗されたら法の力をひけらかしてしまったかもしれない。彩芽や芽生の前で、大人気ないことをせずに済んだ。
私がすべきことは別にある。
着ていたシャツが台無しになってしまった弟に、このジャージを貸すことだ。
「宗吾、着替えに行くぞ」
「えーっと、兄さん、その格好で歩くんですか」
「はは、イケてるか」
「うっ……瑞樹ぃ、ちょっとヘルプ」
瑞樹がニコニコ近づいて、何故か一緒に歩いてくれた。
「憲吾さん、僕に隠れて歩けば大丈夫ですよ。影になりますから」
こっちも可愛いなぁ。
体格差がありすぎて瑞樹に隠れるのは無理だが、その気持ちも嬉しくて、またデレデレだ。
「ちょっと兄さん、顔にしまりがないですよ」
「そうか、お前ほどじゃないが」
「え? それを言われると自覚があるからなぁ」
そこに母さんがやってきて大笑いされる。
「宗吾も憲吾も似た者兄弟になったわね。あなたたち、ちょっとヘンよ」
「え? 母さんって結構厳しいのですね」
「ふふ、可愛い瑞樹と比べると、長男次男のヘンさが目立つわ」
「お母さん、僕はそんな可愛くなんて」
「瑞樹は年の離れた子供だから、可愛いのよ」
「参ったな」
「兄さんこうなったら長男次男で仲良くしようぜ」
「あぁ」
本当にどうでもいい会話だが、猛烈に楽しい。
ずっと意味もない会話をするのが嫌いで、時間の無駄だと思っていた。
だが全部間違いだった。
こういうとりとめもない会話に、日常のありふれた幸せが詰まっているのだな。
私はスーツ、宗吾は全身緑マンになって戻ると、瑞樹が一眼レフを構えて真剣な眼差しを浮かべていた。
瑞樹は爽やかな風だ。
君の周りには爽やかな風が吹いている。
何もかも洗い流してくれる清らかな風だ。
宗吾と君が、この世界で出逢ってくれて良かった。
私と宗吾の蟠りを洗い流してくれたのは、君だよ。
家族や子供が愛おしいという感情を教えてくれたのも、君だ。
私を幸せにしてくれてありがとう。
美智とやり直すきっかけを改めてありがとう。
「瑞樹、待たせたな」
「わぁ、宗吾さん、よくお似合いですよ。憲吾さんのスーツはすごくカッコいいです。次はいよいよ芽生くんのダンスです。みんなで応援しましょう」
「あぁ、そうしよう」
やっぱり、君は可愛いな。
さぁ、運動会も宴たけなわだ。
次は、3年生によるダンス『ハロウィンかぼちゃと真っ黒おばけの対決』だ。
オレンジ色のトレーナーを着た芽生が、生き生きとした笑顔で登場した。
目の前に広がる光景が眩しく感じ、思わず眼鏡を取って目を擦ってしまった。
日だまりのようにポカポカな世界が広がっている。
それは皆が歩み寄って作り上げた優しい世界のことだ。
0
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
王子が何かにつけて絡んできますが、目立ちたく無いので私には構わないでください
Rila
恋愛
■ストーリー■
幼い頃の記憶が一切なく、自分の名前すら憶えていなかった。
傷だらけで倒れている所を助けてくれたのは平民出身の優しい夫婦だった。
そして名前が無いので『シンリー』と名付けられ、本当の娘の様に育ててくれた。
それから10年後。
魔力を持っていることから魔法学園に通う事になる。魔法学園を無事卒業出来れば良い就職先に就くことが出来るからだ。今まで本当の娘の様に育ててくれた両親に恩返しがしたかった。
そして魔法学園で、どこかで会ったような懐かしい雰囲気を持つルカルドと出会う。
***補足説明***
R18です。ご注意ください。(R18部分には※/今回は後半までありません)
基本的に前戯~本番に※(軽いスキンシップ・キスには入れてません)
後半の最後にざまぁ要素が少しあります。
主人公が記憶喪失の話です。
主人公の素性は後に明らかになっていきます。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
【完結】俺が一目惚れをした人は、血の繋がった父親でした。
モカ
BL
俺の倍はある背丈。
陽に照らされて艶めく漆黒の髪。
そして、漆黒の奥で煌めく黄金の瞳。
一目惚れだった。
初めて感じる恋の胸の高鳴りに浮ついた気持ちになったのは一瞬。
「初めまして、テオン。私は、テオドール・インフェアディア。君の父親だ」
その人が告げた事実に、母親が死んだと聞いた時よりも衝撃を受けて、絶望した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる