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成就編
深まる絆 11
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うわっ最低だ、こんな場所で人とぶつかるなんて!
焦りすぎて前方不注意もいいところだ。
あれ? でも相手も男性だ。僕と同じくスーツを着たサラリーマンなんて奇遇だな。いやいや、こんな所で男性同士でぶつかるなんて、やっぱり恥ずかしい以外の言葉が見当たらないよ。
俯いたまま硬直していた相手の耳朶も、じわじわと赤くなってきた。
その様子をじっと見つめて、ハッとした。
えっ……ちょっとちょっと待って、この人って……憲吾さんだ!!
僕……この場から速攻消えた方がいい!
じりじりと後ずさり、その場から一目散に逃げた。
憲吾さんは気まずそうに始終俯いていたので、幸い僕の顔は見ていないようだが、気づいたら恥ずかしいだろうし、余計なことをしたのがバレてしまう。
すると店の中で、今度は腕をぐいっと引っ張られた。
「ひ、人攫い!」(な、わけないが……今度は一体、誰? )
「しーっ、瑞樹、静かに!」
相手は宗吾さんだった。僕の慌てふためいた様子を見て、目を細めて笑っていた。
「悪い、いきなり掴んで驚かせたな」
「そ、宗吾さん!! 何でここに……あの、ま、まさか……僕をずっと見ていました? 」
僕の挙動不審な行動の一部始終を!!
絶望的な気分でがっくしと……項垂れてしまった。
「あぁ見ていた。瑞樹がどうしてと? と、最初は意味不明で滅茶苦茶焦ったぞ。だが、そこに兄さんまで来たので、なるほどなぁ……これは読めたぞ。お姉さん……もしかして」
「あ、そうなんです。そうかもしれなくて……」
「やっぱりそうか! でも何で瑞樹が、わざわざお使いに?」
「ううう……す、すみません」
「謝るなって。どうせ母さんだろ? そういう強引なことすんの」
「……」
はぁ~、一気に気が抜けた。でも宗吾さんが全部先に察してくれたので、説明する手間が省けて良かった。
「も、もう帰りましょう」
「待てよ。瑞樹はこっちに用事があるだろう? 」
ちらっとさっきぶつかった商品棚を覗くと、憲吾さんはもういなかった。どうやら速攻で買って、速攻で帰ったらしい。
で、宗吾さんが嬉しそうに手にしているのは、さっき僕が見ていたヤツだ。
「瑞樹、今度、これを使ってみよう」
「あの……『俺史上最長記録』ってどういう意味ですか 」
「これはだな~ 先端がゆったりしたリラックスタイプになっているから、『2人の時間をもっと楽しみたい人』『相手を思いっきり満足させたい人』に、オススメだそうだ! 俺さ、いつもがっついてしまうから、今度は君をもっとゆっくり……」
宗吾さんがあまりにも嬉しそうに言うので、怒る気にもなれない。一周して僕はとことん彼に愛されてるんだなと、感心すらしてしまう。
うーむ……僕も相当、宗吾さんに感化されているようだな。
「分かりました。それを……試してみましょう」
「よかった。君をもっと満足させたいんだ」
「も、もうっ──」
「いつもそればかり考えているよ」
今度は僕が、耳朶まで真っ赤だ。
本当にこの人は、僕の心を直球で揺さぶってくれる。
宗吾さんといると、どうしたって明るく楽しい方向に向かされるよ。
こんなシチュエーションで出くわしても、笑いに変化させてしまう彼がやっぱり好きだ。
僕にはない強い明るさに惹かれている。
「宗吾さん、どうか……買ったものは鞄の奥深くへ隠してくださいよ」
「了解!! 」
「さぁ帰ろう。俺と瑞樹の『母さん』の元へ」
「はい! そうですね」
珍道中はここまで。
きっと戻ったら、ハッピーなニュースが飛び込んでくるだろう!
焦りすぎて前方不注意もいいところだ。
あれ? でも相手も男性だ。僕と同じくスーツを着たサラリーマンなんて奇遇だな。いやいや、こんな所で男性同士でぶつかるなんて、やっぱり恥ずかしい以外の言葉が見当たらないよ。
俯いたまま硬直していた相手の耳朶も、じわじわと赤くなってきた。
その様子をじっと見つめて、ハッとした。
えっ……ちょっとちょっと待って、この人って……憲吾さんだ!!
僕……この場から速攻消えた方がいい!
じりじりと後ずさり、その場から一目散に逃げた。
憲吾さんは気まずそうに始終俯いていたので、幸い僕の顔は見ていないようだが、気づいたら恥ずかしいだろうし、余計なことをしたのがバレてしまう。
すると店の中で、今度は腕をぐいっと引っ張られた。
「ひ、人攫い!」(な、わけないが……今度は一体、誰? )
「しーっ、瑞樹、静かに!」
相手は宗吾さんだった。僕の慌てふためいた様子を見て、目を細めて笑っていた。
「悪い、いきなり掴んで驚かせたな」
「そ、宗吾さん!! 何でここに……あの、ま、まさか……僕をずっと見ていました? 」
僕の挙動不審な行動の一部始終を!!
絶望的な気分でがっくしと……項垂れてしまった。
「あぁ見ていた。瑞樹がどうしてと? と、最初は意味不明で滅茶苦茶焦ったぞ。だが、そこに兄さんまで来たので、なるほどなぁ……これは読めたぞ。お姉さん……もしかして」
「あ、そうなんです。そうかもしれなくて……」
「やっぱりそうか! でも何で瑞樹が、わざわざお使いに?」
「ううう……す、すみません」
「謝るなって。どうせ母さんだろ? そういう強引なことすんの」
「……」
はぁ~、一気に気が抜けた。でも宗吾さんが全部先に察してくれたので、説明する手間が省けて良かった。
「も、もう帰りましょう」
「待てよ。瑞樹はこっちに用事があるだろう? 」
ちらっとさっきぶつかった商品棚を覗くと、憲吾さんはもういなかった。どうやら速攻で買って、速攻で帰ったらしい。
で、宗吾さんが嬉しそうに手にしているのは、さっき僕が見ていたヤツだ。
「瑞樹、今度、これを使ってみよう」
「あの……『俺史上最長記録』ってどういう意味ですか 」
「これはだな~ 先端がゆったりしたリラックスタイプになっているから、『2人の時間をもっと楽しみたい人』『相手を思いっきり満足させたい人』に、オススメだそうだ! 俺さ、いつもがっついてしまうから、今度は君をもっとゆっくり……」
宗吾さんがあまりにも嬉しそうに言うので、怒る気にもなれない。一周して僕はとことん彼に愛されてるんだなと、感心すらしてしまう。
うーむ……僕も相当、宗吾さんに感化されているようだな。
「分かりました。それを……試してみましょう」
「よかった。君をもっと満足させたいんだ」
「も、もうっ──」
「いつもそればかり考えているよ」
今度は僕が、耳朶まで真っ赤だ。
本当にこの人は、僕の心を直球で揺さぶってくれる。
宗吾さんといると、どうしたって明るく楽しい方向に向かされるよ。
こんなシチュエーションで出くわしても、笑いに変化させてしまう彼がやっぱり好きだ。
僕にはない強い明るさに惹かれている。
「宗吾さん、どうか……買ったものは鞄の奥深くへ隠してくださいよ」
「了解!! 」
「さぁ帰ろう。俺と瑞樹の『母さん』の元へ」
「はい! そうですね」
珍道中はここまで。
きっと戻ったら、ハッピーなニュースが飛び込んでくるだろう!
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