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小学生編
積み重ねるのも愛 7
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瑞樹と芽生から、プリンのお裾分け。
これって両手に花だよなぁ~っと、甘いプリンを口に含みながら、しみじみと思った。
外は真冬で寒そうだが、俺の心はポカポカだ。
今日はよく晴れているので、南向きの窓には日が降り注ぎ、日向ぼっこをするのに最適だ。
「あー、おやつも食べたら眠くなったよ」
窓際のフローリングの床に敷いてあるのは、今年新調したばかりのクローバー型のラグ。その上にごろんと仰向けになると、まるで芝生に寝っ転がっているような心地になった。
「あー、気持ちいいな」
「ほんと?」
芽生が真似して、俺の横にころんと寝そべった。
「わぁ~ ポカポカだねぇ。おひさまが、おふとんみたい!」
「上手いこと言うな」
「おにいちゃんもここに来てー」
「えっ、僕も?」
キッチンで洗い物をしていた瑞樹に、芽生がすぐに声をかける。
こういう気遣いが出来るのはいいな。本当に優しくて賢い子だ。
「そうだ、瑞樹もここに来いよ。気持ちいいぞ」
「あ、はい……」
瑞樹がタオルで手を拭きながら、やってくる。
おい、そんなに眩しそうな目で見るなよ。君の居場所も、ちゃんとあるんだから。
「ここに、来いよ」
照れ臭そうに、俺に手を引かれて横たわった瑞樹を、そっと抱きしめてやる。
「あ、あの」
「ここ、原っぱみたいで、気持ちいいよな」
「あ……本当ですね」
瑞樹の左手薬指に触れ、指輪の感触を確かめた。もちろん俺の指にも、彼とペアの指輪がついている。
「何だか、あの日みたいですね」
「俺も今、そう思っていたよ。あの日は手作りのシロツメクサの指輪だったな」
「はい、風にそよぐと幸せが舞い降りてきたように感じて、とても綺麗でしたね。今日は、指輪が日の光に照らされていますね」
俺と瑞樹が窓に向けて手を差し出すと、指輪がキラキラと瞬いた。
「あ、まるで天使の輪のように輝いていますね」
「瑞樹……あの日の誓いは、永遠だからな」
「はい……僕たちはあれから、互いが互いの傘になって、ずっと過ごしていますね」
「そうだ。だから函館旅行も楽しもうな」
「はい! よろしくお願いします」
芽生は俺たちの間に挟まって、あの日のようにすうすうと可愛い寝息を立てていた。
「いつの間にか、寝ちゃいましたね。気持ち良さそうで、可愛い」
瑞樹が一度起き上がり、白いブランケットを芽生にかけてくれた。
可憐で優しい瑞樹が、芽生に注いでくれるきめ細やかな愛情がありがたいよ。
「そうだ、宗吾さん、さっき潤が僕たちが宿泊する予定の、コテージの写真を送ってくれたんですよ」
「へぇ、どんなだった?」
「赤い家でしたよ。白い雪に映えて可愛かったです。絵本の世界のようでした。きっと芽生くん、喜ぶでしょうね」
「俺も喜ぶよ。そうか、今回の旅行では束の間だが、君と一軒家に住めるのか」
「そうですね。今回はスキー場の近くに泊るので。都会のマンションもいいですが、やっぱり一軒家もいいですね」
「そうだ、どこかに家でも探して引っ越すか」
「え? でも……ここは会社にもご実家にも近いし……芽生くんの小学校も……」
急に閃いたことだが、それもいずれ、いいな。
この家は玲子と結婚する時、二人で選んで買ったものだ。瑞樹と同棲を始めるにあたり、カーテンやベッドは買い換えたが、それでもやはり、あいつとの思い出も染み付いているのは拭えない。もう、あいつはあいつの人生を歩んでいるし……そろそろ、ここから離れてもいいんじゃないか。
「近い将来の俺の夢だ。瑞樹と俺と芽生だけの家を持つ。そんな夢を今日抱いた」
「……あっ……それは……僕の……」
瑞樹が言い難そうに、口ごもる。
だから彼の柔らかな髪に触れ、その先を誘導してやった。
「その先を言ってくれ」
「その……宗吾さんの夢を……僕の夢にしても……いいんですか」
「もちろんさ、二人の夢にしようぜ」
瑞樹が、また手の甲で目を押さえてしまう。
「また……泣いてしまったのか」
「幸せだから……なんです。すいません」
「謝ることじゃない。俺たち、こうやって二人の夢を増やしていこうぜ」
「はい……函館でも沢山作りましょう」
旅行鞄に二人の希望を詰めて、夢膨らむ旅にしよう!
さぁ間もなく函館だ。
俺たちの:赤い家(マイホーム)が待っている。
これって両手に花だよなぁ~っと、甘いプリンを口に含みながら、しみじみと思った。
外は真冬で寒そうだが、俺の心はポカポカだ。
今日はよく晴れているので、南向きの窓には日が降り注ぎ、日向ぼっこをするのに最適だ。
「あー、おやつも食べたら眠くなったよ」
窓際のフローリングの床に敷いてあるのは、今年新調したばかりのクローバー型のラグ。その上にごろんと仰向けになると、まるで芝生に寝っ転がっているような心地になった。
「あー、気持ちいいな」
「ほんと?」
芽生が真似して、俺の横にころんと寝そべった。
「わぁ~ ポカポカだねぇ。おひさまが、おふとんみたい!」
「上手いこと言うな」
「おにいちゃんもここに来てー」
「えっ、僕も?」
キッチンで洗い物をしていた瑞樹に、芽生がすぐに声をかける。
こういう気遣いが出来るのはいいな。本当に優しくて賢い子だ。
「そうだ、瑞樹もここに来いよ。気持ちいいぞ」
「あ、はい……」
瑞樹がタオルで手を拭きながら、やってくる。
おい、そんなに眩しそうな目で見るなよ。君の居場所も、ちゃんとあるんだから。
「ここに、来いよ」
照れ臭そうに、俺に手を引かれて横たわった瑞樹を、そっと抱きしめてやる。
「あ、あの」
「ここ、原っぱみたいで、気持ちいいよな」
「あ……本当ですね」
瑞樹の左手薬指に触れ、指輪の感触を確かめた。もちろん俺の指にも、彼とペアの指輪がついている。
「何だか、あの日みたいですね」
「俺も今、そう思っていたよ。あの日は手作りのシロツメクサの指輪だったな」
「はい、風にそよぐと幸せが舞い降りてきたように感じて、とても綺麗でしたね。今日は、指輪が日の光に照らされていますね」
俺と瑞樹が窓に向けて手を差し出すと、指輪がキラキラと瞬いた。
「あ、まるで天使の輪のように輝いていますね」
「瑞樹……あの日の誓いは、永遠だからな」
「はい……僕たちはあれから、互いが互いの傘になって、ずっと過ごしていますね」
「そうだ。だから函館旅行も楽しもうな」
「はい! よろしくお願いします」
芽生は俺たちの間に挟まって、あの日のようにすうすうと可愛い寝息を立てていた。
「いつの間にか、寝ちゃいましたね。気持ち良さそうで、可愛い」
瑞樹が一度起き上がり、白いブランケットを芽生にかけてくれた。
可憐で優しい瑞樹が、芽生に注いでくれるきめ細やかな愛情がありがたいよ。
「そうだ、宗吾さん、さっき潤が僕たちが宿泊する予定の、コテージの写真を送ってくれたんですよ」
「へぇ、どんなだった?」
「赤い家でしたよ。白い雪に映えて可愛かったです。絵本の世界のようでした。きっと芽生くん、喜ぶでしょうね」
「俺も喜ぶよ。そうか、今回の旅行では束の間だが、君と一軒家に住めるのか」
「そうですね。今回はスキー場の近くに泊るので。都会のマンションもいいですが、やっぱり一軒家もいいですね」
「そうだ、どこかに家でも探して引っ越すか」
「え? でも……ここは会社にもご実家にも近いし……芽生くんの小学校も……」
急に閃いたことだが、それもいずれ、いいな。
この家は玲子と結婚する時、二人で選んで買ったものだ。瑞樹と同棲を始めるにあたり、カーテンやベッドは買い換えたが、それでもやはり、あいつとの思い出も染み付いているのは拭えない。もう、あいつはあいつの人生を歩んでいるし……そろそろ、ここから離れてもいいんじゃないか。
「近い将来の俺の夢だ。瑞樹と俺と芽生だけの家を持つ。そんな夢を今日抱いた」
「……あっ……それは……僕の……」
瑞樹が言い難そうに、口ごもる。
だから彼の柔らかな髪に触れ、その先を誘導してやった。
「その先を言ってくれ」
「その……宗吾さんの夢を……僕の夢にしても……いいんですか」
「もちろんさ、二人の夢にしようぜ」
瑞樹が、また手の甲で目を押さえてしまう。
「また……泣いてしまったのか」
「幸せだから……なんです。すいません」
「謝ることじゃない。俺たち、こうやって二人の夢を増やしていこうぜ」
「はい……函館でも沢山作りましょう」
旅行鞄に二人の希望を詰めて、夢膨らむ旅にしよう!
さぁ間もなく函館だ。
俺たちの:赤い家(マイホーム)が待っている。
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